「よし、これで今日の参加者は全員かな?」
「ああ、これで全員だ」
「おっけ。じゃあ訓練、始めますか」
弟と別れてから30分後、私はアダマ通りにある自分の勤め先の自警団詰め所で自分の職務をまっとうしていた。
今回の訓練参加者が全員揃ったことを確認してから、私は参加者全員に届くように、大声で訓練内容を発表した。
「じゃあ、今日の訓練を始めるわよぉ!今日の訓練は、撤退戦の演習!攻めるのも重要だけど、危ない時にはちゃんと逃げないといけないからね。追撃組と逃走組の二つのグループに別れて、役割を交代しながら二時間、攻防を繰り返すわよ!攻撃にスキルと魔術の使用は禁止するわ!あくまで武器による攻防のみにして頂戴!逃走組のグループのメンバーの半分がリタイヤしたら役割は交代ね!リタイアの基準は武器による攻撃を受けたらアウトよ!追撃組のチームにもこのルールは適用するわ!ただし、追撃組が全員アウトになったらやり直しね。あと、途中ランダムで私が上から怪我しない程度に大きな攻撃を放つから、注意しなさい!じゃあ、早速グループわけして頂戴!あ、団長、頼んだわよ」
「了解した」
説明が終わったので、私はグループわけを自警団長に任せて、気分的な理由で本来私には必要のない準備運動を始めた。
……私の仕事は、スキルと呼ばれる特殊な攻撃方法を指南する体術顧問と呼ばれるものだ。
なのに、なぜ体術の顧問でしかない私が訓練内容を決めているかというと、私が昔は戦技教官であったからである。
まぁ、ここで戦争のための知識を教えたって、実践する確率は1%もみたないでしょうけどね……
「……デューナ殿、終わったぞ」
「ん、わかったわ。そしたら……うん、青の帽子を被ったチームが最初は撤退組。赤の帽子を被ったチームは追撃組ね。じゃあ、始め……るその前に、一個注意事項ね」
グループ分けが完了したため、適当に攻守を決めてはい開始、とする前に、私は思い出したかのように一つ付け足しに言う。
「この訓練の終了時に追撃側になっていたグループは、そのあとのスキルを教える時間に腕立て腹筋ジャンピングスクワット1000回ずつ罰ゲームにやらせるから、そのつもりで。じゃあ、位置についてから開始するわよ〜」
私の一言で、全員の顔が引き締まった。
罰ゲームのメニューには文句はないけど、スキルを習う時間は確保したいとか、そんなことを考えてるんだろうなぁ。
まぁ、どっちも一生懸命頑張ってたら、なしにしてあげよっか。
そう考えながら、私は空中に飛んで奇襲のタイミングを図るために下の様子を見る。
「では……始め!」
団長の号令とともに、訓練が始まり、団員が追う追われるの戦いを始める。
青のグループはすぐにばらけ始め、集中攻撃されまいとする。
一方の赤のグループは、そんな青のグループを取り囲もうと外側に円状に広がった。
まぁ、両方上々な作戦かな?
青は逃げ場がなくなる状態になるのを防ぐために、散り散りとなって相手に的を絞らせないようにする。
赤はそんな青を抑えるために、点ではなく面、つまりは檻を作るようにして青が逃げられないようにする……
ふぅむ、これは……青が有利ね。
赤の作戦はたしかに散り散りになった青を逃がさないが、それは青が散り散りになって戦力が分散した時の話。
もしまだ円の半径が広いうちに青が集結して円を破壊し始めたら……
そう考えているうちに、私の予想通りに、青が集結して、赤の円の密度の小さい所を攻め始めた。
当然、赤は慌てて集まった青を囲もうと円を急激に小さくしていく。
……さて、じゃあそろそろ行きますか。
空中で戦況を観察していた私は、とりあえず目標を定め、いつでも突っ込めるように準備をする。
威力は……怪我をさせないように、さらに言うならショック死もしないように、されど痛みはちゃんと感じるようにっと……
頃合いを見計らって、威力を調節しながら私は大きく叫んで赤と青が密集している場所に突っ込んでいった。
「いっくわよ〜!“アサルトダイブ”!!」
私の声を聞いて、全員が上を向いて私の位置を確認し、そして散り散りに避難を始めた。
あー、でもこれ、数人は巻き込まれそうだなあ……
そう思っているうちに、私はドォン!という大きな音と共に地面に着地した。
周囲を確認して見ると、ほぼ全員が私の攻撃の被害圏……地面が少し陥没している所から逃れていた。
しかし……
「あー、もう四人脱落かぁ……駄目だよみんな、いつ攻撃がくるかわからないのに目の前のことばかりに集中しちゃ」
そう注意しながら、私は自分の広げた被害圏を見る。
そこには、赤と青、それぞれ二人ずつの計四人が気絶して倒れていた。
まぁ、当たったら一発アウトなレベルで放った一撃だし、仕方ないと言えば仕方ないけど……
でも、せめて意識くらいは持って
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