…。
今日は何がいいか…兎でも捕まえればいいが。
雪の中を懸命に探していくが一向に見つからない。
山菜や魚はなんとかとれたがここ最近肉を食っていないし。
たまにはユキノのために豪勢な料理にしたいよな…。
「ユキノのご飯は美味しいからな…。」
あれは本当に良く出来た妻だ。
俺なんかとよく釣り合えたな、確か…俺が言い寄ったんだっけ?
…まあいいや。
それにしてもご飯は美味いし綺麗だし可愛いし。
妻としては全然申し分ない、むしろ有り難すぎるぐらいだ。
何か申し訳ない気がする…。
『あんたが謝ることじゃないよ?』
…?
「今…誰か?」
…気のせいかな?
すごく懐かしい声がしたような…。
周りを見回しても誰もいない。
「空耳かな…?」
不審に思っていると目の前を一匹の白い兎が通り過ぎた。
「あ、待てっ!!!」
俺は夢中で雪の中を追いかけた…。
…。
「いやぁ…美味しかった。」
今日とってきた食料を一通り食べたあと、満腹といった感じに息をつく。
うさぎなんて久しぶりだったからな…。
後片付けをするユキノが嬉しそうに言った。
「今日は大量でしたね…私も腕が鳴りました。」
「そうだな、まぁ何といってもユキノの料理はいつでも美味しいからな。」
「まぁ…あなたったら…♪」
ユキノは照れたように微笑んだ。
この笑顔を見るたびに俺は幸せだなと思う。
「そういえばさ…。」
何気なくユキノに聞いてみる。
「ユキノは、俺のどこを好きになった?」
俺の唐突な質問にユキノは少し面食らう。
「あら、どうしてそのようなことを…?」
「いや…俺なんかのどこを好きになったんだろう…って。」
「…そんなに卑下しなくてもあなたは素敵ですよ?」
ユキノは優しい笑みで言ってくれた。
素敵…か。
『貴方に好意を寄せるのは…貴方が素敵な人だから。』
…?
「どうしたのですか?」
「いや…。」
なにか引っかかるものがあったが多分気のせいだろう…。
気にしないで話を続ける。
「じゃあ…外見は?」
「外見ですか…そうですね。」
ユキノは少し俺を見ながら考える素振りをする。
そして目があった。
「挙げるとすれば―」
『貴方の瞳…素敵だったから。』
「目か?」
俺が先に答えるとユキノが驚いていた。
「どうして…解ったのですか?」
「いや…。」
俺にも分からない。
ただ…前にもそんなことを誰かに言われたような気がする。
最近…なんだかおかしいな。
ユキノ以外にあんまり人に会ったことないはずなんだけど。
「なんとなく…なんとなくだ、な?」
「ふふふ、でも…貴方の瞳、ほんとに素敵ですよ?」
「…そうか?」
「ええ、とても好きです。」
『あたし…やっぱりアレスが好き!』
「…!」
頭に何か語りかけられたかと思うと急に頭に刺すような痛みが走った。
「貴方…大丈夫ですか?」
ユキノが心配そうに俺を介抱してくれる。
なんだろう…疲れてるのかな…?
「きっと…今日はお疲れなのでしょう、今夜はもう寝ましょう…?」
「あ、ああ…そうしよう。」
言われるがままに俺は布団の上へと寝転がった。
先程の痛みが消え、急に眠気が押し寄せてきた。
「ユキノ…。」
「はい…。」
「傍にいてくれるよな?」
「…勿論です、私は貴方の妻なのですから。」
そして、彼女は俺に口づけをしてくれた。
「どうした…急に?」
「いえ、今日はお疲れですし…これで我慢しておきます♪」
「相変わらず元気だな…。」
まるで付き合い立ての恋人みたいだな…。
『これで貴方は私の恋人だよ?貴方が起きたら私の好きな歌いっぱい聞いてね?』
まただ…。
この声はいったい誰なんだろう?
睡魔に襲われた俺にはそれを特定することができなかった…。
深く…俺は眠りについた。
「…?」
俺は夢を見た…。
その中での俺は凄く幸せそうだった。
今まで出会い、そして愛してきた仲間に囲まれて…。
「…なんだ?」
いや、仲間の他にもいる…。
あれは…誰だろう。
その場面によって泣いていたり、怒っていたり、戦ったり…。
でも…最後には皆俺に笑顔を見せてくれた。
あれは…。
「…!!!」
俺は無意識に布団を飛び起きていた。
外は寒いというのに汗をびっしょりとかいている。
「夢…か?」
どこか懐かしい…夢だった。
でも…まるで自分が別人のような…。
「なんなんだ…一体…?」
…。
「それはきっと、前世の夢じゃないですか?」
「前世?」
ご飯を食べながらユキノに夢の内容を話すとそう言われた。
「ええ、だって…今のあなたとはまったく違う場面なのでしょう?」
「まぁ…そうだが。」
「だったら、深く考えても仕方がないですよ…、今でも充分幸せなのですから。」
「…
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