人生という棒グラフは株価のようなものだ。
どう足掻いても浮き沈みがあり、誰しもが絶頂のままでいられる道理はない。
ジョジョ第五部のラスボスも、最強の能力を持ちながらとんでもない落とし穴に落ちた。
それに比べれば、パチンコに負けたなんて笑えるような不運だろう。
「うーん、グロい」
運気の負債からワンチャンないかと回したガチャも尋常じゃなく渋い。
銅銅銅銅銅銅銅銅銅銀。グロすぎて画面がガングロになっちゃったわね。
今日の俺は厄日で決定、早く明日が来ねぇかな。
「はぁ……」
ため息を吐くと幸せが逃げる。小言が好きな友人の口癖だ。
しかし自業自得とはいえ、遊ぶ小銭も余力も根こそぎ持って行かれたのだ。
何もすることのない日曜日の昼下がり、ため息の一つでもこぼしたくなる。
止めておけばいいのに、目下の往来に目が滑る。
タピオカ片手に談笑する女子高生。子供と思しきドラゴンを肩車するママドラゴン。
ギターの弾き語りをする青年の隣でハミングする、カップルと思しきセイレーン。
幸せそうな休日の風景に、自分が何をしているのか分からず軽く死にたくなった。
不意につんつんと、背中をつつかれる感触に肩が跳ねた。
「うわっ」
予期せぬ刺激に情けない悲鳴が漏れた。
慌てて振り返ると、大きな獣のような指を一本伸ばした幼女がニマニマと笑っている。
隠すそぶりもないその小ばかにした笑顔から察するに、彼女が犯人なのだろう。
「にひひっ! 不景気そうな顔してますね、おにーさん☆」
ぱちりと瞳の中の星がまたたいて、生意気そうな八重歯がきらりと光る。
大きなケモ耳がぴこぴこと揺れるたびに、お菓子のような甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
何度か見たことのある、確かファミリアとかいうサバトの魔物娘だったはずだ。
「そう見えるんなら放っといてくれ。ほら、ガキはあっち行った行った」
ガキに八つ当たりなんてみっともない。
これ以上この生意気そうな娘と一緒にいると、もっと言葉が荒れそうで嫌だった。
内心ほぞを噛みながら、邪険に手を振る。
「まぁまぁそう仰らず。どーせお暇なんでしょ〜?」
煽るやん。
こめかみが少し痛んだ。青筋が浮いたかもしれない。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、彼女は足元にすり寄ってくる。
太ももにその小さな頭を乗せて、挑発的な目がこちらを見上げる。
「イライラは身体に毒ですよ? 私とイイコト、しませんか?」
そう言って、身体に似合わず大きな手が内腿を撫でる。
小さくても彼女は魔物娘だ。つまるところ、そういう挑発なのだろう。
このメスガキが。
「ハッ、ちんちくりんが言いやがる。いいぜ、あとで後悔しても知らねぇぞ」
別にロリコンというわけではないが、このガキにはキツいお灸を据える必要がある。
普段なら丁重にお断りするが、どうにも俺も気が立っているらしい。
幼女は俺の返事にニヤリと口端を歪める。
どうせチョロいとでもこちらを小ばかにしているのだろう。
「ではでは一名様ごあんなーい☆ 私についてきてくださいね、おにーさん
#9829;」
そう言って鼻歌交じりにスキップするファミリア。
小ぶりなお尻をご機嫌に揺らす彼女に、絶対に泣かしてやると誓う。
人これをフラグという。敗色濃厚な方の。
兎にも角にも、目の前の生意気なメスガキをどうしてやろうかと考えながら、俺は素直に彼女の後ろをついていくことにした。
◆ ◆ ◆
「どこまで歩かせんだよオメー」
繁華街を抜けて、空っ風が骨身に染みる河川敷。
ジャケットを着こんでいても堪える寒さだというのに、惜しげもなく肌を晒した目の前の幼女はどこ吹く風かずんずんと歩いている。
くるりと振り返った彼女は、相も変わらずニマニマとしたり顔だ。
「オメーじゃなくて、私にはミコって可愛い名前があるんですよ、おにーさん☆」
「あっそ。俺もおにーさんじゃなくてスズキって名前があるんだけど?」
「モブっぽいお名前ですねぇ」
マジで泣かせたろ。
改めて心に誓うと、彼女はぴょんぴょんと土手へと降りていく。
まさかこんなクソ寒いなか青姦か? 顔をしかめる俺とは真逆に、ミコは笑顔で頷く。
「うん、ここがいっかな!」
正気か?
あからさまに嫌がっているのが顔に出たのか、ミコが俺の表情を見てニタリと笑う。
「あれあれぇ〜、怖気づいたんですかぁ〜?」
「ハッ、どの口が」
感情を天秤にかけて、このメスガキを理解らせたいという欲望が傾いた。
鼻で笑う俺の反応が嬉しいのか、ミコはニコニコ笑顔だ。
その笑顔がアヘ顔で許しを請うまでが今一番の楽しみだ。
「ではでは
#9829;」
そう言って彼女はごそごそと懐をまさぐる。
何かこちらに魔法でも掛けるつもりなのか。
警戒する俺に、彼女はハイっとこちらの手に冷たい何かを押し付け
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