※今回は長編かつグロテスクな表現が含まれております。
苦手な方、お時間が無い方はご注意ください。
「お兄ちゃん達、こっちだよ!!」
少年に案内されながら俺達は岩山を登っていく。
流石に堂々と道を通るわけには行かないからといって提案されたはいいものの…これはこれできついな。
「少年…ちょっとこれは無理がないか?」
「こっちからじゃないと見つかるよ…あと僕の名前はトーマだよ。」
「トーマ君…これは何処に向かっているんだい?」
「鉱山だよ、ここでは希少な鉄鉱石や魔石が採れるんだ。」
「魔石?…魔界銀とか?」
「昔、このあたりは魔界だったらしくて普通にはないものがよく採れるんだよ、それでこの町も大人たちも皆元気に暮らしてた…あいつらが来るまでは。」
「あいつら…?」
「ほら、ここから覗いてみて?」
ようやく頂上が見えてきたところで少年はそれより向こう側を指した。
恐らく向こうは鉱山の入口なんだろう、さっきから近づくに連れて金属音や人の話し声が聞こえていた。
俺とハンスは言われたとおり頂上へ向かい、向こうをのぞき込んでみた。
「…。」
「…これって…。」
そこはクレーターのように大きな穴が空いており、さっきから見えなかった魔物…彼女達が必死に鉱石を採掘していた。
時折、働いている男の姿も見えるがとても気持ちよく働いているようには見えず、痩せこけた表情で道具を扱っていた。
それにどう考えても採掘には向いていない魔物ばかりが働いている、かわいそうに…皆疲れた目をして身体もボロボロだ…。
「お姉ちゃん達があいつらに脅されて無理やり働かされてるんだ、男の人は皆お姉ちゃん達の旦那さんだよ…。」
「酷いことを…どう考えても彼女達に炭鉱なんて無理ですよ。」
「だから無理やりなんだよ…ほら、あそこ見て!」
少年が指差した方には彼女達が働いているのをまるで見張るかのように鞭やらこん棒を持った男達が立っていた。
どこか門にいたあの二人に様子が似てなくもない、おそらく同じ仲間だろう。
「あいつら、お姉ちゃん達をずっと見張ってて何かあるとすぐ殴るんだ、それも旦那さんの方を。」
「…なんだと?」
「お姉ちゃん達の中には強いお姉ちゃんもいるけど反抗させないためにも旦那さんの方を虐めて言うことを聞かせてるんだ、それでずっと聞かなかったら…―」
少年は急に目を伏せながら震える手である場所を差した。
見たくない…そんな表情が見て取れる。
俺たちが指された方向を見たとき、その意味がわかった。
「ひどい…。」
ハンスの口からそんな言葉が漏れた、逆に俺は言葉にするのを抑えその光景を目に焼き付けた。
そこにあったのは磔にされたまま苦しむ彼女達の姿だった。
手の平を杭で打たれ、十字に磔にされている姿はどこかの聖書にでもありそうな姿だった。
顔は痩せこけ…皮膚は干からびたように骨が浮き出ている。
これが…彼女達が今受けている現状だ。
「皆…あんなふうにされるんだ、あいつらが来てから…全部おかしくなっちゃったんだ…。」
握り拳を作って悔し涙を流す少年。
おそらくこの少年はこんな惨劇をここからずっと見てきたんだろう…。
ハンスがその肩に手を置こうとした時、下の方で動きがあった。
それに気が付いた少年がまた指を指した。
「お、お兄ちゃん、あれ!!」
そこには咳き込みながら座り込むサキュバスの姿があった。
―――――――――。
「ゴホッ…ゴホッ…。」
サキュバスは身体の疲労に耐え切れず、膝をついて咳こんでしまった。
近くで働いていたサキュバスの夫が彼女の方へと寄り添う。
「おい大丈夫か、しっかりするんだ。」
「だ、大丈夫…大丈…ゴホッ!!」
「おい、お前ら何してんだ?」
騒ぎに気づいて上で見ていた男が下へと降りてきた。
夫がサキュバスを庇うように前へと立ち塞がる。
「妻はもう限界だ…僕が二人分働くから妻を休ませてくれ。」
「駄目だ、魔物は休憩なんかしなくても大丈夫だろ…さっさと持ち場へ戻れ。」
「魔物だって生きてるんだ、こんなことを続けてたら死んでしまう!!」
「口答えすんじゃねぇよ。」
ドゴッ!!
男は彼女の夫の腹を蹴り上げた。
「ぐっ…?!」
「誰にそんな口聞いてんだ、お?」
倒れこむ夫に男は容赦なく蹴りをいれていく。
その光景を誰もが見ていたが皆、目を伏せて見ないようにするしかなかった。
苦しむ夫の姿に耐え切れなくなったサキュバスが男の足にしがみついた。
「やめてくださいっ、お願いだから乱暴しないで!!」
「あん?元はといえばてめぇがヘタるからだろ?!」
「きゃあ?!」
夫を守ろうと男にすがりついたサキュバスだったが無力にも簡単に払いのけられてしまった。
それを見て忌々しそうに男は言う。
「こう言う奴
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