第十九話 いろんな愛の形




一体…どうなってる?

目の前に現れた二人目のローラ。
そのローラは俺が連れてきたローラと瓜二つの”人間”の女性だった。

ムンドはそんな事情も知らず話を続けた。

「どういう訳かは知りませんが…ローラは生きていてくれたんです、これほど嬉しいことは今までにありませんよアレスさん!!」
「だ、だがムンド―」
「私がここでもう寝ようかっていう時に扉のノックする音が聞こえたんですよ、そして開けてみたら彼女が立っていたんです、それはもう嬉しくて嬉しくて…。」

ムンドは興奮した状態でも事細かに丁寧に話してくれた。
普通なら俺だって疑いはしないしこんなことも言いたくない。
…普通ならな。

「ムンド、落ち着いて聞いてくれ…お前は今興奮してて状況が分からなくなっているだけだ。」
「何を言っているんですか…私はいたって冷静ですよ、そりゃ長年探していた愛する妻を見つければ少しは興奮もしますけど、そんなことよりアレスさん!!」

ムンドは急に俺の手を引いて部屋の中へと迎え入れてくれた。

「長旅で疲れたでしょう?ローラの作る料理は最高なんですよ、なんでしたら今日は泊まっていって下さい!!アレスさんの旅の話でも―」

「いい加減にしろムンドっ!!!!」

俺はそのムンドの手を振り払って怒鳴りつけた。

「お前は気づいているはずだ、ローラの死ぬところを見たお前なら分かっているはずだろ!!」

俺が怒鳴りつけたことに対してムンドは驚きとも焦りとも見える表情を見せた。

「やめて下さい、あれは私の見間違いだったのです…ローラは死んでなどいなかった、現に今ここにこうしているじゃないですか!!」
「一度死んだ人間は”人間として”蘇ったりなどしない、そこにいるローラは偽物だ。」

俺がローラを指差して叫ぶと当のローラはひどく怯えたようにこちらを見ていた。
ムンドはそのローラを庇うように前へと出て俺を睨んだ。

「アレスさん、いくらあなたでも言って良いことと悪いことがありますよ!!」
「俺はお前の為を思って言っているんだ、大事な指輪を託してくれた以上…俺は約束は守る。」
「じゃあ証拠を見せてください、ここにいるローラが本物じゃないという証拠を!!」
「良いだろう…ローラ、出てきてやれ!!」
「…?!」

俺が叫んだあと、玄関の方からゆっくりと歩いてくる足音が聞こえた。
そして部屋へと入ってきた姿を見てムンドは仰天する。

「ひ、ひぃ?!!ま、魔物!!?」
「ムンド落ち着けっ、よく姿を見てみろ!!」
「え…?!」

一瞬慌てたムンドだったが恐る恐る彼女の顔を見た。
そして表情からでも分かるほどの驚きと感嘆が見て取れた。

「ろ、ローラ…ローラなのかい?」
「あなた…。」

ローラは俺に言われた通りに守って、こんな状況になっても笑って会ってくれた。

「そ、そんな…じゃあローラが…二人…?!」

思わず混乱し、腰を抜かしたムンドは信じられないという目で二人を見比べた。
まったく同じではないが同じ二人が目の前にいる。
ありえない状況にムンドは頭を抱えた。

「ちょ、ちょっと待ってください…頭が…おかしくなりそうです。」

自分を落ち着かせるためにムンドは状況を把握しようと必死だった。
そして落ち着いた後に一つの疑問が彼には残った。

「どっちが…本物なんだ?」
「あなた…。」
「…。」

魔物か、人間か…その二つの選択をムンドは今選ぶことになる。
俺はそんな混乱したムンドを立ち上がらせた。

「いいかムンド、ここからはお前が決めるんだ。」
「わ、私がですか…?」
「俺は確かに本物を連れてきた、だから向こうが偽物だとも言ったが最後に決めるのはお前だ、これはお前の人生の選択だからな。」
「し、しかし…私にはそんなこと…。」
「お前にしかできないんだ、長年連れ添った妻なんだろ…だったら今見つけてやれ。」
「…。」
「男だろ、しっかりしろ!!」
「…!!」

俺は彼を勇気づけるように背中にバンッっと張り手をかました。

その一打もあってかムンドは決心したかのように顔を上げ、二人と対峙した。


「ローラ…。」
「「あなた…。」」

二人が同時にムンドを見つめ、ムンドは二人を見つめた。

そしてムンドはつぶやくように口を開いた。


「一つだけ聞かせて欲しいんだ…。」
「…。」
「君は、こんな私を…恨んでいるかい?」
「恨む…?」

こくりと頷いたあと、ムンドは話を続けた。

「私は君がいなくなってから懸命に店を開きながら探し続けた…何日も何日も。」
「…。」
「一時諦めようとした、いやむしろアレスさんに託した時には諦めてしまっていた…そして無様にもアレスさんに託してここで待ち続けた私を…君は恨むかい?」

「…。」

ムンドの話を聞いて二人とも押し黙っていた。
だが最
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