依頼は無事成功した。
あの後街についた俺はルフトと別れ、喫茶店のリースの部屋に行き、報酬をいただいた。
交渉途中で、体で払おうか?なんて冗談で言われたが、スルーして金額交渉に入ったら、色気のない男だと言われてしまった。
そして、俺はまたギルドで依頼を達成しながら普通に暮らしている。
あれから一ヶ月。
特に何もないまま、俺はいつものように依頼を見つけようと掲示板の前に立つ。
と、
「あ、ジル。貴方宛の依頼書があるわよ」
「……俺宛の……?」
「ええ。これよ」
受付嬢が俺宛だという依頼書を出してきて、俺はそれを受け取って目を通す。
依頼・護衛
報酬・要相談
内容・あの子のことを助けにいくわ手伝ってちょうだい
追記・ジル・クード以外のものには渡さないこと
依頼者・リース・グランギニョル
……なるほど。あいつか。
そういえば、そこそこな回数喫茶店に通っていたが、一度も会わなかったっけな……
元気だろうか……?
「……よしわかった。この依頼を受ける」
「ありがとう。じゃあ場所は……」
「分かってる。じゃあ、行ってくる」
そう言って、俺はギルドを出ようとする。
と、扉付近でヴァンと鉢合わせた。
「お、大将!二週間ぶりか!?」
「……そうだな……最近お前ここに来ていないからな……」
「ま、ウィナの仕事が忙しくてずっと手伝っててな!!」
「……確かに、あの店は人気だな」
「ああ!包丁から刀まで、良質の品を貴方に!鍛冶屋レギンスをよろしくな!!」
「……そうだな。余裕があったら、ナイフでも注文しにいくか……」
「おっと、大将依頼かい?すまんね、邪魔しちまって」
「……いやいい。それじゃ、またな」
「おう!!」
いくつか言葉を交えてから、俺はヴァンと別れて喫茶店に向かった。
「いらっしゃいませ……あ、ジルさん。こんにちわ」
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店に入ると、あの時と同じように星村が接客をしていた。
「……ああ。お疲れ、星村。……今日はリースに用があるんだが……」
「ええ、聞いてますよ。直接部屋に来なさい、と伝えるように言われてます」
「……わかった。……盗み聞きは、するなよ?」
「わかってますよ」
星村に釘を刺してから、俺はリースの部屋に向かった。
「……入るぞ?」
「どうぞ。……こんにちわ、ジル。元気そうね」
「……お前もな」
部屋に入ると、あの時と変わらないリースの姿が部屋にはあった。
「さ、座ってちょうだい。早速話をしましょう」
「……ああ。……依頼書からだいたい内容は予想できたが、また、神殿に向かうのか?」
「ええ。その通り。……これがなんだか分かるかしら」
座るよう促しながらリースが俺の目の前に置いたのは、一つの小瓶。
中には、少量の淡い紫の液体が入っている。
「……まさか、魔物の魔力のみを枯渇させるという、あの薬か?」
「違うわ。これはそれとは正反対。つまり、“服用した者に強制的に、瞬時に魔物の魔力を付与させる”……つまり、使い方によっては人間を簡単に魔物に出来る薬よ」
「……そんなもの、いったい……ああ、なるほど」
「そういうこと。あの子にこれを飲ませれば、また魔物にすることが出来る。つまり……」
「……ジェミニを主神の呪縛から開放出来る、ということだな。なるほど、その薬を作っていたから、お前はまだ小さいままだったのか」
「……あんまり、気にしていることを言わないでちょうだい……まぁ、その通りよ。元の姿に戻るより、あの子を自由にさせてあげる方が重要だからね。一ヶ月。ずっと研究室に籠ってたわ」
「……自分の姿より友の自由、といったところか?」
「まぁ、ね。それに、あの薬の材料、ありえないくらい珍しいものばかりだったから、もしかしたら作れないかもしれないわね」
「……ふむ、材料調達なら、ギルドに依頼をすればいいんじゃないか?」
「そのつもりよ。……さて、じゃあ急いで行きましょう。早くあの子を自由にしてあげたいわ」
「……そうだな。移動方法は……」
「もちろん、飛ばせてもらうわよ?」
「……分かってる」
ニヤリとリースが笑ったのを見て、俺も笑い返す。
リースはしっかりと薬をポケットに入れ、俺と一緒に店を出る。
「じゃあ、よろしくね?」
そういいながら、リースは店を出てすぐに俺の背中に飛び乗った。
「……勘違いする奴がいるかもしれないんじゃないのか?」
「別に。私の見た目がこれだし、勘違いされてもいいわよ」
「……そうか」
リースの体が安定したのを見てから、俺は空に飛び立つ。
「うん……やっぱり空を飛ぶっていうのは、気持ちがいいものね」
「……ああ。そうだな……」
「そうそう、ジル」
「……なんだ?」
「この依頼が終わっても、まだ私から依頼があるの。……それはとても時間がかかる依頼なのかもしれな
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