「ん〜!新しいパン、美味しかったね!」
「うん。そうだね。完成して良かったよ。焼きそばパン、今度ちょいちょい買いに行こっと」
「あ、私もそうする!週一くらいで買ってもいい美味しさだったよね!」
「うん、そうだね」
焼きそばパンが完成し、ご馳走なった後、僕達はファミリエを出て、リースさんのお店に向かっている。
時刻は四時半。ソース作りを始めたのは一時ちょっと過ぎくらいだったから、三時間くらいでソースを完成させたのか……
再現するべき味があったし、材料も少しわかっていたとはいえ、ほとんど手探りの状態で作ったにもかかわらず、三時間で完成させるとは……やっぱり、この街の人は凄いな、と純粋に僕は尊敬するのだった。
「……そういえば、リースさんの店に寄るの、久しぶりな気がする」
「あ、たしかに。リースのお店、店からはちょっと遠いからね……まぁ、本当にちょっとだけだけど」
リースさんのお店は、ヤバザ通りには無く、その隣、学校や住居の多いツイア通りにある。
緊急時にすぐこれるように、との理由だそうだが、その近くには医者があるし、店の主であるリースさんも、この街にいる時で、週に三回店にいればいい方なので、あまり意味がない気がする。
「っと、ついたみたいだね」
美核といろいろ喋っているうちに、リースさんのお店に到着した。
外装はよくある普通のお店のような、悪くいえば地味目な感じ。名前のようなおどろおどろしい雰囲気など一切ない、簡素な店だ。
誰も、この店の愛称に恐怖なんて言葉が入るとは思わないだろう。
しかし、看板にはしっかりと、恐怖劇薬剤店……“Drogerie Grand-guignol”と書かれている。
まぁ、そんなことはさておき、僕達は店の中にはいるのだった。
「いらっしゃい。……っと、あら、星村に美核じゃない?どうしたの?」
「やほー、リース」
普通の店と変わらない広さなのに、たくさんの棚とそれにギッシリと積まれている薬品の数々のせいでとても狭いと感じる店内。
その中で一人、リースさんは入り口近くに設置されているカウンターに座って本を読んでいた。
「えーと、ほら、前に頼んだヤツあったじゃん?あれを受け取りに来たの」
「ああ、一昨日頼んできたあれね。もう出来てるわ。ちょっと待ってて、今持って来るから」
美核に言われると、リースさんは本を閉じて美核に頼まれた薬を取りに行った。
……追記しておくと、リースさんは魔女である。
話し方からかなり大人っぽく感じることがあるけど、それでも、見た目はロリっ子の魔女である。
つまりなにが言いたいかというと……
薬を取ろうとしても高さが足りないから、背伸びをして取ろうとする姿は、可愛いな、ということだ。
「……空理、変な目でリースを見てるんだけど……?」
「いやぁ、小さい子が背伸びをするって、可愛いなぁ、と思って」
「……たしかに、賛成はするけどさ……」
可愛いなぁ、とリースさんのことを見ていると、ジトっとした目で美核が見てきたため、僕はまぁまぁ、と美核を宥める。
うん、ここは少し話を変えて誤魔化すとしよう。
「そういえば、どんな薬をリースさんに注文したの?」
「え、えと……その……な、内緒の方向で」
思った反応とは違ったので、僕は内心驚いた。
内緒の方向でって、いったいどんな薬を頼んだんだよ……
いつものように媚薬とかだったら、こっそり中和したり出来るんだけど、何か得体のしれないものだったら怖いな……
あとで確認しておかなければ……!
と、そんなことを考えているうちに、リースさんが薬を持って来た。
「これであってるわよね?」
「あ、うん、それであってると思う。ありがとね。はい、これ代金」
「はい、たしかにいただいたわ。……にしても、そんな薬、いったいなにに使うのよ……」
「ん〜、内緒」
「そう……まぁいいわ。美核のことだから、悪いことには使わないだろうしね」
というか、あなた以外に使うことはないだろしね、と暗に示しているかのようにリースさんが、ちら、とこちらを見てきたので、どんな薬でも使わせませんよ?という意味を込めて僕は肩を竦めた。
そして、ついでに僕もリースさんに頼みごとをする。
「あ、そうそう。リースさん、アレが欲しいんですけど、いいですか?」
「……アレって……アレのことかしら?」
「ええ、それです」
「アレって?なに?」
アレ、という言葉を聞いて、リースさんは嫌そうな顔をし、美核は不思議そうな顔をした。
とりあえず、別に隠すようなことじゃないので、美核に簡単に表面だけ話しておく。
「まぁ、簡単に言っちゃえば、不眠治療の薬だね。実は僕、たまに寝れなくなる時期があってね。それがくるたびに、リースさんに頼んで作ってもらってるんだ。……といっても、まだ一回しか作ってもら
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