「にしても、マスター、遅いね」
僕が医者に診てもらってから二日が経った。
すでに風邪は昨日の朝に治っており、美核と一緒に出かけたり、ライカのところで一仕事したりして過ごした。
しかし、マスターが墓参りに出て行ってから6日も経つ。
去年もそうだったし、マスターも言ってたので、一週間ぐらいで帰って来るのはわかっているのだが、墓参りや他の用事で帰ってこないにしても5日間ずっとはやっぱり心配になって来る。
同じように美核も思ったのか、店が終わる三時間前くらいの時間に、カウンターで僕の淹れた紅茶を飲みながら、そんなことをつぶやいてきた。
「まぁ、仕方がないよ。前回も一週間くらい帰ってこなかったから」
「……でも、明日はクリスマスイヴなんだよ?」
……そういえば、今日は23日。
明日はもうクリスマスイヴなんだよな……
僕個人としては、別に美核と二人っきりのクリスマス、というのもいいんだが、でも、マスターと一緒のクリスマスの方が、きっといいクリスマスになるだろう。
「……そうだね。明日までには、帰ってきてくれるといいね」
と、僕がそう言ったちょうどその時だった。
「……今、帰った」
チリンチリン……と、お馴染みの立てながら、マスターが、店に帰ってきた。
「おかえりなさい、マスター!」
「お疲れ様でした。何か飲みますか?」
「いや、今はいい。それより、お前たちに紹介したいやつがいる」
マスターがそういうと、またベルがなり、僕よりちょっと年下の男の子が入ってきた。
青色の短髪に、黒い瞳、顔のバランスは僕と同じ普通な感じ。
体型は普通だが、いくらか運動を続けているのか、少し引き締まっている印象が取れる。
そして僕は、その少年に見覚えがあった。
「あ……!」
「………………」
彼も、僕のことを覚えていたようで、少し驚いた様に僕のことを見ていた。
ちょっと美核達に事情を知られると面倒なことになるため、僕は静かに唇に人差し指を当てて、無言でなにも言わない様に頼む。
それを見ると、彼は理解したのか、小さく頷いてきた。
彼の様子を見て、マスターがこちらを見てきた。
……美核には気づかれてないだろうが、おそらくマスターには気づかれただろう。
でも、マスターは無理に話を訊こうとはしないため、たぶん大丈夫だろうと結論付ける。
「紹介する。方丈 正孝。今日からうちで働くことになった」
「よ、よろしくお願いします」
「へぇ、バイトか……珍しいですね、マスターが従業員を増やすなんて」
「……なにやら事情がありそうだったし、ライカに頼まれたからな。うちで働かせる事にした」
「そっか……私は立宮 美核。よろしくね、方丈君」
「あ、はい!」
マスターに紹介され、おどおどしながら方丈君は美核と握手を交わした。
五人も嫁がいるんだから、美核には手を出すなよ〜?
そんなことはしないとわかっていながらも、僕は心の中でそう思いながら、握手の終わった方丈君に手を差し出す。
「初めまして、方丈君。僕は星村 空理。どっちで呼んでも構わないよ」
「あ、よ、よろしくお願いします……」
若干戸惑いながらも、方丈君は僕とも握手を交わす。
そして、挨拶が終わったところで、僕はマスターと話し始めた。
「ところでマスター、お店の方はどうするんですか?今日は無理だとして、明日はクリスマスイヴですし……またなにかやりますか?」
「ふむ……そうだな……」
「あ、それ私から提案があるんだけど!」
明日について少し悩んでいると、ピッ!と勢いよく美核が手を挙げてアピールしてきた。
「なんだ?」
「なにかいい案でもあったの?」
「あのさ、当日は知り合いとかみんな集めてのパーティーなんて……どうかな?」
「……ほう……」
「へぇ、忙しくないし、いい案だね。方丈君の歓迎会も兼ねられるしね」
「え……?僕の歓迎会です、か……?……と言うか、クリスマスイヴ……?」
「うん。当たり前でしょ?これから一緒に働くんだしね」
「あ、ありがとうございます!」
「ん〜、ここはどういたしまして、といったほうがいいのかな?」
「……パーティーを開くなら、知り合いを誘わなければな……」
「そうですね。じゃあ、僕はジルさんとかルシア君とか誘ってみるよ」
「あ、と……それはいいんだけどさ……」
「ん?どうしたの?」
今年のクリスマスイヴは知り合いとパーティーを開こう、という方針に決め、話し合う中、美核は少し訝しげな顔をしながら僕達とは別方向を見ていた。
「いやさ、あの……窓の外からこっちを見てる女の子達って、もしかして、方丈君の知り合い?」
「え……?」
美核に言われて見てみると、たしかに、窓の外からこちらを覗き込んで来る女の子達がいた。
人数は五人。全員違う種族の魔物で、ミミック、アヌビス、ミノタウロス
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