『人生とは、驚きの連続である』
そう誰かが言っていた。
―――例えば、偶然自分の書いた作品が注目されたり、
―――例えば、街中でスカウトされて芸能人の仲間入り、
…例えば、知っている作品の物語の住人が急に家へ押しかけてきたり、
あげればキリが無いだろう
だが、恐らく自分以上に驚く体験をする人間は居ないと断言しよう。
「ここ、どこ…?」
−−目が覚めたら知らない平地に立たされてるなんて普通は無いだろうから。
「何が…どうなって?」
辺りを見回せど何も無い、草原が広がりただ道が続いてるだけ。
「これは夢だ…そうに決まってる、早く覚めないかな…?」
起きようと頬を抓ってみたり、目を閉じてみるが一向に覚めない。
嫌にリアリティのある夢だ。
そう思ってると後ろから馬の走ってくる音が大勢聞こえてきた。
「わぁっ!」
馬達は俺の目の前で止まり、鎧に包まれた騎士の一人が降りて話しかけてきた。
「貴様、こんな所で何をしている?」
威圧しているような態度で話しかけてくる騎士に対して俺は驚愕した。
いやむしろ混乱した、今時こんな格好で馬に乗ってる奴なんてよほどのレイヤーでもいないだろう、というかここはどこなんだよ?
「あ、いや、その…。」
「見慣れぬ服装に、怪しい態度…貴様、新手の魔物だな?!」
「え、ちょ?!」
いきなり腰に差してある剣を引き抜き、俺に向けてきた。
逃げようとするも腰が抜けてしまい尻餅をついてしまう。
「逃げるな、神の名の下に成敗してくれる!!」
「ひゃっ?!」
すれすれで剣が首をかすり、ピリっと痛みが走った。
触ってみると少し血が出ており、これが夢じゃないことを教えてくれる。
「下賎な者よ、死ねっ!!」
「!!」
襲い来る狂気に俺は手で覆い隠した。
が、いつまでたっても痛みは襲ってこない。
「ぐ、貴様…。」
「へ?」
驚いて目を開けると寸前のところで剣が止められていた。
しかも指で摘むようにして。
「お前らの神様は無抵抗な人を切り殺すのが教えなのか?」
剣を振り払い、俺を守るようにして前に立つ男性。
「貴様…我ら教団の意志を愚弄する気か?!」
「困ってる奴を助けて殺される筋合いは無いな。」
「貴様も仲間だな、一緒に制裁をくれてやる!!」
騎士が男に剣を振り下ろす。
が、男は軽くいなし騎士の懐に思い一撃をお見舞いした。
「グホっ!!」
「た、隊長?!」
「ゴハ…何してる、お前たちもいけ!!」
吹き飛ばされた騎士は咳き込みながら部下に指示を出す。
騎士たちは男を囲むようにして剣を抜いた。
「そのまま逃げりゃ良いものを…。」
「魔物の手先め…覚悟!!」
「あ、危ない!!」
全員一斉に剣を振り、思わず俺は叫けび声を上げた。
「ぐわぁ!!」
だがさっきまで囲んでいた騎士が全員吹っ飛んでいた。
いったいどうやって…?
「こ、こいつ…。」
「見ろ…剣が折れてるぞ…化け物だ!!」
「に、逃げろぉ!!」
「お、お前ら?!…くそ、一旦退却!!」
騎士たちは乗ってきた馬でそそくさと逃げていってしまった。
「怪我は無いか?」
「あ、はい。」
手を差し出され、起こしてもらう。
「あの、ありがとうございます…助けていただいて。」
「いいさ、連中は俺も嫌いでな…ところで、見慣れない格好だな?」
自分の格好を指摘され、自分でも見てみるがどこにでもある普通の服だ。
「俺から見たら…そっちの方が不思議ですけど。」
「そうなのか?」
服装は少し古めかしい感じの服、俺でもこんなのはあんまり見ない。
「まあいいさ、えーっと名前は?」
「あ、えっと…。」
以前にもこんな事があったような?
とりあえず同じように答えてみる。
「俺は、ネームレス。…レスでいいです。」
「レスか…俺はアレスだ、少し名前が似てるな?」
お互い自己紹介をしてアレスと握手した。
途端になにか引っかかるものがあった。
「あれ…アレスだって?」
「どうした…俺の名前に何か?」
見たことも無い世界、騎士達の言っていた魔物、アレスという凄腕の戦士、彼の耳についてるイヤリング。
俺の中で最悪の結論が脳裏をよぎる。
「…変な事を聞いても良いですか?」
「そんなに固くならなくても良い、呼び捨てで構わない。」
「じゃあ、アレスって…魔物と人間が共存できる世界の為に旅してるとか言わない?」
「?!」
「魔王様と親友で名前はヴェン、リザ、サラ、ルカ、プリン、他に−」
「何故それを知ってる?!」
急にアレスが胸倉を掴み首絞めてきた、すごい力だ…息が出来ない。
「待って…苦し…。」
「あぁ、すまない。」
手を緩めてもらい、咳き込んで息を整える。
もう少しで意識が飛ぶところだった…。
「それにしても…どうしてその事を?
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