俺たちは村から少し離れた所にある寂れた神社に来ていた。
「ここがイナミ様の居る神社だ」
「へぇ・・・」
仮にも村長が住んでるって雰囲気じゃねぇだろ、ココ。
周りを見渡してみても人の気配すらしない。
ちなみにココに来る途中、やたらとちっこい幼女に絡まれた。
まぁ、殆ど関係ないけど。
「イナミ様ー、イナミ様ー。・・・っかしいな、いないのか?」
「すー・・・すー・・・」
いつの間に寝たんだパサラちゃん・・・。
・・・つーかいねえだろ、こんな寂れた神社に。
「は〜い、誰か呼びました〜?」
・・・いんのかよ!
心の中で盛大にツッコむ。
神社の襖が開き、巫女服姿の女性が眠そうな表情で顔を出した。
金色の長い髪におっとりとした落ち着いた顔、一言で言えば美人である。ただ、頭に三角形の耳と襖の奥に見えたふさふさした尻尾が幾つか見えた。
・・・だけど見覚えがあるような無いような・・・。
う〜ん・・・はっきりしない・・・。
「あらあら、クノーじゃないの。一体どうしたの?こんなとこまで来て・・・。あら、あなた・・・」
「は・・・はい?」
イナミ様はこちらを見た瞬間、何かを思い出したような顔をする。
そして何か考え始めた。
「え〜っと・・・」
「・・・」
「どこかでお会いしました?」
「さ・・・さあ?」
いきなり尋ねられても。
・・・あれ、このやりとりどっかで・・・。
「イナミ様、こいつメイトんとこから来たんだってよ」
「あらそうなの?種族は?」
「人間だってさ」
「あらあら・・・」
そう言いながらもう一度こちらを見る。
「――――うね」
ふと、脳内に聞こえた幼い子供の声。
あれ?今の声――
「・・・あなた、名前は?」
イナミ様の声によって現実に引き戻される。
いつの間にかイナミ様は俺のすぐ近くまで来ていた。
「あなたの名前よ」
イナミ様は俺の鼻をちょんと突付くと、やさしく微笑みながら俺に名を訊いてくる。
「あ、はい。自分はスグロ。ミツキリスグロと申します。」
「じゃあスグロ君、あなたはどこから来たのかしら?」
「え・・・えと・・・あの・・・」
なぜか胸が高鳴り、顔が赤くなってしまう。
「もしかして人間界からこっち(魔界)に迷い込んじゃったとか!」
イナミ様はお茶目な素振りをしながらこちらを指差す。
「・・・・・・」
「え・・・図星・・・?」
俺が黙って俯いているのを見て意外だったらしく、その体勢のままイナミ様は固まる。
「・・・だったら」
「ん?」
「こんな簡単に来れる位だったら、帰れる方法ぐらいありますよね・・・?」
「それが、向こうからこっちに行く方法は少なからずあるんだけど戻る方法は・・・」
なん・・・だと・・・。
帰れないってどういう事だよオイ。あれか?新種の虐めなのか?
なんだか目尻が熱くなってきたぜチクショウ。
「・・・・・・」
「・・・えと・・・スグロ君?」
「・・・・・・」
「ほ・・・ほら、住めば都って言うじゃない。きっとすぐ慣れるわよ」
イナミ様は少し焦りながら微笑み、やさしく俯く俺を抱き寄せて励ましてくれた。
柔らかい感触が顔を圧迫する。
・・・いける気がしてきた。
男でよかったとそう思い、このまま顔を埋めていたくなったが鼻の奥から生温かいものが流れて来そうだったので俺はあわてて顔を離した。
「・・・で、俺は何処に住めばいいんです?」
「そうねぇ・・・」
「私の家に来たらどうだ?狭いけど二人くらいなら・・・」
「ダメよ、クノーだといつスグロ君を食べちゃうか分からないし」
「ちぇ・・・」
・・・食べるって何!?結局クノーは人喰いなワケ!?
俺が当惑していると、頭の上で眠っていたパサラちゃんが目を覚ましたのか欠伸をした。
「ふぁ・・・」
「お、おはようさん」
「おはよ〜・・・」
眠そうな顔をしているパサラちゃんを見て、イナミ様が手を叩いた。
「そうだ!」
「?」
俺を含む3人は一斉にイナミ様を見た。
「パサラちゃん達の家にしましょう!」
その、今思いついたような一言で、俺はケサランパサラン5姉妹の家に住む事になったのである。
思いつきバンザイ(棒
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