「魔物が?」
「はい、それもつい先程の事です。」
ミルアーゼの街の門前で俺はムンドに騒ぎの原因を聞かされていた。
彼の説明をまとめるとこうだ。
街に着いたムンドは宿をとり部屋で俺を待っていた時にそれは起きた。
急に外が騒がしくなり窓から顔を出すと二人組みの魔物娘が街に入ってくるのが見えたという、ムンドは慌てて宿屋から飛び出し、ここまで避難してきた所で俺が来たというわけだ。
俺は内容を頭で整理しながら彼に詳しい事を聞いてみることにした。
「その魔物の種族はわかるか?」
「いえ、何分詳しくは無いので判りませんが…特徴なら分かります、一人は馬と人が合体した様な姿で、もう一人は緑色の鱗に…尻尾が生えていました。」
「…馬の姿と尻尾か。」
正直それだけでは何ともいえないが、大体のイメージは掴めた。
二人組みで別種族ということは、彼女達は捕食とは違う何らかの目的があってここに来たのだろう。だがいったい何のために…?
そう考えていると、一人の男が馬に乗って何処かへと走り去っていった。
俺は何事かと見ていたら、ムンドは説明するかのように言った。
「あれはどうやら、近隣の街へ応援を呼びに言ったようですね。」
「応援?」
「ええ、あの方角だと…ミノス城へ行ったのでしょう、きっと王国の兵士が駆けつけてくれますよ。」
「兵士だって?!」
思わず大きな声で聞き返してしまい、周りの視線が一斉に俺達の方へと向いた。
ムンドは訳も分からず、驚いた目で俺を見ている。
俺は彼らの反応を余所に焦っていた。
まずいな…。
いくら彼女達に力があるとはいえ、沢山の兵士に取り囲まれればひとたまりも無い、しかも彼女達は街に攻め込んでいるのだ。
下手をすれば魔王が生きてるかもしれないと勇者達に気づかれるかもしれない。
兵士達が来る前に二人を何とかしないと…。
「いやぁ、これでようやく一安心ですね。私も仕事が…ってアレスさん?何処へ行かれるんです?」
「街の中に入る。」
「え!?ちょっと、アレスさん!どうして?!」
俺はムンドの制止を振り切り門前へとやって来た。
中へ入ろうとすると門番と思われる男が俺を止めたが、「魔物を退治しに来た」というとすんなりと入れてくれた、…勿論そんな事をするつもりは毛頭無いが。
後ろで門が閉まると同時に、俺は街の中心へと向かって走る。
すぐに見つかってくれると良いんだが…。
しばらくすると大きく開いた場所に出た。
噴水や腰掛などがある辺り、ここは広場なのだろう。
その広場の中心に目的の二人はいた。
彼女達の周りには戦ったと思われる剣士達が何人か倒れており、残す所あと二人といった状況だった。
「くっ、くそ!!」
「駄目だ、強すぎる。」
残った二人の剣士は息を切らしながらも剣を構えている。
対して彼女達の方は目立った外傷も無く、退屈といった様子で二人を見ていた。
「ふん、この程度か。」
彼女達の一人、リザードマンが二人の前に仁王立ちする。
もう一人の足が馬の姿をしたケンタウロスは後ろで二人を無言で威圧していた。
二人の剣士は彼女達の気迫に押され、じりじりと後ずさりする。
俺は物陰に隠れながら彼女達二人を観察した…やはり俺の想像通りの相手だった。
リザードマン、洞窟などに住んでいるトカゲの姿をした魔物娘だ。
彼女達のほとんどは戦士である事が多い、よって多様な武器を扱える。
普段は無闇に人を襲わないはずだが今回は例外のようだ。
そしてケンタウロス、草原などに生息する人間の上半身と馬の下半身を持つ魔物娘だ。
強靭な足腰で草原を駆け回り、彼女達も同様に多様な武器を使える戦士である、そして何よりも誇りを重んじている。
二人の共通点は戦士であることと、人間を無闇に襲わないことだがどうして街に攻め込んでいるんだ?
訳も分からないまま俺は二人の様子を伺い続けた。
「さて、お前たちはどうするのだ?かかって来ぬのなら、早々に立ち去るがいい!」
二人に向かってリザードマンは声を張り上げた。
倒れてる者達を見れば一目瞭然だ、たった二人で敵うはずも無い。
だが彼らは恐怖のあまり愚行を犯してしまう。
「く、くそおぉぉぉ!!」
二人は怒声を上げ、共同して彼女達へと切り掛かった。
後ろのケンタウロスが弓を引こうとするがリザードマンが手で制し、地面に突き刺してあった剣を引き抜いた。
「よろしい、剣士として散るがいい!!」
彼女はそう言うと剣を大きく横に薙ぎ払い、二人の剣士を一掃した。
吹き飛ばされた二人の剣士は呻き声を上げ地面にひれ伏してしまう。
一瞬肝を冷やしたが、彼女達も命までは取らない様で二人は気絶しているだけだった。
倒れてる剣士達も怪我をしているものの命に別状は無さそうだ。
「予定より早く終わったな。」
後ろにいたケンタ
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