聖夜乙女戦

さて、じゃあそろそろ時間だから終わりにしようか。
じゃあ、挨拶お願いね。

「きりー、れー。ありがとうございましたー」

はい、お疲れ様。

「……先生、それ、なんですか?」

ん?これかい?さっき使ってたじゃないか。実験用の水晶だよ。

「でも、使ってたのは4つですよね?先生、5つ持ってるじゃないですか」

あぁ、これかい。
これは……まぁ、僕の趣味みたいなものだよ。
気にしなくていいよ。

「そう……ですか」

うん。じゃあ、お疲れ様。
早く移動した方がいいよ。次、移動だろう?

「あ、そうでした!?」

頑張ってね。

「はい。失礼します!!」

廊下は全力疾走しちゃいけないよ〜
……さて、じゃあ僕は“お楽しみ”でも始めますか。


××××××××××××××××××××××××××××××


……夢の中に、ある映像が流れ出した。
それは、五つの映像。今日からの未来を見ているかのような映像だった。
その五つ全ての映像に、彼の姿があった。
全ての映像で、彼は笑っていた。
そして、その中の一つに、私と彼の幸せな映像もあった。
それを見た時、とても嬉しかった。
しかし、他の映像は、彼が他の女性と仲良くなり、幸せになっている映像だった。
それを見ていると、私の心の中の暗い感情……たぶん、嫉妬心が、湧き上がった。
夢から覚めた今でも、私はしっかりと映像を覚えている。
……結局私には、あの映像がなんだったのかはわからない。
……もしかしたら、ありえるかもしれない、ifの世界の映像だったのかもしれない。
……でも、そんなことはどうでもいい。
私は彼と一緒にいたい。それが、唯一の答えだからだ。
だからこそ、私は今日、行動を起こす。
絶対、彼を他の女性に取られたくなんかない。


××××××××××××××××××××××××××××××


「よぉし、じゃあ野郎ども、クリスマスパーティーやるぞぉ!!」
『おぉぉおおおぉぉおおぉおおぉぉ!!』

僕の所属するクラスの教室。
何故かテンションの高いミノタウロスの副委員長が叫び、皆が雄叫びをあげた。
今日は12月24日。
クリスマスイブだ。
たぶん、皆今年こそは彼氏彼女を作って素敵なクリスマスを……とか思ってるんだろう。
僕こと方丈 正孝(ほうじょう・まさたか)は、机に頬杖をかいてそんな白熱した皆を冷めた目で見ていた。
まぁ、だからと言って僕がリア充であるかと訊かれると、答えはNOだ。
彼女なんて全くないし、クリスマスの予定なんか白紙だ。
でも、僕は皆みたいに白熱しない。
正直、彼女が手に入るなんて思ってない。
ていうか、手に入らないだろう、普通?
と言うことで、僕はそう言った色恋事情は諦めました。
……そうは言っても、普通に気になる人は何人かいるんだけどね。
まぁ、彼女達の誰かと、っていうのは、無理でしょ。

「おいマサ!何ぼ〜っとしてんだよ!早く行こうぜ!?」
「うん?あ、ああ。そうだね」
「おーい、マサに京介!早くしないと行っちまうぞぉ!!」
「はいはい。今行くよ!」

友人、京介に引っ張られたり、副委員長、江村さんに急かされながら、僕もパーティーに向かうのだった。
……ちなみに、このパーティーの立案者は委員長、アヌビスの長門さんだ。
カラオケで予約取って、皆で騒げるようにしたらしい。
いや、けっこう意外だよな、まさか真面目一筋の委員長がこんなことを立案するなんて。
何か狙いでもあるんだろうか?

「ん?あれ?イインチョ?どしたの?」

噂をすれば、というやつだろうか?
委員長がちょうど僕達を見ていた。

「あ、いや。少し気になったことがあってな」
「うん?どうしたの、委員長。気になること?」
「あ、いや。その……なんというか……方丈君が、あまり面白そうな顔をしなかったから、こういうのは嫌いなのか、と思ってしまって……」
「ああいや。大丈夫だよ。嫌いじゃない。皆でわいわいするのは、むしろ好きだよ?」
「ふぅ……そうなのか。それはよかった……」
「ありがとうね、心配してくれて」
「いや、皆に楽しんでもらいたいからな。当然のことだ。それに……」
「……え?」

特に君には楽しんで欲しいしな……
と、委員長は一瞬だけ僕の耳元に近づいて、そんなことを言ってきた。
瞬間、僕の思考回路が混乱する。
言葉はわかるが、意味が理解出来ない。
え?なに?どういう……?

「おっと、みんな結構先に行ってしまったな。君達も急いだ方がいいぞ?」
「おう。了解!」

真意を訊く前に、委員長はみんなを追いかけるために走って行ってしまった。
なんだろう、顔が少し熱い……

「ん?マサ、どうかしたか?」
「い、いや。な、なんでもないよ!?」
「ふーん。そか……にしてもさ、あの時、お前だからこそ楽しんでもらいたいんだ
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