大体いつも、こんな感じ

「っあ゛ーーー!暑っぢーーー!!」

茹だる暑さと蝉が煩く鳴く中、全力で吐き出した鬱憤が俺以外誰も住んでいない、無駄にだだっ広い我が家に響いた。
誰かに聞けば『何処それ』から15分くらい考えて『あぁ、あそこね』とやっと思い出されるようなド田舎。そんな辺鄙な村に、俺ーー「日上 栴(ひのかみ もみじ)」は住んでいる。


「くたびれたサラリーマンか、おどれは。」

『店側』の入り口が開き、随分な口を叩きながら見知った顔が我が家に入って来た。
こいつの名前は「下月 清(しもつき せい)」。赤ん坊の頃からずっと付き合っている親友だ。因みに彼女持ち。爆ぜろ。

「るっせ。つか帰ってたのかよ。」
「ついさっきな。昼間っから家の中でゴロゴロ…。はー…同年代としてどうかと思うぞ、その生活。」

ため息を吐きながらぐでっと畳に寝っ転がる俺の隣に腰掛け、高校の頃から使い続けている鞄を下ろす清。
物持ちが良いんだか貧乏性なんだか。

「こっちは相変わらず暑いなー…。あ、そだ。調子どうだ?」
「それは喧嘩売ってるって事で良いんだよな?」

家の中や前どころか、近くの山までの道を見渡したって閑散としている過疎地で売れ行きを聞く親友。
その節穴練り飴で埋めてやろうか。
苛つきついでに起き上がり、店内に掛かっている振り子時計に目をやってみる。
………1時半。そろそろか。

「おっ、俺来てやる気出たか?」
「んな訳ゃねーだろ。『時間』だからだよ。」

立ち上がって居間へ行き、リモコンを手に取ってクーラーを付けた。
冷やされた空気が機械から流れ、灼熱地獄が徐々に天国へと生まれ変わって行く。

「あー…涼し。どうせ毎日付けんだから、ずっとオンにしとけよ。」
「ダァホ、毎日付けてっから魔電代がバカ高くなんだよ。少しでも節約しなきゃ、すぐにおまんま食いそびれちまわぁ。」
「ハッ、じじくせ。」
「んだと半端モン。」

売り言葉に買い言葉、久々に顔を合わせたにも関わらず睨み合う。
すると…

「もみ兄、いりよるー!?」
「おぅひな、いらっしゃい。」

再び『店側』の引き戸が開き、黄緑がかった青い羽毛が特徴的なサンダーバードーー「陽空 雛(ひそら ひな)」が入って来た。
相変わらず速いな。学校から此処迄結構ある筈なんだが。

「あー!キヨ兄だー!めっずらしー!」
「おー、ひな久し振りー。大きくなったなー。」
「だしょだしょー!?ウチってば『ましょー』のおんなじゃけん、キヨ兄もメロメロちやろー?」

清の褒めことばを真に受け、(本人にとっては)妖艶な動きで誘惑するが、いかんせん胸が慎ましいのと行動がまだガキンチョなのとで全然様になってない。
耐えろ…耐えるんだ…!

「いや、背の話なんだが。」
「……………。」
「ぶっは!」

清の追い討ちで俺ダム決壊。

「もみ兄ひどかー!わらうこちなかやろー!」
「ぶっふ…!くふふ…!」
「ひとんことばわらいよるもみ兄なんが、これくらえー!」

笑ってしまった事で半ば拗ねた様子のひなは、魔力を変換した雷を此方に向かって放って来た。
しかしやはり子供の魔力、本来ならサンダーバードの雷は全身の力が抜ける電力があるはずだがひなの幼さだと精々ツボ押し程度の威力しかない。寧ろ心地いい。

「わ、ぶふっ…悪い悪い…。他の皆んなは?」
「もー!もうすぐきよるばい!」

尚も押し寄せる笑いの波を必死に堪えつつ聞く。
やはり無駄だと悟ったひなは魔力の放出を止め、頬を膨らませながらいつもの棚の前に行ってしまった。

「もみ兄ー。おかしちょーだーい。」
「おっ、二番はコーか。いらっしゃい。後、菓子はちゃんと買え。」

続いて入って来たのはいつも眠そうなワーシープの「三笠 琴音(みかさ ことね)」。普段なら最後辺りに来るんだけど、珍しい事もあるもんだ。

「コー、元気してたか?」
「あー………………。」
「……………。」
「「………………………。」」

突然、我が家を支配し始めた静寂。極限的にマイペースなコーの相手をする時は忍耐が必要だ。急かしてはいけない。

「うなー、どちらーさまー?」
「ぶっふぁ!!」
「ぷふー!!」
「お前ら結構酷いな。」

極めつけはこの物忘れの激しさ。頭が悪いという訳ではないが一ヶ月も同じ人と会わなければガッツリ忘れるのだ。図らずもひなと一緒に吹き出してしまった。

「くふっ…!こ、コー…ほんにわすれよっと?キヨ兄ばいキヨ兄。」
「??」
「ぶっくく…。コー…魚屋、魚屋のキヨだ。」
「………………あー!キヨ兄だー!」
「「だははははははは!!(ぎゃはははははは!!)」」
「あははははー。」
「もうやだコイツら…。」

もう無理。我慢の限界。
皆んなして、項垂れる清を指差しての大爆笑。





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「あー笑った
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