――――――鈴本幼稚園・内部
「・・・どうしてこうなった?俺は、ただゆっくりと休日を過ごそうとしてただけなのに・・・。」
「諦めろよ、もう園長先生達出ちゃったしさ。」
エプロンをして園児達の名簿を持って項垂れる俺の肩を、鉄ちゃんが軽く叩く。
・・・そもそも何処からおかしくなったんだっけ?ええと・・・もういいや、考えるだけ頭が痛くなる。
「さ〜、みんな集まってるか確認するから集まって〜!」
『は〜い!』
鉄ちゃんが慣れた様子で呼ぶと、10人程の園児達が元気な声で返事をし一斉に俺と鉄ちゃんの周りに集まってきた。・・・ちなみに、茜ちゃんは部屋の隅っこで眠っている。
「ほら、自己紹介。」
「あ、ああ・・・。」
全員が、俺に対して好奇の眼差しで見つめてくる。
そういえば、人の前にこうやって立つの初めてだな・・・。
「え〜っと・・・どうも初めまして。今日一日みんなと一緒に遊ぶ天地陽介っていいます。よろしく。」
『よろしくおねがいしま〜す。』
「みんな、陽介兄ちゃんに訊きたい事あるかな?」
んなっ!?聞いてねぇぞ!?
「はいっ!」
鉄ちゃんが連れていたワーラビットの子供が元気良く手を上げる。
えっと、あの子は・・・。
「宇佐兎月(うさ うづき)ちゃん、でいいのかな?」
「うん!」
「で、質問は?」
「ようすけおにいちゃんはかのじょいるんですか?」
「いや、いないよ。」
「なんでですか?」
いや何でってあーた。まず、俺に興味持つ奴なんか居ないだろう、普通に考えて。
「陽介兄ちゃん困ってるからウッチーそこまで。じゃー次は誰が訊きたい?」
「・・・梵、ちっくと話しゆうが?」
「はい、ここまで!」
「え〜。」
子供達が残念そうに声を上げるが、これ以上醜態晒して堪るか。
思いっきり恨みを込めた目で鉄ちゃんを睨むと、流石に伝わったのか大慌てで俺への質問コーナーを終らせた。
「さ、出席取ろうか。」
『は〜い。』
「え〜と、阿立夕華(あだち ゆうか)ちゃん。」
「はいっ!」
褐色の肌とポニーテールを結んだ黒いリボンが特徴的なサラマンダーの子供が元気良く手を上げた。
「宇佐兎月ちゃん。」
「はいっ!」
先程のワーラビットが手を上げる。
・・・・・・・・・・・・以下略。
「箱真間(はこ まま)ちゃん以外はみんな揃ってるみたいだな。・・・で、どうすんだ?」
「陽介、暫らく遊んであげててくれるか?俺は向こうでカオリ先生と資料纏めてくるから。」
「あ?・・・ああ、わかった。」
鉄ちゃんは踵を返して教室を出ると、その後を小さな稲荷が追って行く。
あの子は・・・確か狐璃先生の娘さんで梨璃ちゃん・・・だっけ。
因みに狐璃先生というのは、うちの学校の古典の教師だ。種族は稲荷で村の中央から少し外れた所にある神社で暮らしている。
よっぽど鉄ちゃんに懐いてるんだろうな。・・・まあ、鉄ちゃんについて行ったし大丈夫・・・だな。
「・・・さ、今日は自由時間だからみんな思い思いに遊ぼうね〜。」
『は〜い!』
「怪我しない様にね。じゃあ解散!」
合図に手を叩くと、子供達は散らばっていった。外へ行く子もいれば本を読み出す子もいる。
さて、どうするか・・・。
「ねえねえ、ようすけおにいちゃん。」
「ん?」
不意に、後ろから声を掛けられた。振り返ってみるとラージマウスの子供が俺のズボンを引っ張っていた。
この子は確か中谷八雲(なかたに やくも)ちゃん・・・だったな。
「ん?どうしたの?八雲ちゃん。」
「いっしょにあそぼ?」
「いいよ、じゃあ何して遊ぼうか。」
どうやら人懐っこい子の様だ。
「あのね、あのおもちゃばこにつみきがあるの。」
そういって、八雲ちゃんは少し遠くにある蓋の付いた青い玩具箱を指差す。
「でねでね、おっきいおしろつくりたいからつみきがいっぱいいるの。」
身振りを交えながら、八雲ちゃんが一生懸命説明する。
・・・なるほど、積み木を出すのを手伝って欲しいのか。
「よし、一緒に取りに行こうか。」
「うんっ!はやくはやく!」
「っとと・・・。」
八雲ちゃんは元気良く返事をすると、余程楽しみなのか小さな両手で精一杯俺の脚を押してきた。
「この中にあるんだね?」
「うんっ!」
改めて玩具箱を見てみると、結構大きい。裕に一抱えほどはありそうだ。蓋も持ち上げるタイプではなく、宝箱の様な作りになっているようだ。
箱の蓋に手を掛ける。
「じゃーん、中身はハコでしたー!」
突然元気な声が聞こえたかと思うと、視界が紫一色になった。と、同時に顔面を激しい痛みが襲う。
「ぶっ!?」
「っきゃん!?」
「ま、まっちーん!?」
どうやらこの箱はミミックが化けていたらしい。勢いよく飛び出してきたのはミミックの本体のようだ。後ろ
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