「…………」
「ん?どうしたの?」
部屋に入ってすぐ沈黙した僕に美核はキョトンと声をかけてきたが、とりあえずその声に答える前に状況の確認をしよう。
列車に2時間揺られて伍宮に到着した僕たちは、すぐに旅館に入って(どうやら予約をしていたらしい)、まだ体を洗ってないから、とライカから混浴で入る上での注意を聞いて、みんなで温泉に入った。まぁ、そこまではいいだろう。うん。
ここまで行けばもうオチなんて見えてるし最初から今の状況を語ってしまっているから必要ないのだが、とりあえず全部流れを確認してみよう。
温泉に入って温まっていた僕だけど、荷物を片付けたかったし、少々疲れも溜まっていたので早めに寝たいと考えて、ライカから部屋の場所を聞いてそこへ向かうと……
「部屋に美核がいたなう、と……」
「……えっと、なにを言ってるの……?」
「ん?いやなんでもない」
まぁ、そういうことである。
僕か美核が部屋を間違えたという可能性があるけど、それは絶対に違うだろう。
どう考えてもライカが関わってますね本当にありがとうございました。
さて、美核と一緒の部屋というのは嬉しくないといえば嘘になるが、非常に、とまではいかなくてもそこそこ気まずいものだ。特に今の状況では。
なにかあったら困るし、ここは別の部屋でも……
「私としては、空理と一緒の部屋がいいかなぁ、って思うんだけど……」
「え……?」
僕の考えを読んだかのように、美核がそう言ってきた。
「別になにか問題が起こるわけじゃないでしょ?私からなにかするつもりはないし、空理だって、まだ昔のこと気にしてるだろうし……」
「……ごめん」
「別に責めてるわけじゃないわよ。問題が全部片付くまで、私は待つってことが言いたかったの。でも、一緒の部屋で寝るくらいのわがままは聞いてくれるでしょ?」
「……そうだね、うん。じゃあお言葉に甘えて」
そう言いながら、僕は部屋に入って畳に腰を下ろし、荷物を置いて必要そうなものを出しておく。
まったく、美核にはいろいろと助けられてばかりだな……いつか、きちんとその想いに応えていかないとね。
「そう言えば美核、お風呂には入ったの?」
「ううん、まだ入ってないわ。ちょっといろいろとやっておきたいことがあったから。布団敷いたり、着替え用意するために荷物片付けたり……」
「そっか、まぁたしかに、冬だから布団準備してる間に体が冷えちゃいそうだもんね……」
「じゃあ、私もお風呂入りにいってきちゃうね」
「うーい、いてらさーい。僕はそのまま寝ちゃうね〜」
「うん、了解。おやすみ空理」
「おやすみ〜」
美核はお風呂に行くそうなので、僕は美核と一緒の部屋ということを意識して眠れなくなる前にさっさと寝てしまうことにした。
「……悪いかよ?へたれなんて言うなし……」
なんとなく、誰に言ってるかわからない独り言を呟きながら。
××××××××××××××××××××××××××××××
「……ふぅ〜、あったかぁい……」
ちゃぽん、と誰も見当たらない露天風呂に入って温まりながら、私は軽くため息をつく。なんというか、温泉っていいなぁ〜。家のお風呂と違って広いし、気持ちがゆったりするし……
「ふにゅぁ〜」
「また可愛らしい声ね、美核ちゃん」
「ふぁにゃっ!?」
誰もいないと思ったところで声をかけられたので、私は驚いて変な声を出しながらその声がする方向を見た。
「あ、あなたでしたか……どうも」
「ん〜、なんか呼び方が若干よそよそしい感じがするけど……まぁしょうがないか」
「ごめんなさい……」
「いやいや、気にしなくていーよ。それよりなんでこんな遅くにここに?みんなと一緒に入ったんじゃないの?」
「いえ、荷物を片付けたり、布団を敷いたりしてましたから」
「むぅ、話し方も少し硬いよ?もしかして、警戒してる?」
「どう、でしょうね……?」
警戒、してるのだろうか?
私は、わからない。この人にどう接すればいいのかが。敵でもなくて味方でもなくて、知り合いでもなかったのに他人でもなかったこの人を、どう認識すればいいのかわからない。
私は……この人をどう思えばいいのだろうか?
「……やっぱり、不安?」
「………………」
不意にそう質問され、私は黙りこんでしまった。肯定はしない。けど、否定もできない。私は、ライカさんの“計画”の行く末に、不安を抱いていた。
「ま、無理もないわね……でも大丈夫よ」
「えっ?」
「シナリオは、もう全部決まっちゃってるから」
「ど、どういう意味で……」
「さて、じゃあ私はそろそろ上がるわね」
「あっ……」
問いただす前に、彼女はザバッとお風呂から上がり、脱衣所に戻ってしまった。
……この空気は、少し前に、今日の夕方に感じたことがある。脱衣所に戻って聞くこ
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