「さてと、じゃあ、どこに行く?」
店の扉に鍵をかけながら、僕は美核に訊く。
今回は美核の為の買い物なんだ。ここは本人にちゃんと訊いておかなければ。
「うーん、そうだなぁ……いきなり出かける事になったから、どこに行こうか全く考えなかったのよね……今のところは何を買いたいかも決めてないし……」
むむむむ……!!と、美核は難しい顔をし始める。
それを見て、僕は面白いな、と微笑みながら別に君の行きたい所でいいんだよ、と言う。
「それに、今日はもう何もないんだし、いくらでも時間はあるよ?」
「そっか、そうだよね……一件だけって、言ってなかったもんね……そしたら、さ、最初のうちは行き先は空理が決めてくれないかな?」
「え?僕が?……なんで?」
「いや、買ってもらうんだし、お店くらいは空理が選んだ方がいいんじゃないかな、なんて思ってさ……お金の心配もあるし……」
「いや、いいんだよ。本当に美核が行きたい場所で」
「うーん、本当にいいのかな……」
「うん、気にしないで。全然大丈夫だから。ちゃんとお金も用意してあるし」
「そっか……そっかぁ……じゃ、じゃあ、本当に行きたい場所、行っちゃうからね?」
「うん。どうぞ。折角一緒に買い物なんだしね。遠慮はしないでよ」
「わかった。じゃあ、着いてきて」
「うん。了解」
しばらく悩んだあと、美核は決心し、僕に着いてくるように言ってから、店に向かい始めるのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「……うーん、どんなのが似合うのかねぇ……」
商品として飾られている服を見ながら、僕は唸っていた。
美核が選んだ店は、服屋だった。
和服しか持ってなかったから、洋服も買って着てみたい、と言うのが理由らしい。
僕も美核に似合いそうな服を探してはいるんだけど、なかなか良さそうなものが見つからない。
まぁ、タートルネックの長袖にズボンという適当な服装の僕にオシャレを求めても仕方が無いことだとは思うけど。
「空理、なんかいいのなかった?」
「うーん、やっぱり、難しいかな?美核はいつも和服だったから、和服が一番だって先入観もあるしね……」
美核が様子を見てきて、僕は首を横に振った。
と、そっか……と少し残念そうに美核は呟く。
うーん、そんな顔を見せられると、弱いんだよなぁ……
「……っと、ん?あ、これなんてどうかな?」
そういいながら、僕は一着取った。
この時代には珍しい、僕の世界の現代的な服。
白いパーカーだった。
「……えっと、これ、何かの上に着るやつだよね?」
「うん、そうだよ。そうだな……美核が着るんだったら、赤いシャツに、ジーパン……はキツイかな……?あ、スカートなんていいかも!」
何かが弾けたみたいに僕は美核に似合いそうな服を選び、取っていく。
白いパーカーを始め、赤いシャツと、パーカーに合わせた白いスカート……
これで、取り敢えず一セットだろうか?
「取り敢えずはこんなもんだけど、買っちゃう?」
「え?あ、えと……」
「……試しに着てみたらどうかしら?」
僕がすぐに買おうと言ったからか、はたまた僕の選んだ服が似合わないと思ったのか、美核は少し戸惑った。
すると、さっきから僕たちの様子を見ていた店唯一の従業員兼店のオーナーであるアラクネさんが、試着を勧めてきた。
たしか、美核の知り合いで……ルーフェさん、だったっけかな?
「え、いいんですか?」
「いいわよ。その服、新しく取り入れた形だから、どんな風に着こなすのか見てみたいし……それに、あなたが着たなら似合いそうだしね……」
「えと、じゃあ、お願いするね?」
こっちよ、とルーフェさんは美核を店の奥に案内した。
あっちと違ってこの世界には試着とかは当たり前じゃないからな。
部屋を用意してないのは仕方が無いことだ。
「さてと……あとは何かいいの、あるかな……?」
「意外に、センスがいいのね?」
今度は別の組み合わせを探す。
と、奥から、美核を置いて、ルーフェさんがこちらに戻ってきて、話しかけてきた。
「初めまして、ルーフェさん、ですよね?」
「ええ、そうよ。たしか……星村さん、でよかったかしら?」
「はい。星村 空理です。よろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
名前を確認しながら、互いに挨拶を交わす。
「さっきの組み合わせ、良かったわね。前に見た事でもあるのかしら?」
「いえいえ。たまたまフッと思い浮かんだだけですよ」
「嘘ね」
「はい、嘘です」
ニコニコしながら、僕は、疑いの目を向けるルーフェさんに、あっさりと白状する。
「僕の前いた世界には、こういう服がたくさんあったんですよ。で、美核に選んだやつは、その組み合わせの中の一つってわけです」
「……本当に、話に聞いたとおり、掴み
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