「おはよぅ、みさね」
「うん、おはよう。でも、もうお昼だよ?」
私が食器を片付けていると、未だに眠そうな空理が上から降りてきた。
時刻は既にお昼を少し過ぎ、私は昼食を終えている。
「ぅん?おかしいな……いつものように起きたつもりなんだけど……」
「調子でも悪いの?……と、お昼どうする?食べるんだったら作るけど……」
「いや、いいや。今はなんか食欲ないから……」
「んー、そっか」
起きてきたんだし、食べた方がいいと思うんだけどな……
そう思ったけど、本人は本当に食欲がなさそうなので無理には言わない。
そしてそのまま、空理は洗面所の方へ向かって行った。
……にしても、珍しいな。空理が寝坊するなんて。
いつもなら、ちゃんと決まった時間に起きてるのに……
筋肉痛が酷かった二日前だって、二度寝する前に一度起きてきてたし……
うーん、昨日何かあったのかな……?
そこまで考えて、ふと気がつく。
そういえば、昨日、“あの後”の記憶がないんだよな……
お風呂で空理に覗かれて、なんか変な袋もらって……そこから何があったのか、全く記憶がないのだ。
気がついたらベットの上で目が覚めて、下に降りたら空理がストーブの前で紅茶を飲んでいて、私を見るなり、おはよう。お腹空いちゃったよ。なんて言ってきただけだった。
いったい私の知らないあの時間に何があったのか、訊きたかったけど、なんだか訊いちゃいけないような気がしたから、訊けなかった。
あー、気になるなぁ……
なんて、そんな事を考えていると洗面所から空理が帰ってきた。
「あ、そういえばさ、美核は今日は外出しない?」
「え?あ、うん。ないよ。どうして?」
「いや、なんとなく訊いてみただけ。じゃあ、僕はしばらく部屋に篭ってるから」
「ん、わかった。じゃあ、何かあったら呼ぶわね」
「うん。よろしく」
空理の突然の質問を少し不思議に思ったけど、部屋に戻ると聞いて、ああ、まだ筋肉痛が抜けてないのかな?と、結論を出した。
と、空理が部屋に戻ろうとしたところで、チリンチリン……と店の方のベルが鳴った。
あれ?おかしいな……たしか、店の看板はclosedにしてあったはずなんだけど……
様子を見に、私は店の方へ向かう。
空理も気になったのか、部屋に戻ろうとした足を回れ右して私と一緒に様子を見に行く。
「あ、リースさん、お帰りなさい。今までどこにいたんですか?たしか、三日くらいここに戻ってませんでしたよね?」
「ええ、ちょっと薬の材料を集めにね……」
店の扉の前にいたのは、一応私たちと同じこの店に住んでいる、リースさんだった。
そういえば、孤児院の鬼ごっこの後から姿が見えなかったけど、薬の材料を集めに出かけてたのか……
リースさんは、個人で“恐怖劇薬剤店”という、普通の家にあるような常備薬から、なかなか手に入らない秘薬まで取り扱っている薬屋を経営している。
なので、時たまこのように薬の材料を集めにいなくなっている時があるのだ。
にしても……
「その割には早かったわね?いつもなら一ヶ月くらいはいなかったと思うけど……?」
「まぁ、ジルも一緒だったからね。移動が楽だったのよ。薬の材料も、今回は少なめで済んだしね」
「ジルさんといっしょ、ですか。ふふふふ……」
「……なによ、星村。気持ちの悪い顔して……」
「サクヤハオタノシミデシタネ?」
「何を言ってるのかしら?というか、それはこっちの台詞よ。昨日は何もなかったの?マスターがいなかったから、二人きりだったんでしょう?」
「え?……あ……う、うん。ナニモアリマセンデシタヨ?」
空理が茶化すように言ったが、リースさんの返しにうっ、と言葉に詰まってしまった。
「……ねぇ、美核、本当に昨日は何もなかった?」
「ええっと……」
私に話を振ってきたので、どう答えたものかと悩む。
一応、いろいろあったにはあったけど……
空理に覗かれたことは恥ずかしいから言いたくないし……
それ意外のことは覚えてないから……とりあえずは……
「何もなかったわよ?」
「……そう。美核が言うんじゃ、本当のようね」
「信用ないなぁ、僕は……まぁいいや。じゃあ、僕は自分の部屋に戻るとするよ」
あははは……と、苦笑いをしながら、空理は自分の部屋に向かおうと背を向ける。
……あれ、おかしいな……?
空理の様子が、なんか変な気がする。
なんというか、そう、なんかいつもより、弱々しいというか……
「……っ!?」
なんて、そんなことを考えていると、不意に空理が頭を抑えた。
「……?星村、どうかしたの?」
「……いや、なんでもないよ……」
心配して声をかけるリースを答え、そのまま部屋に戻ろうとするが、その声は全然大丈夫そうには聞こえない。
……不意に、嫌な予感がした。
その予感に流されるように、空理の
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