「おーい、そこの新入生君〜!私の話しを聞いて〜!」
「……………………」
「無視しないでよ〜新入生君〜!」
「………………」
「新入生君〜!!」
…………うるさいなぁ……
興味がないから無視しているとはいえ、聞こえてくる声は嫌でも耳に入ってくる。
正直なところ、後ろからついてくるアレには早く僕から離れて欲しいのだが、いっこうに離れる様子はない。
……もう、15分近くも歩いてるんだけど……
とにかく、仕方がない。さっさとこのうるさい声を止めるために、どうでもいいけど後ろのと話すとしますか……
「……さっきからうるさいんですが、いったい、なんのようですか?」
「あ!やっと反応してくれた!酷いよ、いくらどうでもいいからって、ずっと無視するなんて!」
「……文句をいうために引き止めているんでしたら、帰らせてもらいますよ……?」
「ああ!ちょっとまって!違う違う!止めた理由はそうじゃないの!」
「じゃあなんなんですか?」
「ねぇ君、ちょっと私に付き合ってくれる?」
「………………」
「待って待って!そんな無言で離れていかないで!」
「……ナンパなら他を当たってください」
「ナンパじゃないの!部活の勧誘!」
「なら余計に他を当たってください。僕は部活に入る気はありません」
「駄目なの、君じゃないと!だって君、世界がつまらないからってなんの興味も持ててないでしょ?」
「……っ!?」
いきなりの事実を指摘されて、僕は動揺した。
驚いたが、しかし、すぐにその感情は引っ込む。
「……何を言ってるんですか?わからないですよ」
「わかるはずよ?だって君は私とよく似てるもん」
「………………」
「ねぇ、少しだけでいいから、私についてきてくれないかな?」
「………………」
この人の話を聞いて、僕は黙り込む。
おそらく、さっきの言葉は十中八九嘘だろう。
そうとしか考えられない。
僕と同じような人間なんて、いるわけがない。
だから、ついていく必要はない。
……ない、はずなのだが……
「……わかりました。とりあえず、ついていくだけついていきますよ……」
「やった!じゃあ、さっそく戻りましょう!」
興味を持った。
初めて、興味を持った。
僕は、このしつこく変な女性に、興味を持ったのだ。
……しかし、それよりも……
「すみません、ちょっと待ってください」
「ん?どうしたの?」
「いえいえ、ちょっとしたことですよ…………ねぇ、君…………」
……悪いけど、ここから先は閲覧禁止だよ。
『…悪いけど、ここから先は閲覧禁止だよ』
××××××××××××××××××××××××××××××
「えっ!?」
驚いて、私は手にしていた本を落としてしまった。
おかしい。私が見ていたのは、過去の記憶のはずだ。
なのに、過去の人間がこちらに向かって言葉を放った。
これはいったいどういうことか、近くにいる人に訊こうとしたその時……
「……うぁ……!?」
……“あの感覚”がきた。
“見られているのに、見られていない”という、矛盾した感覚。
……ここの住人が、“あいつ”と呼んでいる存在から見られている時の感覚だ。
「……僕の過去を調べるのはどうでもいいですけど、そこから先は閲覧禁止ですよ」
「……なんで、見ちゃいけないのかしら……?」
「模造品に教える必要はありません」
ここの住人と同じような、無表情で無感動な声。
しかし、その住人とは違う、矛盾した、気持ちの悪い感覚が、私の周りにまとわりついてくる。
“見られているのに、見られていると感じない”
“私に話しかけているのに、話されていると感じない”
“彼に話しかけているのに、まるで独り言をしているように感じる”
まるで、私の存在を認知していないかのような感覚に、私はまた気持ちが悪くなった。
……こいつは、いったいなんなんだろうか……
何がどうなったら、こんな存在が……
「模造品って、嫌な呼び方するわね……」
「模造品は模造品でしかありませんから。では、これ以上は見られたくありませんのでさっさと帰ってください。あいつが起きます」
「……わかったわよ」
彼の言うあいつ……他の住人の言う“彼”に気づかれるのは困るし……なによりこの男の前にこれ以上いたくない。
そう思い、私は考えを中止して、この男の注意通り、この部屋を出ていくのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
月は一月。未だに寒さが抜けぬ季節ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか……?
僕、星村 空理はというと……
「ああもう可愛いなぁこの子達はぁ!」
いつものように、平常運転でございます。
……昨日手に入れた本を、朝早くに起きて、僕は読んでいた。
実は朝食を食べ終え、準備を手伝わなければいけないのだが、本を読み
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