「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
さっき依頼を受けたと言ってからのこの沈黙。
もう既に軽く5分ほど、襖を挟んで立ったまま状態で固まっていた。
「・・・なぁイナミ、さっきから一体何を」
部屋の中から、黒い鎧を来た長い白髪の女性がゆっくりと顔を出してきた。
あれ、この女の人・・・。
「あ・・・」
そうだ、思い出した!俺が食われかけた(性的な意味で)時に助けてくれた人じゃないか!
「おや、君は・・・。そうか、依頼を受けたんだな?」
「え、あ、ハイ・・・」
どぎまぎとした空気の中、何事も無いかのように黒い鎧の女性が話しかけてきた。
この人が魔王軍の騎士団長か・・・。
確かに、威厳のあるすっきりとした顔立ちに丈夫そうな漆黒の鎧。どことなく気品もある姿は騎士団長のソレなのであろう。
「すまないな・・・。ラドンに言い包められてしまって・・・。」
「え!?」
イナミ様が驚いた様子で女性のいる後ろを向いた。
「それ本当なの、カミーユ!?」
「あ、ああ・・・」
「・・・・・・はぁ」
イナミ様は呆れたように肩を落としてため息をつく。
「またあの人は・・・」
「え・・・またって・・・?」
聞いてるそばから嫌な予感がするが思い切って訊ねてみた。
「ラドンさんはね、根っからの戦闘好きなのよ・・・」
「・・・はい?」
「他の人の戦ってる姿を見るのが楽しいらしくて、討伐とか戦闘依頼を差し向けちゃうのよ・・・」
今明かされた、衝撃の事実。
・・・通りで、この依頼を断るのを目で封印してたわけだよ!
「・・・ラドンは、今はああでも全盛期であった先代魔王の時代は相当の実力者だったそうだ」
「・・・はぁ」
「・・・」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。
ちらりと横を見ると、クノーも知らなかったようだ。俺と同じように口をポカンと開け、唖然としている。
「ともかく」
「・・・?」
今度は何を言って俺の心を折ろうってんだ?
「依頼を受けてしまったのなら仕方が無い。エルデへ向かうまでの三日、私が鍛えてやろう。私の名はカミーユ。改めてよろしくな。」
「あ、自分スグロと申しますって・・・へ?」
「それしか無いわねぇ・・・」
「善は急げだ。そうと決まれば訓練を開始するぞ。イナミ、暫らくこの小僧預かるからな」
「・・・仕方ないわ」
・・・え?今なんて?
ツカツカと近付いてくる魔王軍騎士団長。俺の腕を掴むと、社の外へと連れ出そうとする。
「ちょちょちょ、待ってください!カミーユ・・・さん!」
「・・・何だ?」
カミーユが足を止めてさも不思議そうに此方を見る。
「く、訓練って一体何ですか!?」
「ラドンから聞いていないのか?」
「初耳ですよ!」
「そうか・・・まあいい。とにかく訓練開始だ」
「だからー!」
結局そのまま腕を取られ、イナミ様の社を後にした。
―――――――――――
「行っちゃったわねぇ・・・」
「嵐みたいな人だな・・・」
カミーユとスグロが去って行った後、二人はそう呟いた。
―――――――――――
――――とある広場
「ふむ・・・ここがいいな」
「うわっ!?」
「きゃん!?」
いきなり止まられたのでカミーユの硬い鎧に顔面をぶつけてしまった。
その拍子にカミーユも少し体制を崩してしまったらしく、よろめく。
「ごめんごめん・・・。でも、いきなり止まるなんて」
そう言いながら鎧から顔を離す。
しかし返事が無い。・・・もしかして、怒った?
「本当、悪かったって・・・」
「全く、驚いて首が落ちてしまったではないか」
・・・はい?
信じられない言葉に、思わず顔を上げる。
普通ならあの長い白髪が顔にかかる筈がかからない。
崩れていた体制を直し、首をを見てみてもあるはずのソレは無く。
「ぎゃああああああああああ!?」
「な、なんだ急に!」
「く、首が!首がああああ!?」
何か足元から声が聞こえるけど関係ない!
どどどどどうしよう!俺、人一人殺しちまった!?嫌でもぶつかっただけで首が落ちるとか思ってなくてくぁlp@:せ・。;ふじこ:l;
「落ち着け!」
「アナロぐっ!?」
カミーユ(体)の放った斜め45度チョップが俺の頭頂部に直撃する!
スグロは62のダメージを受けたっ!
あまりの痛みにスグロは悶絶している!
「〜〜〜ーーっ!」
「あ、すまん・・・」
どうやら、カミーユは自分が鎧を着けていることを忘れていたようだ。
大事な事なので頼むから忘れないで頂きたい。
「全く・・・私は死んでなどいない、ほらな」
「あ、ホントだ・・・」
そう言ってカミーユ(体)は落ちた首を拾い上げ挿げ直す。
デュ・・・デュラハンだったんですか・・・。
「何だ、ジロジロと見て・・・」
「いや、何となく・・
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