幼き王女の気ままな異世界旅行


真夜中のテントの中にて。

といっても内部にはスイッチを押すだけで熱を発するプレートやら、電灯、冷蔵庫が配備、大人が2人は寝れるベッドが6台も備わっている高性能テント。
更にはトイレとシャワールーム、クローゼットも6人分、キッチンやダイニング付きといった高級ホテル顔負けの性能となっている。

そんな豪華な空間の中で男女四人、その中の魔物二人…ワーシープの『サマリ』、リリムの『アメリ』はベッドで抱きしめるようにして寝ていた。

「…スー。」
「フフ…寝ちゃったか。」

楽しそうに今日あったことを話しているうちにどうやら疲れて眠ってしまったようだ。
サマリはアメリの髪を撫でながら微笑ましく彼女の寝息を聞いていた。
アメリはサマリのモコモコの柔らかい毛皮を抱きしめ、時折気持ちよさそうな声を上げる。

「やっぱり可愛いな〜、アメリちゃん。…私も眠くなってきたしそろそろ寝ようかな?」

朝ごはんも作らなくてはならないので実際あまり夜ふかしは出来ない。
彼女曰くずっとアメリの寝顔を見ていたいという願望はあるが彼女も睡魔には勝てなかったようだ。

次第に目が閉じ始め、眠りかけようとした時だった。

「う〜ん…。」
「あ、起こしちゃったかな?」

一瞬アメリが起きたような声を上げたので起こしてしまったかと顔を覗き込んだが、アメリは目を瞑ったまま呟いた。

「ライム…ちゃん、また、遊ぼう…?」
「…。」

サマリにはその名前は聞き覚えがあった。
それは以前、旅をしてる途中に偶然に遭ったスライムの子供だ。
アレスという父親と共に別世界から来た親子、短い時間だったがアメリはそのライムととても仲良しになっていた。

「また…会いたいよぅ…ライムちゃん、アレスお兄ちゃん…。」
「アメリちゃん…。」

(ライムちゃんとお別れした後、表には出してなかったけどやっぱり寂しかったんだ…私やユウロ、ツバキがいるけど…同い年か年下の友達ってアメリちゃんからあまり聞いたことなかったし…。)

急に愛おしくなり、サマリはそっとアメリを抱きしめた。
彼女のこの願いをサマリは叶わせることが出来ないと知っていたからだ。
サマリはただ…今の言葉を胸にしまったまま眠りについた。

…彼女が睡魔に意識を取られた後、二人の身体がぽうっ…と白く光り出した。



――――魔王城、近くの草原にて―――――。

視点アレス


「でやぁぁぁ!!!」

カンッ!!

木製の剣が乾いた音を周囲に響かせる。
リザは交差した剣を切り返し、更に二撃…三撃と俺に攻め立てる。

「はっ、たぁっ…でやぁ!!!」
「どうした、動きが単調になってきているぞ?」

リザを挑発しながらも一つ一つ剣を交わしていく。
とは言うものの彼女の剣は相変わらず正確に狙ってくる、隙を見せれば確実に打ち取られるだろう。
だがそこが欠点でもある。

「ぐっ…。」
「隙ありっ!!!」

俺がよろめいたのを察し、瞬時に剣を持ち直してリザは鋭く強力な突きを出した。
身体めがけて直進する剣はそのまま俺の身体へと突き刺さる…筈だった。

カンッ!!

「なっ?!」

俺はリザの突きをいとも簡単に払い除け、持っていた剣は空高く上空へ舞い上がった。
剣が落ちてきて虚しく乾いた音を立てる頃には、俺はリザの首元に剣を向けていた。

「あからさますぎる隙は罠だと思え、そうでなくてもお前は馬鹿正直なんだ…剣を交わしてる際にも相手がどんな性格かを見極めれるようにしておけよ。」
「くっ…まだ勝てないか…。」

悔しそうに呟いたあとリザが膝をつき、拳を震わせる。
それを見ていたスライムのスラミーとサキュバスのサラは目を丸くしたまま二人の戦いを見ていた。

「え〜、そんなことないよ〜、リザちゃんもすごいよ〜?」
「いや、私はまだまだだよスラミー…もっと強くならなくては。」
「まぁ、一番はアレスが強すぎるんだと思うけどね?」
「ならお前も見ているだけではなくやってみたらどうだ、サラ?」
「遠慮しとくわ、私は魔法主体だから動くのは苦手なのよ。」
「また太っても知らないぞ?」
「誰かさんよりも胸は大きいからいいのよ。」
「ほぅ…、よくも言ったなっ!」
「ちょ、ちょっと、それ本物じゃない?!!やめなさいよ!!」

ブンブンと剣を振り回すリザと飛んで逃げるサラ。
この二人も相変わらずだな…。

「面白いね〜ライム?…あれ?」

スラミーが可笑しそうにライムに話しかけたがそこにライムはいなかった。
すると突然…。

「てやぁ〜♪」
「うおわっ?!」

後ろからライムがのし掛ってきて思わず地面に倒れてしまった。
俺の背中の上でライムが嬉しそうに飛び跳ねる。

「やた〜、お父さんを倒した〜♪」
「ほんと〜、ライムすごいね〜?」
「えへ〜♪」
「ははは、こいつはやられたな…
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