う・・・うん・・・?此処は・・・?アレ・・・顔が暖かい・・・。てか柔らかい・・・。
白濁した意識が段々と戻ってきたので目を開いてみる。しかし目を開いてもそこは真っ暗な闇。
アレ・・・?今は夜なのか?じゃあこの柔らかい感触は・・・?
腕が動く様になっていたので顔のあたりを触ろうとしてみた。
もゆん。
・・・はい?何なんですか、この程よく柔らかい物体は?
「気がついた・・・?」
上から小さな声が聞こえたかと思うと不意に視界が一気に広がる。そこには、先ほど助けるはずだったサイクロプスの女の子がいた。女の子の奥に竈が見える辺り、此処は家屋の中らしい。
・・・確か俺、腕に矢が刺さって麻痺毒で倒れたよな?じゃあ何でこの娘が、しかも家屋の中に?まさか、倒れてる間にあの奴隷屋たちに売り飛ばされて・・・!?
最悪のビジョンが脳裏に浮かび、戦慄する。
「・・・?起きたのに・・・動かない」
一瞬サイクロプスの女の子が無表情のまま近付いてきたかと思うと、頭の後ろに手を回され彼女の持つ豊満な胸に顔が埋まった。
うひょー、あったけー。・・・・・・・・・ってちょっとちょっとちょっと!!?貴女は一体何をしているんでしょうか!?自分のその胸に俺の顔をうずめるってあーた!ありがとう、いい経験をしたよ。
「ありがとう!もう起きたよ!」
「あ・・・」
急いでサイクロプスの少女の胸から顔を離す。少女は俺が起きたことに少し驚いたのか、小さく声を上げた。
「すー・・・すー・・・」
足の方から寝息が聞こえてきたので見てみると、狼少女が気持ちよさそうに足の上で丸まって眠っていた。
この様子だと、俺の想像は取り越し苦労だったようだ。何よりも三人が無事な事でほっと胸を撫で下ろす。
「・・・よかった」
「う〜ん・・・?」
狼少女の頭をやさしく撫でてやる。狼少女は少し身じろぐと、目を覚ました。
そして、そのまま足の上で伸びをすると、寝ぼけ眼でこちらを見やる。
可愛いな畜生。
「おはよぅ・・・」
「ん、おはよう」
挨拶をしたはいいもののまだ眠いのか、すぐに丸まってしまう。それをサイクロプスの少女が抱きかかえる。
「ルルナ・・・ちゃんと・・・挨拶しないと・・・駄目」
「ん〜・・・」
「起きて・・・」
サイクロプスの少女は狼少女を抱きかかえたまま少し揺さぶる。どうやら狼少女もそれで完全に起きたらしく、欠伸をするとふるふると頭を振った。
「ん?サイ・・・?」
「おはよう・・・」
「おはよー」
サイと呼ばれた少女を見やった後、ルルナは俺のほうを見た。
「にーちゃん、おきたの?」
「ああ」
「じー・・・」
「な、何?」
ルルナという少女がこちらをじっと見つめてくる。警戒しているのか?まあ、しょうがないよな。あんなことされてちゃな。
そう考えていると、ドスンと突如お腹の辺りに圧力がかかる。何事かと思い見てみると、ルルナがひしと抱きついていた。
痛い痛い痛い!爪が横腹に食い込んでる!
「・・・・・・」
「ちょ、ちょっと?」
「・・・ありがとう」
「え?」
「・・・こわかった、いたかった」
「・・・・・・」
そうか・・・そうだよな・・・。この子はまだ小さいのに耐えてたんだよな・・・。
俺は黙ってルルナの頭を撫でる。途端に、ルルナの俺を抱きしめる手に力が入った。
いたたたた!爪が、爪がぁ!
痛みから来る脂汗を必死に抑えながらルルナの頭を撫で続ける。
「にーちゃん、なまえは?」
「俺か?俺はスグロ。ミツキリスグロって言うんだ」
「すぐろ?」
「そ、スグロ」
俺の名前を聞くや否や、ルルナは尻尾を嬉しそうにパタパタと振った。
「あたしのなまえはね、ルルナ」
「ルルナ?」
「うん!」
ルルナは元気良く返事をすると俺のほうを見てにっこりと笑った。見た目相応のあどけない笑顔に、思わずこちらの顔も緩んでしまう。
「ウチの名前・・・」
「ん?」
前から小さな声が聞こえた。サイクロプスの少女が何かを言った様だ。
・・・もう少し大きな声を出してくれると有難いんだけどなぁ。
「・・・サイ」
「え?」
「ウチの名前・・・サイ」
「サイか・・・いい名前だ」
「・・・・・・」
にこりと笑いかけると、サイは無表情のまま顔を真っ赤にして下を向いてしまった。・・・あれ、俺なんか不味い事言った?
足に乗っているルルナはいぜんとして尻尾を振ったままこちらを見上げていた。なんとなくせがまれている様な気がして、頭を撫でてやる。
「・・・あ、あの!」
「うわぁ!?」
「ひうっ!」
後ろから突然声を掛けられ、思わず叫んでしまった。驚きをそのままに後ろを振り向くと、黒ずくめの少女が部屋の隅に隠れるのが見えた。
少女は隠れた場所から顔を少しだけ出すと、口をパクパクさせて何かを言おうとしていた。
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