宴も終わり…皆が眠気眼を擦りながら後片付けやら復興作業をする中、アレスとハンスは旅支度を整えていた。
町の人が用意してくれた朝食をとり、水やら食料を補充した二人は最後に町の人たちに別れの挨拶をして回った。
「すまないな、世話になったよ。」
「ごめんなさい、朝食まで頂いちゃって…。」
「もっとゆっくりしていきゃいいのに…あんた達はこの町の英雄なんだからもっと威張っていいんだぜ?」
「俺たちも理由あって旅しているからな、好意は有難いが遠慮しとくよ。」
「そうかい?そりゃ残念だな…。」
「アレスお兄ちゃん、ハンスお兄ちゃん!!」
二人が町の人達と話していると人ごみからトーマがこちらへと走ってきた。
「二人とも…もう行っちゃうの?」
「あぁ、俺たちにはしなくちゃならないことがあるからな。」
「でも…もしまたあいつらみたいなのが襲ってきたら…。」
「その時は―」
アレスはトーマの頭に手を置きながら話した。
「お前が先頭を切ってこの町を守ればいい。」
「え?!!」
「?!」
アレスの言葉にトーマ自身もそうだが周りの町の人々も若干だが驚いていた。
目を白黒させるトーマにアレスはゆっくりと話し始めた。
「お前はもうすでに戦えるほどの力を持っているんだ、俺たちがいなくてもやっていけるさ。」
「で、でも…僕は…アレス兄ちゃんやハンス兄ちゃんみたいに強くないし…。」
「力の強さじゃない、重要なのは『戦う意志』だ。」
「戦う…意思?」
「そうだ、お前はさっき俺に『僕たちも一緒に戦う』って言ったじゃないか…それこそが戦う意志だ、戦う意志があるからこそ…勝つことができる。」
「…。」
「それをお前が皆に教えてやるんだ、お前にはそれが出来る。」
「僕に…できるかな?」
「大丈夫、トーマ君ならきっと出来るよ?」
アレスとハンスが諭すのを見て、町の人々はそれに応えるようにトーマに言いよった。
「はっはっは、いつのまにかあのトーマがこんなに逞しくなったなんてな!」
「これから頼むぜ、よっ!トーマ隊長!!」
「大丈夫、私達みんなで守っていきましょう!!」
「…うん!!」
トーマは元気よく、決意を込めた返事をし二人に向かって微笑んだ。
………。
「そうだ、あんたら『レイン』をどっかで見かけなかったかい?」
「『レイン』?」
ひと段落終わった頃に一人の男がアレス達に聞いてきた。
聞きなれない名前にアレスは首を傾げていると男が先に言った。
「ほら、あんたが昨日イグニスを助け出そうとして一緒にいたサキュバスだよ。」
「あぁ…(そういや名前を聞いてなかったな)いや見てないが?」
「そうか…ついさっき帰ってくると部屋にいなかったらしくてな、その旦那と一緒に探してるんだが…何処に行っちまったのかね?」
「俺たちも手伝おうか?」
「いやいやいや、流石にあんたたちには頼めねえよ…それに人数もいるしすぐに見つかるさ、気にしないどくれ。」
「そうか、…それじゃ元気でな。」
「おぅ、いつでも遊びに来てくれや!」
アレス達の別れの挨拶にトーマや皆が名残惜しんだが皆快く旅立ちを祝ってくれた。
さっきの人を最後にアレス達は荷物をまとめ、町を出ようと入口へと来た時だった。
「?」
「あれ、どうしたんでしょう?」
二人が見たのは門の内側付近で荷車を引いている人間の男と魔物達の姿だった。
怒鳴り声やらがここからでも聞こえ、何かを口論しているようだった。
近づくにつれてその内容が二人の耳に入っていった。
「だから、それは私達の仕事だって言ってるでしょ!!!」
「うるせぇっ!!そこをどきやがれ!!」
どうやら男が門から出ていこうとするのを魔物達が必死に食い止めているようだった。
無視するわけにもいかず、二人はその騒ぎの中へと入っていく。
「おい、どうしたんだ?」
「ちょっと聞いてよ、この人が私たちの仕事を奪おうとするのよ!!」
「仕事?」
よく見ると男が押している荷車には棺桶のような形をした箱が二つほど積まれていた。
そしてその止めている魔物達がグールやゾンビといったアンデット類からしてアレスはその仕事の内容を容易に想像することができた。
「なるほど…葬儀屋か。」
「そうさ、ここで死んだ仏さん二人を故郷に返してやろうとしたら急にこいつらが出てきて止めやがるんだよ。」
「急に出てきたのはそっちでしょ?!!私たちが依頼を受けてここに来たのに何勝手な事してくれてんのよ!!」
「そんなことは知らねえよ、俺も同じように仕事の依頼が来たんだからよ…この2つの遺体を故郷の土に埋めてやってくれって。」
「そんなの聞いてないわよ、そういうのはこっちがするから早くその棺桶を渡しなさい!!」
「そいつは出来ねえな、こっちもこれで飯食ってんだぜ?…仕事譲るほど裕福はしてねえ
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