第十六話 遺跡の番人達 中編


コツ…コツ…コツ。

薄暗い遺跡の通路を僕は松明の明かりを頼りに進んでいく。
遺跡は思っていたより広く、この通路の先が見えないほどだ…暗いという意味もあるかもしれないけど。

「アレスさん、もう中に入ったのかな?」

アレスさんに言われて裏に回った僕は運良く誰に見つかるでもなく裏口を見つけた。
ここに入ってからも誰とも遭わないあたり、ほんとにここに魔物がいるのだろうかと不安になるほどだった。
これだけ順調なのはちょっと不気味だ、罠の可能性も考えておこう。
通路を壁をつたって慎重に歩いていた時だった。

「〜。」
「…ん?」

通路の向こうの方から誰かの声がした。
何かを必死に叫んでいるようだが、遠すぎて聞こえない。
危険と知りつつも、僕はゆっくりと進んでいった。

「―て〜っ。」

近づくにつれ声は女の人のような…か弱い声だった。
若干だが悲痛に聞こえるのは気のせいだろうか?
進むにつれ、その女性が何を言っているのかはっきり聞こえた。

「誰かたちけて〜っ。」
「たち…いや、『助けて』か?」

なにやらふんわりとした声で助けを呼んでいるようだ。
観光者…なわけないか、盗掘者…が間抜けに助けなんて呼ばないだろうし。
だとしたら罠か…無視することもできるけど他に進む道がないし…。

「うーん…。」
「たちけて〜っ。」

さっきから聞こえてるこの女性の声だけど…作っているという雰囲気は出ていない。
もし、本当に大変だとすると助けないとまずいな。

「…よし、悩むぐらいなら進んでしまおう。」

僕は意を決して先に進み、その声の主が現れた。
薄暗い通路から松明で照らし出された光景は僕の想像をはるかに超えていた。

「…え。」
「誰かたちけて〜っ。」

…そこには泣き顔で天井に吊るされているマミーの姿があった。

「一体…どうしたらこんなことに…?」

良く見てみるとマミーが常に身体に巻きつけている包帯が天井の(不自然に付いてある)棒に引っかかっており、まるで釣り上げられた魚のようにマミーは吊るされていた。
マミーはじたばたと藻掻くも包帯が身体に食い込むだけでまったく動けなかった。

「う〜…あっ?!」
「あ…。」

僕が困惑しながら見ていると吊るされたマミーと目が合ってしまった。
マミーは僕に気づくと一遍の汚れのない笑顔を見せてくれた。

「男の人だっ、こんにちは〜♪」
「こ、こんにちは…。」

吊るされているにも関わらず挨拶されてしまった…、マミーは単純な性格と聞くがこれは多分前の人間だった時の人格なんだろう…やけにふんわりした魔物だ。
恐る恐る僕は彼女に話しかけてみた。

「あの〜、どうしたんですか?」
「あ、そうそう…たちけて欲しいの。」
「それは見たらわかるけど…どうしてこんなことに?」
「うん…えっとね。」

マミーは吊るされたまま思い出すように説明を始めた。

「私が…あ、私『マーシャ』っていうの、宜しくね?…私がここを歩いていてなんか包帯が足らなくなったと思って換えの包帯を出そうとしたの、そしたら出してる最中に肘が壁のスイッチに当たって罠が作動したの、よけられたのはいいけど包帯が絡まって…。」
「それで、こうなったと。」
「うん、だから早くたちけて…このままじゃトイレにもいけない。」
「そうなんだ…あ、改めて僕はハンスと言います。」
「ハンスだね?…宜しく♪」

僕が侵入者というのにも関わらずマーシャは友達感覚で話してきた。
おまけに自分たちが仕掛けた罠に引っかかるなんて、マーシャはここの見張りだよな…?
でもどうしようか?
アレスさんには拘束しておけと言われたし、ほっといたほうがいいんじゃ…。
でもこのままは流石にかわいそうだしな…でも助けて襲われたら嫌だし…。

「うーん…。」
「ねえ、はやくはやく。」


しばらく悩んだあと、僕は結論を出した。

「よしマーシャ、…君を助けよう。」
「ほんとに?やった〜♪」
「ただし、条件がある…助けた後、僕を襲わないと約束して欲しい。」
「え〜?襲っちゃダメなの?せっかくの男の人なのに…。」
「じゃあ助けられません、さようなら。」
「ま、まってよー!!分かったよ、襲わないからたちけて〜!!」
「うん、交渉成立♪」

僕は了承を得ると早速マーシャを助ける作業に取り掛かった。
はずだったが…。

「…い?!」
「…?」

マーシャの身体を見たとき僕は飛び上がりそうになった。
…何故なら彼女の身体の包帯は極端に上と下の局部しか隠れておらず褐色の肌が諸に露出され見えそうで見えない状態を維持していた。
包帯が少なくなっていたとはいえ…これは少なすぎじゃないか?!

「…どうしたの?」
「い、いあやいやいあいやっ、なんでもなんでもっないよ、あはははは…。」
「…???」

マーシャは首をかし
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