ーーーーーー 次の日
「……………。」
「……………。」
何の魅力もないこの孤島。本来このクソ暑い時期でも観光客のかの字も誰も居ない船着場に、ひなとぶかぶかの白いTシャツを着たキャンサー…「畑本 桐乃(はたもと きり)」の二人がうちの島の名前が書かれた看板の後ろに隠れていた。
……何やってんだ、あいつら………?
………あ、良い事思い付いた。
「わ゛ーーーーーっ!!」
「「ギャーーーーーーーッ!!(〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?)」」
暇なのでこっそり近付き、全力で脅かしてみた。案の定、二人とも全力で驚いてくれた。
きりに至ってはキャンサー種特有の威嚇であるハサミカチカチを高速でしまくっている。ちょっとごめん。
「なーん、もみ兄かぁー…。おばけちおもたばい。あぁー、びっくっしたー…。」
「………びっくり。」
「うん、やろな。」
だって驚かそうとしたもん。
「で…ひな、きり、何してんだお前ら。」
「こんしまにばりべっぴんばきよるちた!やけぇみんきた!!」
「…………うん。」
べっぴん…?あぁ、清の彼女さんか。
………ん?
「聞いたって…誰から?」
「きりのとうちゃ。」
「………おとぅ。」
「あぁ、成る程。」
きりのオッちゃんは渡しだもんな。そりゃお客の見た目とかの情報は必須か。つか、娘だからって客の情報教えちゃ駄目だろ。
「無線使って聞いたのか?」
「うん、そがよー。」
「………うん。」
………あー…だったら…。
「きり、ミヤ姉何て言ってた?」
「……………。」
きりは答える代わりに黙って近くにあった長めの棒を下半身のハサミで掴み、持ち上げてギリギリと挟んだ。
「……やっぱり。」
……オッちゃん、ご愁傷様。
因みに、このジェスチャーの意味は『取り敢えず心の底から反省するまでハサミで締め上げて隅から隅まで一ミリの残しも無く丁寧に洗い、空になるまで絞り尽くす』である。
後で腰痛と打ち身の薬、先生のとこから貰って来てあげようかな。
「もみ兄ばなんしにきよっと?」
「お前らの目的さんのお迎え。」
「……………。」
ボギッ。
あ、きりが持ってた棒が折れた。
「…ま、まさか。」
「あ?」
「まさかもみ兄んオンナかーーーー!?」
「うっせーし違わい。」
「まぼっ!?」
ご近所迷惑になるので、訳分からん勘違いを盛大にかますアホの頭にチョップをぶち込む。…割と良いのが入った。
「くおぉー……!」
「清の父ちゃんから頼まれたんだよ。正確には清の女。」
「……………ほんと?」
「俺は嘘、つかねーやろ?」
頭を押さえて転げ回るひなはさて置き、物分かりの良いきりには肉体言語ではなく普通に諭す。
「…………うん。」
「やろ?」
……まぁ、彼女居ないとか自分で言ってて悲しくなってくるけど。人間だけしか住んでない場所なら兎も角、魔物だらけのこの島で二十歳独り身………。ま、俺にも非はあるけど…。
………へっ、カップルなんざ爆ぜれ。
「……………………。」
「ん、あぁはい撫で撫でな。」
「プクプク……。」
きりは無口…と言うより感情を表に出すのが苦手だ。でも、こんな風に嬉しい時には殻から泡を出したり、さっきやってた威嚇のハサミカチカチみたいに、その分身体が正直だったりするので問題はない。
「あー!きりだけこひかー!ひなもなぜれー!!」
お、復活早いな。
「んー?んー……。おし、こっち来い。」
「やたー!」
「……。」
何の疑いもなく此方へ走って来て、満面の期待した笑顔で待つひな。しかしその笑顔、盛大に裏切らせてもらう…!
ーーーーーー
「もうすぐ港ば着っきょっどー。風ばキツなっけん、羽、しっか畳んじょけー。」
「あ、はーい。」
椛達が住む島近海を走る小船。珊瑚が眼下を、潮風が船体の上を駆け抜けていく中、色の薄い灰色の髪をポニーテールに結わえた一人のワイバーンの少女が甲板に取り付けられたベンチに腰掛けていた。
「しっかし…ほんにべっぴんさんばい。清坊には勿体なかぞ。」
「あははっ。オジさん、それ何回目?」
「そんだけべっぴんちごちゃっと。」
船の舵を握りながら、きりの父親であり島唯一の渡しである「畑本 舷(はたもと げん)」は物珍しさからか本土から来たこのワイバーンに話しかけまくっていた。…自分の家では嫁さんが包丁…否、ハサミ研いで待ってるとも知らずに。
「にしてん、嬢ちゃんワイバーンちやろ?何ちや飛ばん。」
「んー…。理由は色々ありますけど、第一には『どれがどの島か分からないから』です。」
「あー…。」
ワイバーンの答えに、舷は妙に納得しながら頷いていた。そう、栴達が住む島と言うのはその周辺(つっても島同士は結構距離はある)にある島々と形状が酷似しており、正直島在住の飛行型魔物
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