「んじゃあな、星村!」
「うん、お疲れ様。頑張れ」
放課後になり、友人の一人が別れの挨拶を言いながら、部活に向かう。
僕も部活に所属しているため、早めに部室に向かわなきゃな。
途中で何人か友人に出会い、挨拶をしながら、部室である図書室に到着した。
僕の所属している部活は、文芸部。
なぜ部室が図書室なのかは……まぁ、本が読みやすいという部長の勝手な理由で交渉したからである。
なぜ、意見が通ったのかはわからない。
でも多分、部長お得意の脅……交渉手段のお陰なんだろう。
「おやおや?ほっしぃじゃないか。早いね!」
「ああ、部長。こんにちは」
部室に入ると、すでに我が部の部長様が原稿用紙に何か作品を書いていた。
「お疲れ様です。何か淹れてきましょうか?」
「うーん、そうだね。じゃあ紅茶お願い。いつものようにダージリンだよ?」
「わかってますよ。部長、好きですもんね」
部屋の隅っこの方に設置されている食器棚なんかがある場所(これも部長の交渉によって許可を得た)に行き、湯沸かし器のスイッチを入れ、紅茶を淹れる準備をする。
「そういえば、部長は今どんな作品を書いているんですか?」
お湯を沸かしてる間は暇なので、先程から先輩が書いている原稿用紙の内容について訪ねてみた。
「うーんとねぇ、沢山の物語が集まる話……かな?」
「なんなんですかそれ」
いつものように理解の難しい部長のテーマが出てきたため、僕は部長に説明を求める。
「例えばさ、ほっしぃが作った物語があるじゃん?あの物語の登場人物が、その物語に組み込まれて、また出てくる……みたいな感じかな?」
「……ようするに、○撃学園RPGみたいなものですか」
「それよりももっと凄いよ〜。その子達の物語だけじゃない。未来だって書けるんだからね」
ニコニコしながら、部長は言う。
ほんと、この先輩は物語について話したりするのが好きだよな……
「違うよ〜。ほっしぃと話すのが楽しいんだよ〜」
「そうですか」
この人の読心術に関してはいつものことなのでスルー。
そして、お湯が湧いたため、話を続けながら紅茶を淹れる。
どんな人物が出るのか、どんな場所が舞台なのか、どんな世界なのか……
様々な話をしているうちに、紅茶が出来たため、僕と部長、二人分カップに注ぐ。
「ん〜美味しい!さっすがほっしぃ!普通の喫茶店で飲むものよりも美味しいよ!」
「ははは……ありがとうございます」
「お、星村か。今日も早いな」
「やほー。お、星村君に部長。やっぱ二人が先だったか」
紅茶を飲み始めてすぐに、他の部員達も徐々に集まってきた。
部長は、けい○ん!よろしくお茶でも飲もう!と言い出したので、僕は皆に紅茶を振る舞い、誰かが持ってきたお菓子を皆で食べる。
ああ、ここは、とても幸せだ。
でも、僕は知ってる。
今僕は、ここにはいない。
いないどころか、もう、戻れない。
もう二度と、こんな日は、こない……
××××××××××××××××××××××××××××××
「……ん……?……夢、か……」
目を覚まして、僕はさっきの記憶が夢であったことを知った。
まぁ、あれは過去の記憶だったし、夢なのははじめの方から気がついていたけど……
なんて、そんなことを考えながら周りを見てみると、ベットに美核が上半身を乗せて寝ていることに気がついた。
どうやら、僕の様子を見に来て、そのまま寝てしまったらしい。
「………………」
これは……滅多にない機会かもしれない。
美核は基本、僕より早く起きている。
そのため、こんなふうに美核が寝ている姿を見たのは初めてだ。
気になって、前に垂れて顔を隠していた髪をどかして、僕は美核の寝顔を見る。
すやすやと、無防備な寝顔が可愛くて、くすりと笑いながら、僕はそっと美核の頭の上に手を置き、撫で始めた。
キスとか、抱きついたりとか、そういうのは、まだ僕からは怖くて出来ないけど……
せめてこれくらいは、僕を好きになってくれた彼女に、してあげたかった。
恋人とか、そんな風には見えないだろうけど、それが今の僕の、精一杯表せる愛情表現だ。
「……う、ん……?」
「あ、美核、起きた?」
しばらく撫で続けていると、ピクリ、と耳が動いて、美核が起き始めたことが分かった。
未だに頭の上に手を置きながら、僕は寝たままボンヤリと目を開けた美核に話しかける。
「あ……れ……くうり……?」
「おはよう、美核。ありがとね、ずっと診てくれてて」
「うん……だいじょうぶだよ……」
もそり、と美核が体を起こし始めたため、僕はスッ、と頭から手を引く。
と、寝ぼけ眼なままで、美核はさっき僕が手を乗せてた部分をさすり始めた。
「ぁ……くうり、てぇ、おいてた?」
「あ、嫌だったかな?」
「ん……きもちよかったから、な
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