「…。」
「…。」
俺は言葉が出なかった。
思考が止まり、何を言えば良いのかも分からないほどに混乱していた。
恐らく今この時点では俺より魔王のほうが混乱している。
もう一度言う、俺は言葉が出なかった。
……代わりに手が出てしまった。
「どうして私を殴る?凄く痛かったぞ?」
「当たり前だ!いくらなんでも唐突過ぎる、心臓が止まるかと思ったぞ!」
「単刀直入にいえと言ったのは君だろ…。」
魔王は頬を摩りながら文句を言う。
俺はその間落ち着きを取り戻しながらさっきの言葉を思い出していた。
…この魔王は俺にとんでもないことを言った。
「彼女達の夫になってくれ」
彼女達とは魔物娘の事を指し、
この世界で知らない奴はいないというほどありふれた存在であり、
数え切れないほどの種族がいる。
魔物娘の種族や特徴については割愛させて貰うが簡単に言えば、
人間より何倍もの力を持った女の子達だ。
彼女達の殆どは人間を嫌い、遭遇すれば襲い掛かってくるのだが、
種族によっては、人間と共存する者や争いを好まない者達もいる。
…共通する特徴は“彼女達は並外れて性欲が強い”という所だ。
「魔王、まさか俺に彼女達の慰み者になれと言ってるのか?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃない!彼女達は子孫を残すために
交尾をするのだ、決して淫らな事でするのではない!」
「本当なんだろうな?」
「ああ、…多分。」
「おい。」
魔王は歯切れの悪い返事をした。…ホントに大丈夫なのか?
彼女達が人間を襲う殆どの理由は交尾をするためだ。
人間の男性を見つければ即座に拘束、そして交尾というケースが多い。
彼女達に拘束されれば抜け出すのは容易ではなく、大概はそのまま犯される。
そんな彼女達の夫になれと言うのだ、最初で干からびてしまう。
「まて、そもそも彼女達を作ったのはお前なのだろう?
なんで分からないんだ?」
「魔物娘、つまり魔物が♀になったのは先々代の力なのだ、私ではないよ。」
「先代からは受け継がれなかったのか?」
「先代はあまり長くなく、知識を受け継ぐ前に亡くなってしまった。
だが先代の力で彼女達は人間の男性から受精できるようになったのだ。」
「お前がしたのは?」
「彼女達から生まれる子供はすべて♀になるようにしたのだ。」
「…それで大繁殖出来たのか。」
今や魔物娘は人類を大きく上回るほどの数になっている。
ずっと疑問視されていたがこういうことだったか。
「…先代がすぐ亡くなったと言っていたが、どれくらいの期間だ?」
「恐らく、一月程度だが…何故そんなことを?」
「いや、別に。」
すこし引っかかることがあったが今は気にしないでおこう。
話が逸れてしまったので今一度、考えてみる。
魔物娘達の夫になる…、この事だ。
「…やはり魔物というのが、難しいか?」
魔王は俺の考えていることを見透かしたのかこんな事を言った。
俺は聞こえないフリをしながら考える。
…別に俺は彼女達の事は嫌いというわけではないし、
ましてや恨んでもいない。
彼女達の中には人間に近いのもいるし、友好的な者もいるし、
実際人間と一緒に住んでいる者もいるにはいる。
だが、彼女達全員を相手にするのはやはり無茶な話だ。
ただでさえ人間嫌いな彼女達の夫になど普通なら無理だ。
「俺は別に魔物が嫌いなわけじゃないが、全員の夫になるなんて無理だろ?
それに彼女達が納得するとは思えないんだが…。」
「…いや、これは彼女達との意思とは関係なく実行する。」
「なんだって?」
どういうことだ?それに「実行」?
俺の疑問をよそに魔王が真剣な様子で話し続ける。
「今、彼女達は深刻な問題を抱えているのだ。」
「深刻な問題?なんなんだ?」
「彼女達の数が、急速に減少しているのだ。」
「な、なんだって?」
そんな馬鹿な…。
さっきも説明していたが魔物娘は人類を大きく上回るほどの数がいる。
それは魔王の力で大繁殖できるようにしているのだ。
少なくとも減少はあり得ない。
「確かなのか?」
「彼女達の数が二年前から減少し、現在では元の半分にまでなっているのだ。」
「そんな…。」
それでも確かに人間よりはまだ多いが、半分ともなると大事だ。
しかもたった二年でだ、二年前になにが…。
「…!まさか?!」
「そうだ、二年前私が勇者に倒されたその後に減少したのだ、原因はこれしかない。」
嘘…だろ…。
俺は全身から血の気が引いた気がした。
「魔王を倒したことで人間は勢いづき力をつけ、魔物を狩りだしたのだろう。逆に彼女達は人間を恐れるように…。ど、どうした?」
俺の顔が真っ青になっている事に気づいた魔王は、話を止め声をかける。
あの時、俺が勇者を止めていれば、殺していれば、大勢死ぬことも無かった。
俺がも
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