第二楽句〜彼女の“家”は騒がしく、明るく、そして暖かく〜

「ここがアミィのお家なのです!」

ンフー!と興奮しながら彼女が指差したのは、大きな建物だった。
看板を見てみると、歌劇場「ハーモニア」と書かれていた。
歌劇場……サバトじゃないんだ……?
魔女というと、やっぱり図鑑の知識からサバトにいるという印象が強いけど、そういう魔女もいるんだなぁ……
と、思っていると、また少女が僕の手を引っ張った。

「おにぃさん早く早く!」
「すぐそこなんだから、そんなに引っ張らなくても……」
「ただ〜いま〜!」

彼女に引っ張られるまま、僕は歌劇場の中に入る。
元気な声で挨拶をしたこの場所にいたのは……

「おお、アミリ。おかえりなのじゃ」
「おかえりアミー!」
「おかえり〜」
『おかえり〜!』

小っちゃい角の生えた子供……というかバフォメットを筆頭に、ほとんどが小っちゃい女の子。
背の高い人がいたとしても、男性しかいないところを見ると、やはりここはサバトであるようだ。
……前言撤回。図鑑の知識は間違ってなかった。

「ただいまおねぇちゃんたち!」
「うむ。で、買い物の方はどうじゃったかの?」
「あ……えと、そのぉ……お犬さんに追いかけられちゃって……」
「またか……まぁよい。他のものに頼むとしよう」
「それよりアミー、その男の人誰なの?」
「あ、この人はアミィを助けてくれた恩人さんです!」

しょぼんとしおらしくなったと思えばすぐに復活してピョンピョン跳ねたりと、少女……アミィ?アミー?アミリ?まぁとにかく、道で僕と会った子のテンションは一定せず、可愛らしかったので、僕は少し微笑みながら彼女の姿を見ていた。

「む、それはそれは……すまんな、うちのアミリが迷惑をかけたようで」
「いえいえ。いいですよ。やりたくてやっただけですから」
「アミリ、ちゃんとお礼はしたのか?」
「ん〜、まだなんだ。あそこじゃ何もお礼できないから、おにぃさんをここに連れてきたの!」
「そうかそうか。そしたら、厚くもてなさせてもらおうか。……にしてもお主、以前会ったことがあったかの?妙に見覚えのある顔なんじゃが……」

僕のことを取り囲むように集まった小さな少女達の中で、代表であるだろうバフォメットがふぅむ、と首を傾げた。
とりあえず、自己紹介した方がいいかな?と思って自分の名前を告げようとする前に、輪の中の子の一人が口を開いた。

「メリカ様、もしかしてこの人、ハーラデス様じゃないですか!?」
「……思い出した!そうじゃ!ノザーワ・ハーラデス!“絶え間無き指先”と呼ばれた世界屈指のピアニスト!まさか、こんな街にくるとはのぅ……」
「……そう呼ばれてた時期もありますが、今はただの音楽が好きな旅人ですよ」

どうやらここに人たちは僕のことを知ってるようで、なにやらザワザワと落ち着きのない空気となる。
そんな様子を肌で感じて、僕は苦笑いをした。
“絶え間無き指先”……そんな二つ名を持って、ピアノを演奏していた時期もあった。
でも、それは二年前までの話。
今は、ただの旅人……いや、逃亡者でしかない。
そんなことを考えて、自重気味な笑みを浮かべそうになったところで、アミリ……ちゃん?が驚いたようにピョンピョンと跳ねた。

「おにぃさん、ハーラデスさんなんですか!?」
「え?あ、うん。そうだね。僕の名前はノザーワ・ハーラデス。旧ピアニストの、現旅人だよ」
「本当なの!?おにぃさん、アミィ、おにぃさんのファンなんです!握手してください!!」
「ええと、うん、いいよ」
「わは〜♪」

僕と握手すると、アミリ……ちゃんは、尻尾が生えてたらブンブンと振ってそうなくらい喜んでいた。
周りからも、いいなぁ、とか、アミーずるーい!とかいう声が聞こえる。
なんというか、人気なんだな、僕……と、まるで他人事のように思っていると、バフォメットさん……たしか、メリカさんって呼ばれてたな……が、ほらほら、静かにせい、とみんなをなだめ始めた。

「すまんの、騒がしいところで。ところで今、現旅人、と申したな?なら、泊まるところを探してはいないか?」
「あ、はい。しばらく滞在するつもりなんで、適当に安い宿をとろうと思ってます」
「そしたら、もしよければなんじゃが……うちに泊まらないか?寝床と、朝昼晩の食事もつけよう」
「えと、とても助かる話なんですけど、ご迷惑じゃないでしょうか……?」
「迷惑などではない。アミリを助けてくれたお礼、というのもあるし、“絶え間無き指先”と名高いお主のことをいろいろと聞きたいし、の」
「……なら、ありがたく泊まらせていただきます。よろしくお願いしますね」
「うむ。よろしくの」

僕がここに泊まることが決定すると、周りからやった!とか、後でサインもらおっ!とかいう声が聞こえてきたので、僕は苦笑する。
その様子を見たメリカさんは、まぁ、こ
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