「ん、…んん。」
少し暖かい日差しが当たり、目を覚める。
辺りからは小鳥のさえずりが聞こえ、動物たちが楽しそうに鳴くような素晴らしい朝。
「ふわぁ…。」
…どうやらいつの間にか寝てしまっていたようです。
少し背伸びして、大きな欠伸を一つ、それから寝る前の出来事を思い出す。
確か旦那様を膝に寝かせてからずっと見てて―
「良かった、ちゃんといます。」
下を見ると旦那様は規則正しい寝息を立てて御休みしている。
ないとは思いますが気づいたらいなくなっていそうでちうは怖いです。
余程お疲れになったのでしょう、起きる気配がありません。
「……。」
旦那様を見ながら思う。
ボロボロになったちうを拾って下さった旦那様、今は夜道を照らすためお傍に付いていますがあともう少しすれば私は魔王様の所へと送られます。
決して嫌ではありませんがちうは…少し寂しいです。
仕方ないとはいえ、私も旦那様を想う一人の妖怪です…もっと旦那様と一緒にいたいです。
はぁ…ずっとこのままでしたらどれだけ幸せでしょうか。
せめて今だけは…旦那様の寝顔を独り占めしていたいです。
「……。」
「……。」
「スー…。」
「……。」
ほ、頬に…その…キス、してみてもいいでしょうか?
「スー…。」
「……!」
な、何を考えているのでしょうか私は?!
別に旦那様とは夫婦同士ですしこんな隠れてしなくても…。
いやでも…旦那様と目を合わせながらキスをするなんて私には…はぁっ想像していたら恥ずかしくなってきました…!!
妖怪であり旦那様に捧げた身でありながらき、キスなどで恥じらうなど…。
「……。」
「……。」
モジモジとしている場合ではありません…これを逃せばなにか負けた気がします。
そーっと…旦那様の頬に、唇を近づけて―
「ん、んー…。」
はぁ…旦那様がこんなにも近くに。
もう少しで触れてしまいます、もう少しで…。
ぁあ!!身体が熱くなって…秘部も心無しか濡れている気がします。
旦那様にお逢いしてから…私はこんなにもいやらしい女になってしまいました。
「責任…取ってください。」
旦那様…。
ひゅうううう…。
触れるか触れないかの所で私の後ろの方、それも上から何かが落ちてくるような音が聞こえました。
私が後ろを振り返ると、”それ“はぐんぐんと近づくにつれ影が大きくなっていき、こちらへと来ました。
―――――――――。
「―さ!、…―て?!」
?
誰かが俺の首を締めながら何かを叫んでいる。
まどろみの中、アルコールがまだ抜けてないせいかひどく頭がはっきりしない。
よせ…そんなにされたら死んじまうぞ…?
「だ…さま!!…やく―」
声の主はようやくちうだと分かった。
そんなに慌ててどうしたんだ?
身体がうまく動かない…。
「お願―…きてください!!!」
「あがっ?!」
頭が揺さぶられるほどの強い衝撃を頬に感じた。
少し意識が戻り、うっすらと瞼を開ける。
「旦那様っ―」
ちうが必死な表情で何かを叫んでいた。
聞き取ろうと集中したとき、ちうの後ろから何か巨大な物体が迫ってくるのとちうの言葉を理解したのがほぼ同時だった。
「逃げてっ!!!」
「?!」
反射的なのか我武者羅になのかとにかくちうを抱いて横へと転がった。
「んぐっ!!」
「旦那様っ!!」
ちうがぎゅっと俺にしがみつく。
後ろで何かが怒涛をあげ木々をなぎ倒していった。
何が起こったかわからないまま俺は縮こまるしかなかった。
ただ…この腕の中にいるちうだけは守ってみせる、それしか頭になかった。
「…。」
しばらくして揺れと音が治まる。
視界は土埃がひどくてよく見えないが何かが落ちてきたようだ。
…いや、むしろ”不時着した”という表現が適切かもしれない。
「…大丈夫か?」
「は…はい。」
よかった…どこも怪我はしていないようだ。
それにしても間一髪だった…ちうが叩いてくれなければあのまま飲み込まれていただろう。
俺としたことが…自分の妻に助けられるとは不甲斐ないな。
「ちう…ありがとう、おかげで助かった。」
「…あ、あぁ。」
急にちうがキョトンとした顔になる、それから徐々に彼女の目から大粒の涙が溢れ始めた。
「あぁぁうぅ…怖かった…怖かったです…旦那様っ!!」
ふえぇぇっ、と胸の中で泣きじゃくるちう、俺は彼女の頭をそっと撫でであげた。
「ごめんな…怖かったな…。」
「ひぐ…ぐす…。」
そういえばちうはあの時、俺にしがみついたままだった。
自分だけ逃げることも出来ただろうに彼女はぎりぎりまで俺を起こそうとしてくれた。
よっぽど怖かっただろうに…ちうには一つ貸しができてしまった。
「さて…泣いてるところを悪いんだが…。」
「分かっております…取り乱して申し
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録