「此方がうちのメニューになります。」
「あぁ、どうも。」
にこやかに笑いながら水とメニューを置いてくれた店主に会釈をし、目の前のメニューを手に取ってみる。そして絶句した。なぜなら図書館で見たあの面妖な仏語か蘭語か象形文字的なサムシングが紙面を埋め尽くしていたのだから…。嘘だと言ってくれよバーニィ!あっしが何したってのさバーニィ!!あたしゃ悲しいよバーニィーー!!!
「ご注文がお決まりになりましたら呼んで下さいね。」
「アッハイ。」
最早この店主の屈託のない笑顔が魔王の暗黒微笑にすら見えてきた。いや本人に悪気がないのは分かってるし説明のせの字すらしてないから仕方ないんだけどもね。精神の持ちようって怖いわぁ…。
「…これ、何て読むの?」
「えーっと…まかいものぽとふ…だって。」
店主が厨房へ再び消えるのを待ってから、こっそりとソピアに読み方を聞いてみる。まかいも…?あ、あれか正式名称『魔界製凡庸型収穫数をヅラみたいにわっさわっさ生えてくる食えもしない蔦で人を騙す実は茄子の一種』略してまかいもか。…違う?うるさい。
「じゃあ、これは?」
「んー…ほるす…たうるす…みるく…のしちゅー。」
今、あっしは店主に貰ったメニューを膝の上のソピアに読んでもらっている。…はぁ、情けない。我ながら何とも情けない…。28にもなって子供に文字を教授して貰う事になろうとは……。情けないが、こうでもしないと読めないのが現実。魔界文字(今命名)が難読過ぎて生きるのが辛い。主にあっしが。……そうだ!こういう時は!
「ソピアちゃんは何がいい?」
「おにいちゃんといっしょがいい!」
はい撃沈!!必殺「オシャレな店では他人に合わせる作戦」が何の成果も挙げずに激しく轟沈し候!!煩い誰が早漏だッ!!……そう言うこっちゃないんだよソピアちゃん…。お兄ちゃん読めないから君に助けを…って子ども相手に何助け舟求めてんのあっし…。
「んー…あ、カルボナーラって文字ある?」
「えっとねー…。あった!」
「じゃあそれ頼もっか。」
「うん!」
良かった…。まぁ、洋風なお店だしカルボナーラが無い事は無いだろうと思ったけど一応あって良かった…。
とりあえず食事にありつけそうな事に胸を撫で下ろしつつ、店主さんを呼んで注文をする。
注文を終えて安堵の溜息を吐きながら、机の上で不思議そうに水の入ったガラスのコップを掌で叩いたり首の角度を変えてじっと見たりしているフウに目を向ける。
「フウー。それ、倒しちゃ駄目だぞー?」
「あい。」
…うん、間違いなく聞いてないな。コップから全く目ぇ離してないし。
生返事はいけないんだぞー…って、こういう時無理やりにでも聞かせた方が良いんだろうか。でも店内で泣かれても困るしなぁ。
「パパ?」
「ん?」
突然、フウがコップを指差しながら此方を見上げて来た。
「飲みたいのか?」
「んーん!パパ?」
フウはしかめっ面で小さな頭を横に振り、再度コップをビシッと指差す。
…………あ、あれ(コップ)が何なのか知りたいのか。
「あれはコップ。」
「おっぷ?」
「コップ。」
「おっぷ!!」
間違えたままだが知的好奇心を満たせた事に満足したのだろう、満面の笑みを此方に向けてふわふわと目の前に舞い上がって来て抱きつこうとして来た。でも前のようなセルフ修羅場を店の中でかます訳にはいかない。故にフウには悪いけどぷにぷにの腹部を優しく掴んで降ろさせてもらった。
「むー!」
ご不満そうなフウが両手であっしの左手をベッチベッチと叩くが全くもって痛くない。フハハハハ!効かぬ、効かぬわぁー!
「…おにいちゃん?」
「ん?何?」
不意にソピアに話しかけられたので下を向くと、ソピアは今にも泣きそうな表情であっしの顔をジッと見ていた。
「おにいちゃんは…いつか…おうちにかえっちゃうの?」
「んー…。」
……そりゃまぁ、いつかは帰らないといけないよな。猫の事も神社の事もそうだが、何より向こうには義兄さんと父さんの墓がある。
「…そうだなぁ。」
「ふぇ…。」
「だぁー!今すぐじゃない!暫くは居るから泣かないで!!」
あっしの答えを聞いて急に涙目になったソピアの頭を撫で、取り敢えず落ち着かせる。
「……………。」
そこのガタイの良い兄さん、気づいてるんだぜ。ニヤニヤする位ならいっそ笑え。ほら、笑なさいよぉ!
「兄ちゃん。アンタぁ、旅人かい?」
「え?あ、はい…。」
って、違う違う。
「いやすいません、違います…。一応、昨日引っ越して(?)来た者なんですけど…。」
「昨日…?……もしかしてアンタ、昨日魔王様が言ってた『魔界々のゆ」
「だぁーーーっ!!」
言わせるかそのフレーズ!こっちじゃ勇者とかの言葉は普通なんだろうがこちとら抵抗力ないんだよ!つ
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