「つぅ……まだ筋肉痛が残ってるなぁ……」
昨日は一日中、今日はお昼過ぎまで寝ていたというのに、未だに筋肉痛が抜けないとは……運動不足だなぁ……などと考えながら、僕はある場所に向かって歩いている。
今回は、茶葉の配達が目的だ。
……今日のお昼ごろに、店の電話が鳴り、よく知った声が紅茶の葉を注文したのだ。
あの電話さえなければ、今日も寝られたのに……
などと電話の主を恨みながらも、流石に仕事はしなければならないため、僕は茶葉を缶に詰め、その人のところへ向かったのだ。
「あ、こんにちわ」
「こんにちわ。星村さん。今日はどういったご用件で?」
目的地の前までたどり着くと、僕は、門番さんに挨拶をする。
……門番さんがいるということは、もちろん、その先……僕の目的地の前にも、門がある。
と言っても、正式な門とかじゃなくて、普通に大きな柵みたいな入り口しかないんだけど。
しかし、それでも、門番というものがある家はかなり少ない。
僕の知る限りでは、この街にはここと……もう一つくらいしか門番がいるような“屋敷”はない。
「今日は、これを届けに来たんですよ」
「ああ、紅茶ですか。私達も時々いただきますが、美味しいんですよね、それ」
「そうですか。それはよかったです」
「さて、いつまでもここに居させてはいけませんね。では、どうぞ通ってください」
「ありがとうございます」
門番さんに通されて、僕は目的地である屋敷に向かう。
さて、今僕が向かっているのは、この街の中心部にある、大きな屋敷だ。
どの通りからでも、行き着くことが出来、一番偉い人物がそこには住んでいる。
つまり、ここは……
「いらっしゃいませ、星村様。ライカ様からお話は伺っております。案内いたします」
「ありがとう。侍従長」
まぁ、そういうことだ。
ここは、親魔物領街“ライン”の領主。“テベルナイト家”の屋敷なのだ。
侍従長の案内で、僕は領主、ライカ・鶴城・テベルナイトのもとへ向かう。
「相変わらず、ここは人が少ないんですね」
「そうですね。私を含めて使用人は約十人、あとは、門番のあの二人くらいですからね」
「ほんと、必要最低限しか、雇ってないんだよね、あいつは……」
「まぁ、それでも仕事に支障はありませんし、文句はありません……さて、着きましたね」
少し喋ってると、すぐに彼のいる書斎に着いた。
侍従長が扉をノックし、失礼します、と言いながら扉を開け、部屋に入る。
「ライカ様、星村様がいらっしゃいました」
「おや、もう来たのかい早いね。いいよ。中に入れて」
「かしこまりました。星村様、どうぞ」
侍従長に促され、僕は部屋に入った。
目の前には、威厳も何も感じさせない、若い、僕より少し年上くらいの男がいる。
彼こそ、ここの領主、ライカ・鶴城・テベルナイトだ。
「やぁ、星村。元気そうで何より」
「ああ、そっちも元気そうだね」
「頼んだものは?」
「はい。これだろ?」
「お、持ってきたようだね。よかったよかった」
挨拶を交わしてから、僕はライカに缶を放って渡す。
そして、周りを少し見てから、ここに居たいであろう人のことを訊く。
「奥さんはどうしたの?」
「あいつは……仕事で動きを封じ込めてある。あいつを自由にしておくのは、僕の体力的に厳しすぎるからね」
「……なるほど」
彼の奥さん、鶴城・T・神奈(つるぎ・てべるないと・かんな)は、人であるにも関わらず、いろいろと魔物並なのである。
スペックとか、性欲とかが……だ。
なので、相手をしているライカはよく苦労しているらしい。
「そういえば、マスターと美核ちゃんは元気?」
「ああ。二人とも元気だよ。マスターは昨日から墓参りに向かっちゃったけど」
「墓参りか……嫌な……事件だったね。まだ見つかってないんだろう?」
「時報はやめろ。不謹慎だ」
「そうだね。失礼」
何時もの調子でライカが言ったため、僕はむすっとしながらライカを嗜めた。
ライカは、バツ悪そうな顔をしながら、謝る。
ライカは、この世界の中では珍しい、僕のいた世界を知る人間だ。
そのため、たまにそういうネタを使ったりしてくる。
よく
よく場を和ませようとして使うそれだが、今回は逆効果だった。
そして、彼は顔を俯かせる。
と、突然空気が重くなる。
「……うん。ごめん。あれは、本当に嫌な事件だった。僕の未熟さ、考えの甘さが招いた結果だったから……ね」
「………………」
事件の内容を知っているから、僕はライカの言葉に答えることが出来なかった。
……教会騎士団変死事件。
ラインに滞在していた教会騎士団が、一晩のうちに全員変死していたという事件。
その裏には、数人の、別の死者がいた。
それは、この街の外れにある孤児院の、二人の夫婦と、その手伝い数人……
そう。それはククリス
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