ルシア達のハロウィン

「「Trick or Treat!!」」

……家に帰ると、フィスとアーシェが飛びついてきた。

「おっと……二人とも、どうしたの?」
「あれ?ルー君知らないの?今日はハロウィンだよ?」
「ハロウィン……ああ、そうだったね」

ハロウィン。
一年に一度、街のみんなが空想の生き物の仮装をしたりして家にいる人からTrick or Treat(お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ)と言ってお菓子を貰ったりするイベントだ。
……そういえば、ここ“ライン”ではそんなイベントがあったな、と僕は思い出した。
大体五年も旅に出てたから、すっかりと忘れてしまっていたよ。

「と、言うことじゃ。お菓子をくれないと悪戯するぞ、兄様?」
「なるほど……だからあんなに安かったのか……」

手をワキワキさせながらにじり寄ってくるアーシェはスルーしといて、僕は手に持っていた袋を二人の前に出す。

「?ルー君、これは?」
「パンプキンパイだって。帰りに見つけてね。美味しそうだったし、少し安かったからみんなで食べようと思って」
「……チッ、もう少しで兄様に悪戯出来たのにのぉ……」
「それはいつものことだったと思うんだけど……おかげでインキュバス化もしちゃったし……まぁいいや。とにかく準備しようか」
「そうね。お皿にナイフに……あ、飲み物は何がいいかな?」
「ふむ、寒くなってきたし、ココアなんかはどうじゃ?というか兄様、わしはよく今までインキュバス化しなかったな、と思ったぞ?」
「「あはははは…………」」

そんな感じに話しながら、僕達は準備を始めた。
……僕達が“ライン”戻ってから、早一ヶ月。
もうアーシェの、兄様という名前にも慣れてしまった。
そして、度重なる二人の“争奪戦”のせいでインキュバス化も果たしてしまった。
でもまぁ、特に嫌ではなく、むしろ幸せだと言ってもいいかもしれない。
とまぁ、そんな回想を挟んだところで準備完了。
テーブルの上にはきちんとほぼ三等分されたパイに温かいココア。
ニコニコしながらそれを見ている二人を見て、僕は買ってきてよかった。と思うのだった。

「さて、ではいただきます」
「「いただきます(じゃ)」

そう言って、僕達はパイを食べ始める。

「うむ!!これは美味いの!!」
「うん。美味しい!!ありがとうルー君!!」
「どういたしまして」

とりあえず、二人の反応を見てから僕も一口。
サクサクとした食感に、カボチャの甘みが口に広がる。
うん。美味しい。

「……兄様、これ、どこで買ってきたのじゃ?」
「うん?たしか……そうそう。喫茶店、“アーネンエルベ”だ。近くでいろんな人が買ってたからね。気になって見てみたら、これを見つけたってわけ」
「うむ?“アーネンエルベ”……ああ、あそこか。フィスと何度か寄ったことがあるんじゃが、あそこのアップルパイは美味かった覚えがあるぞ」
「うん。そうだったわね。そういえば、あそこで魔女を見かけたわね」
「うむ。あやつもあやつの兄様と一緒にコーヒーを飲んだりしていたの」
「へえ……じゃあ今度お昼にでも行ってみようかな?」
「「魔女に会いに?」」
「お昼を食べにです!」

そんな雑談をしているうちに、パイはどんどんなくなってしまった。

「じゃあ、ごちそうさま」
「「ごちそうさまでした」」
「じゃあ、僕はお風呂に入って……って、なんで二人して僕の事を囲んでいるのかな?」
「あ、そういえばルー君にはさっきの言葉の意味、言ってなかったね」
「さっきのって、“Trick or Treat”のこと?」
「うむ。あの言葉の意味はの……」
「「お菓子をくれても悪戯しちゃうぞ」」
「……という意味なのじゃ」
「なんて傍迷惑な!?」
「ということで、いただきまーす!!」
「うむ!!いただきますじゃ!!」
「ちょっ!?二人とも!?あっ…………」

…………最近思うのだが、僕がレテを使えないのをいいことに、二人とも大胆に襲うようになった気がする…………
いやまぁ、嬉しいには嬉しいんだけどね……
そんなこんなで、僕はいつものように眠れないのだった……
10/10/30 23:54更新 / 星村 空理

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