パリピちゃんすぐオタクくんころす

『無理』『しんどい』『尊い』『#劇場版魔法少女サバト☆マギカ』

液晶に打ち込まれた文字に、自分の語彙力のなさに自己嫌悪する。
いやでもしょうがないのだ。何言ってもネタバレになるのだ。
でもサバマギを世のオタクどもに見て欲しいのだ。
内なるハム太郎と顔をくしくしして、ツイートのボタンをタップする。
タイムラインのトップに置かれた自分のつぶやきに満足し、ポケットに携帯をしまった。

「……ふぅ」

おかしいな。映画見てツイートしただけで一仕事終えた気分になっている。
一時間半とはいえあまりにも濃い内容だったからかもしれない。
いやだってダメじゃんあの展開(褒め言葉)
後天的に魔女になった主人公ちゃんとその使い魔になったファミリアちゃん。
アニメの一期でこそギスギスとした関係だったが、終盤では腐れ縁のようにお互いに心の奥底では仲間と認めあった非常にいい関係だった。
それが映画では一緒にパフェを食べあいっこしてたり、映画オリジナルの展開とはいえど一緒に合体魔法で強敵に息ぴったりで挑んだり、最後には一緒のベッドで寝てたり。
こんなん絶対好きじゃん。オタクはそういうのに弱いんだぞ。

「おっと」

昇天しかけた魂の尻尾を引っ掴んで自分に戻す。
危うく思い出死ぬところだった。

「お会計、1万2380円やで」

あら、意外と安いわ。
グッズ販売コーナーで目についたパンフレットとTシャツの半袖と長袖、双方共に柄が違うあたりもう公式様はしょうがないなあって感じになるけど、それに加えて主人公ちゃんとファミリアちゃんと二人が抱き合っているマグカップ計3つ。
販売員の刑部狸がニコニコと笑っている。
彼女にとって、僕がいいお客さまになれたらいいなとこっちも笑顔になる。
財布から1万円札と千円札を2枚、小銭入れから100円玉を4枚受け皿に入れる。

「これでお願いします」
「毎度おおきに♪ ほなこれ、お釣りの20円や」
「あざっす!」

丁寧に個包装してくれた店員さんにお礼を言って行列から抜ける。
あ、そういえば忘れていたと携帯をポケットから取り出す。
アニメ一期のブルーレイBOX注文しなきゃ。
あと今回の劇場版はいつまで見れたっけ、次の休みにもっかい見に来よう。
カレンダーからスケジュールを確認しながら、僕は映画館を後にした。





レイトショーで見たこともあり、とっぷり暮れた帰り道。
明日が休みであることも考慮したこともあり、映画の余韻に浸りながらのれんをくぐる。

「すいません。三色チーズ牛丼の特盛温玉付きをお願いします」
「あいよー、チー牛温玉付き一つー」

テンションが荒ぶってるせいか、ついハイファットハイカロリー飯を頼んでしまった。
しょうがないね。チーズとニンニクと肉と温玉はオタクの主食だから。

なんてしょうもないことを考えながら、自分の席に本日の戦利品を引掛ける。
外気温との差でくもる眼鏡をティッシュで磨いて店内を何気なく見回してみる。
時計の短い針が9の数字を回っているせいか、客数は昼に比べてまばらだ。
落ち着いてメシが食えるのはありがたい。
お冷を入れようと給水機に近づいた、その時だった。

ガラガラと丁度僕の隣にあった引き戸が勢いよく開かれる。
勢いあまってガタンとレールを跳ねる音に、僕の身体もびくりと跳ねた。

「おっちゃん、トン汁と牛丼おねがーい」
「あいよ。トン汁牛丼いっちょー」

夜中の牛丼屋チェーン店にはふさわしくないほどあどけない声に、思わず振り返る。
店内に躍り込んできた人物は、僕よりも頭一つ小さな少女だった。
この冬中に寒くないのか、だぼだぼのパーカーはへそが見えるほどオープンセサミ。
パーカーの下もチューブトップ一枚で、下は履いているのか見えそうで見えない。

惜しげもなく晒された小麦色の肢体に、顔に熱が集まるのに一拍遅れて気付いた。
目に毒だと目をそらし、慌ててお冷を飲み下す。
額から垂直に伸びたツノから、確かパイロゥという魔物娘だったはずだと思い出す。

「よっと」

そう呟いて彼女が座ったのは、知ってか知らずか僕の隣の席だった。
一番気まずいヤツである。
隣に座ったらコイツわざわざ私の隣に座りやがったとか思われるし、だからと言って席に引掛けている荷物を取って移動すると私の隣はそんなに嫌だったかと思われるヤツだ。

ひん、マジつらたん。
心の中にしわくちゃピカチュウを思い浮かべつつお冷をもう一杯入れる。

「これ、良かったら」

彼女の席にお冷を注いだコップを一つ置く。
さぁどういう反応が来る……? と戦々恐々な気持ちで隣に座る。
恐る恐るパイロゥの様子を伺うと、彼女はニッと白い歯を見せて快活に笑っていた。
やんちゃに生えた八重歯が、彼女のあどけなさを際立たせる。

「マジ卍! あざまる水産よいちょまる
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