ヴェンの城から戻ってきた俺は街へと続く道を歩いていた。
話によるとこの先の街は貿易が盛んで、港から船が出ているようだ。
その船の行き先を聞いたとき、俺はその島に行ってみたいと思った。
名前は『ジパング』以前旅芸人がロークシナの村に来たとき彼はそこから来たといっていた。
彼が言うにはジパングでも同じように魔物が生息しているそうだ。
殆どが亜種だが、中にはその国特有の魔物も存在するらしい、行って損はないだろう。
「…なんだ?」
そうこう考えていると道の真ん中で四人ぐらいが固まって何かを話し合っていた。
近づいてみると一人がこちらに気づいて挨拶をした。
「どうも、旅のお方…貴方もこの先に用で?」
挨拶をしてきた男は大きい荷物を背負っていかにも旅商人らしい風体だった。
他の三人も同様で、街に物を売りに来た商人達といった所だろう。
「そのつもりなんだが…。」
「悪い事は言いません…この先には行かないほうがいいです。」
「何かあったのか?」
「あったというか…“いた”というか…。」
「いた?」
商人達はなんとも歯切れの悪い返答をした。
不思議に思った俺がもう一度聞くと彼らは恐る恐る話してくれた。
「実は…この道の先で魔物が立ち塞がっているのです。」
「魔物が…?」
「はい、なんでも…通りかかるものに会っては『持ってる物を置いていけ』と言って、断ったら着ている物さえ全部奪い取ってしまう恐ろしい魔物です。」
「物さえ渡せば通してくれるそうですが…殆ど奪われてしまうので街では商売もままならない状態だと…。」
「最初は私達も噂だろうと思っていたのですが…もしかしたらと思いまして…。」
「うーん…。」
追いはぎをする魔物か…。
確かにゴブリン等の魔物は追いはぎをすると言うのは(本人達からも)聞いた事があるが、その後大体は男性ごと巣に持ち帰るはずだ。
交尾目的でも街に攻めるでもなく…あくまで旅人に持っている物だけを狙う魔物はあまり聞いた事がないな…。
この商人達が嘘を言ってるようにも見えない…となると。
「その魔物の特徴は分かるか?」
「噂では…牛の姿をした魔物と、狐の尻尾が付いた魔物と聞いています。」
「二人も居るのか…。」
二人と聞くと以前のリザとレイの騒動を思い出した。
あの二人の時とは全く違うが…ただ一緒にいるというわけではないだろう。
これはまた…覚悟しておいたほうが良さそうだ。
「そこで私達は回り道を考えていたのですが…草原が続く上に近くには魔物が出没する森まであるというので、私達も困り果てて…。」
「その事なんだが…一つ提案がある。」
「…なんでしょう?」
「お前達もこの先の街に用があるんだろう?俺もどうしても港で船に乗らないといけない、そこでだ…。」
俺は全員を見渡しながら言った。
「俺がこの先の魔物を何とかするから…お前達は街に行った後、俺を船に乗れるよう手を回してもらえないか?」
「…え?!」
四人とも俺の言葉に耳を疑い、慌てて聞き返してきた。
「しょ…正気ですか、魔物ですよ?!」
「問題ないさ、それよりもどうなんだ、できそうか?」
「それは…街さえ行けば可能ですが…。」
「よし決まりだ、一日待って欲しい…それで通れるようにしてやる。」
「わ、わかりました…我々はここであなたを待ちます…御健闘を。」
彼らの言葉を背にして俺は先へと歩いていった。
理由があるにしろ…こんなことが続けば面倒な事になる。
彼女達も分かってくれればいいが。
場所は変わり…とある道では。
「ちょっと…聞いてるの?」
「…zzz…んぁ?なんか言ったか?」
「…また話してる途中で寝てたのね?」
「だってお前の話は長いし、聞いてたら眠くなっちまうよ。」
道の脇に置いてある大きな岩の上で牛の姿をした大きな女性『ミノタウロス』が寝転がっていた。
その横で草むらに隠れるようにして見ていた狐の姿をした女性『妖狐』が呆れる様子でため息をついた。
「…だからもうこんな事やめて静かに暮らそうよ?通りかかる人も減ってきたし…そろそろ勇者が討伐に来るかもしれないわよ?」
「なに言ってんだ、この方が食料も金も簡単に手に入るじゃねえか?それにこんな所に勇者なんてそうこねぇよ?」
「そうかもしれないけど…。」
「大丈夫だって?なにかあったら逃げりゃいいんだからよ、食料も貯まれば足洗って静かに暮らすさ。」
「うん…。…!誰か来たみたい、一人よ。」
「よっしゃ、じゃあいつもどおり行くぜ!!」
ミノタウロスがすぐさま岩の後ろへと隠れ、妖狐は草むらへと隠れた。
息を潜めじっと動かないまま二人は待ち続け、程なくして…一人の旅人が向こうから歩いてきた。
機を見計らって妖狐が草むらからゆっくりと姿を現す。
「あの…そこの殿方。」
「ん?」
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