「おにいちゃんと、おかいもの〜♪」
スーパーを楽しそうに歩いて行く紫苑ちゃん。八咫さんの処で飯食って今日はもう寝ようと思ってたのに、結局買出しに出なくてはいけなくなってしまった・・・。俺の腕の中には、茜ちゃんが心地良さそうに寝息を立てている。
そういえば、この子の起きてる姿・・・見たこと無い気がするな。連れて来る時だってぐっすり眠っていたし・・・。まあ、こんな所で起こすのも可哀想だしな。後で飯のときに起こす事にしよう。
「・・・おにいちゃん?」
「ん?」
いつの間にか、紫苑ちゃんが足元まで来ていた。何故か心配そうな顔をしながら。
・・・?如何したんだろうか。
「如何した、紫苑ちゃん?」
「・・・おにいちゃん、たのしくない?」
「そんな事は無いよ?どうして?」
「だって、おにいちゃんつかれたかおしてる・・・。」
・・・っと、いかんいかん。疲れが顔に出てたか。小さな子に心配させて、何やってんだ俺・・・。
心なしか、目じりに涙まで溜めてしまっている紫苑ちゃんの頭に優しく手を置いて、短い黒髪を撫でてやる。少し硬い髪の毛と、それとは対照的な柔らかい毛に覆われた耳に手が当たって気持ちいい。安心したのか紫苑ちゃんも気持ち良さそうに身を任されてくれた。ふさふさの尻尾も嬉しそうにパタパタと振られる。・・・分かりやすい。
「えへへ・・・。」
「さ、買い物を済ませようか。」
「うん!」
この後、先に行ってしまった紫苑ちゃんが迷子になってカウンターに呼び出されたのは、また別の話。
――――――アパート前
「うにゅ・・・。」
左手に持った荷物の重みに少し疲労を感じていると、不意に腕の中の茜ちゃんが身じろいだ。どうやら、目が覚めたらしい。留美さん譲りの大きな赤い瞳が俺を不思議そうに見据える。
「おはよう、茜ちゃん。」
「あかね、おはよ〜。」
今は両手が塞がっているので撫でてあげられないが、ご機嫌斜めになる心配は無さそうだ。その証拠に、嬉しそうな顔で紫苑ちゃんの声がした方向に体を傾けて抱っこされようとしている。
「うわっ!?あ、茜ちゃん、危ないって!」
「う〜♪」
「わわ。あかね、あぶないよ?」
そうこうしている内に、部屋の前に着いた。隣の美夜の部屋の窓を見てみると、電気が点いている。
帰ってきたのか。無事でよかった。・・・おっと、こんな事を言うと八咫さんに失礼だな。別にあの人たちも根っからの悪じゃないんだよな・・・多分。少なくとも、八咫さんの前では従順な舎弟なのだろう。
・・・ん、待てよ?よく考えてみれば、何で俺なんだ?このアパートには美夜という甲斐甲斐しく世話をしてくれる様な人も居るのに。・・・まあ、何時もの留美さんの気まぐれ、そう思っておこう。
「?おにいちゃん、おへやはいらないの?」
「あ、ああ。ご免ご免。じゃ、ご飯にしようか。」
「ごはんー♪」
左手の荷物を降ろし、ポケットから鍵を取り出してドアを開ける。その途端、紫苑ちゃんが元気良く中に入った。
・・・さあ、早くカレー作ってやるか。
何だかんだ言いながら、結局夕食時には腹が減ってくる。・・・この空き具合、軽く3杯は食えるな。
意味の無い確信を持ちつつ、俺は部屋の中に入ってドアの鍵を閉めた。ドアの近くにあるスイッチをオンにして、電気を点ける。
――――――1時間後
「ごちそーさまでしたっ!」
「お粗末さまでした。」
カレーを食べ終え、手を合わせて立ち上がる。
・・・しっかし、紫苑ちゃん良く食べたなぁ〜・・・。まさか俺と同じ量を1杯食べ切るとはなぁ・・・。
先程までじゃれて来ていた茜ちゃんも、今は大人しくほ乳瓶のミルクを飲んでいる。ミルクの用意って難しい、とりあえずそう実感した。初めての事で手探りもいいとこだったな。最初なんか口に含んだ途端泣き出して大変だった・・・。
「おにいちゃん、あそぼー?」
「ダーメ、今から食器洗うから。」
「むー。」
「うわっ!?」
強請る紫苑ちゃんを窘めると、紫苑ちゃんは頬を膨らませて背中に飛び乗ってきた。少し動きにくいが、背中に掛かる小さな重みが妙に心地良かった。紫苑ちゃんも遊んでとは言っていたものの、眠たいらしく首本を掴む手から力が抜けていく。
「・・・眠いの?」
「ねむくない〜・・・。ふにゃ・・・。」
そう言いつつも、手からはどんどん力が抜けて行っている。もう寝てしまうのも時間の問題だろう。
「・・・はぁ。」
俺はそのままその場に座り込み、食器をテーブルにおいて背中にいる紫苑ちゃんを抱きかかえてやる。
・・・軽いなぁ。
紫苑ちゃんは抱きかかえられると、余程眠たかったのだろうすぐに丸くなって眠ってしまった。ゆっくりと立ち上がり、普段俺が使っている布団を片手で敷く。その中に、紫苑ちゃんの小さな体をそっと置いてタオ
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