____母さん、僕の演奏どうだった!?____
__うん、今日も素敵な音だったわよ______
____やった!____
舞台裏で演奏を聴いていてくれた母に、幼い僕は抱きついた。
柔らかな日差しのような暖かさが僕の体を包み込む。
__お疲れ様。お祝いに、なにかハー君の好きなものを買ってあげよう!______
____いらないよ。でも、頭を撫でてほしいな!____
__よしよし……本当に、ハー君はこれが好きなんだね______
____うん!大好きだよ!えへへへ……____
……幼かった僕は、ただ、母のために……母に喜んでもらい、褒めてもらうために、ピアノを弾いていた。
演奏が終わったあとに、母によかったと言ってもらい、頭を撫でてもらって……
流石に年頃になってからは頭を撫でてもらうことはないけど、でも、母に褒めてもらう。それだけで、僕は幸せだった。
そして僕は、ずっと幸せに日々を過ごしていた。
……少なくとも、母が亡くなる、二年前までは……
今が幸せじゃないとは思っていない。
ただ、幼い頃から共に生きていたと言ってもいい……僕の人生であるとも言える……母から教わった、母から貰った……ピアノに触れられないのが、何よりも……辛い。
××××××××××××××××××××××××××××××
夢から覚めて、徐々に覚醒しつつある僕は、母と同じような、柔らかな暖かさを、腕の中に感じた。
あまりにも心地が良いので、ギュッともっと暖かさを感じるために腕の中にあるなにかを抱きしめる。
「……んぁ……」
すると、小さな声が僕の喉元あたりから聞こえてきた。
その声を聞いて、僕は目を覚ます。
気になって、起きてすぐ、真っ先に僕の腕の中にあるなにかを確認すると、そこには……
「んにゅ……えへへ、甘いもの、いっぱぁい……♪」
と、呟きながら、幸せそうな顔で眠っている、可愛らしい寝巻き姿のアミリちゃんがいた。
どうしてこうなったのか、僕は昨日のことを一通り思い出してみる。
たしか昨日は、ここに着いて、アミリちゃんと出会って、“ハーモニア”に案内して貰って……
泊まることになって、荷物を置いて、夕食をいただいて……
そのあとにたくさんの人達に握手やらサインやらせがまれて心身共に疲れながらも入浴して……
ああ、そうだ思い出した。
寝ようと思って部屋に行ったらアミリちゃんに会って、いろいろ話したいとお願いされたからしばらく僕の部屋で旅の話なんかをしてたんだ。
……たぶん、そのまま一緒に寝ちゃったんだろうな……
眠ってしまう寸前の記憶がないから予想するしかないけど、だいたいそんな感じだろう。
でも、なんでこんな態勢で寝てたんだろ……
などと疑問に思っていると、ピクリと腕の中でアミリちゃんの体が動くの感じて、僕は彼女が起き始めたことに気がついた。
「……んにゅあ……ふゆ……?」
「あ、起きたかい?おはよう、アミリちゃん」
「ふぁう……おはようです、ハーおにぃちゃん」
腕を離し、起き上がってから僕が挨拶をすると、アミリちゃんは目をグシグシと擦りながら挨拶を返した。
まだ眠いのか、顔はぼんやりとしていて、目の焦点はあっていない。
……そういえば、着替えなんかはどうしようか……
アミリちゃんの前で着替えるというのもちょっとあれだし、他に着替えられる場所でも……
とそこまで考えたところで、部屋の扉がノックされ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ハーラデス殿、起きておるかの?」
「あ、はい。今開けます」
声に答えて扉を開けると、やはり、メリカさんがいた。
「どうかしましたか?」
「うむ、アミリの姿が見当たらんのじゃが、お主の部屋にいるのではないかと思っての」
「あ、はい居ますよ。なんか遅くまで話してたら一緒に寝ちゃったみたいで……もう起きてますけど、まだちょっと眠そうですね」
「そうか……すまんの、迷惑をかけてしまって」
「いえ、いいですよ」
ほらアミリ!自室に戻るのじゃ!、と言いながら、メリカさんはアミリちゃんを引っ張って部屋を出て行く。
部屋を出て行くついでに、では、失礼したの。と言うのも忘れなかった。
……二人が居なくなったので、とりあえず僕は扉を閉めて、着替え始めたのであった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「まったく、お主というやつは、ハーラデス殿に迷惑をかけぬよう、風呂の時にもいったであろうが!」
「うう、ごめんなさぁい……でもアミィ、ハーおにぃちゃんと話したかったんだもん……」
「それなら昨日の夜ではなく今日でよかったじゃろう!」
「はぁい……でも、ハーおにぃちゃんの腕の中、あったかかったなぁ……」
「……ほぅ、目覚ましの鎌叩きがもう一発必要なようじゃの……?」
「いらないよメリカお
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