―数日後―
――ガラフバル砦――
「バフォメットさま、姫さま。ようこそいらっしゃいました。これで我が軍の士気は上昇し、この度の戦、必ずや勝利することができましょう」
そう言って跪いたのはデュラハンの娘じゃった
「うむ。苦しゅうないのじゃ。儂もk」
「ちょっと、あんた。宣戦布告はちゃんとしたの?」
「は!もうすでに通知は終わっております。ガラテア軍からも返事の書状が届いております」
なっ!儂がいいこと言おうと思っておったのに…
まったく、この娘は…
「何をぶつぶつ言ってるの?」
「うるさいわい!ふん。別にいいのじゃ!」
「……?」
儂がかわいらし〜く拗ねておると、小娘は小首をかしげた
まったく、わがままな上に鈍いとは…
「相手国側からの返信を読み上げます『此度の戦、両軍にとって有益な結果をもたらすとはとても考えられない。話は変わるが、そちらの軍を指揮するバフォメット殿、並びに魔王の姫君はいまだ意中の男性に出会われていないとか…。そこでどうだろうか?そこにいるバフォメット殿と姫君の旦那を私が見繕うので、それで手を引いてはくれないか? ガラテア国王 シェルク=ツバキ=シモツキ』」
「な……」
その場の空気が凍った
「な、なななななななななな。なんじゃこれはあぁぁぁぁぁ!!!!」
儂は思わず叫んでおった
「なぁんで相手の国王がそんな事知っとるんじゃぁぁぁ!!!?つか、ほっとけ、なのじゃ。まったくもって余計なお世話じゃ!おい、今すぐ手紙を送るのじゃ!もうこれは戦争しかないのじゃ!全面戦争じゃ!これは相手からの宣戦布告じゃ!!」
「あ、あの、バフォメット様、これは我々の宣戦布告に対する返事でして…」
「ゆぅぅぅるぅぅぅぅぅさぁぁぁぁんっ!!なのじゃぁ!儂をなめておるのじゃ!兵を集めよ!すぐに戦の用意を開始するのじゃ!あんな小国一踏みでぺしゃんこにしてやるのじゃぁぁ!!」
「………ちょっと、バフォメット。おちつk」
「これが落ち着いていられるかぁぁぁぁ!なのじゃ」
「明らかな挑発文じゃない。敵の策に簡単に乗せられてどうするのよ」
「…………むぅ。ふん。どうせ儂は独身ですよぉ〜。ふん、なのじゃ。つか、お主になどなだめられなくとも、儂は常に冷静なのじゃ。ふん」
「……それのどこが冷静なのよ?」
「ふん。いいもん。儂はいつかこれ以上ない素敵な兄上に巡り合うのじゃ。その時に吠え面かかせてやるのじゃ」
「あうぅ〜。バフォメット様が拗ねちゃいました…」
「子供か?こいつ…」
ふん
儂は見目麗しい幼女なのじゃ
ふん。今に見ておれ
いつか儂を笑っている奴らをみなぎゃふんと言わせてやるのじゃ
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「ふぎゃふんっ!!…ずず」
「どうなさいました?」
「いや、すまぬ。なぜか突然くしゃみが出た。誰かに噂でもされているのかな?」
「大切なお体です。お気を付けください」
「ふふ。流石の私もこんな時期に風邪をひくほど呑気者ではないさ。ふふ。しかし、敵将たちはあの手紙、気に入ってくれたかな?」
「……どんな手紙を送ったのですか?」
「いや、なぁに。ちょっとしたおふざけだ。お前の集めてくれた情報が役に立った。ありがとう」
「挑発でもなさったのですか?」
「いや、本当にただのおふざけだ。まぁ、しかしこれで怒って攻めてでも着たら面白いが…。まぁ、知恵のあるバフォメットがいてはそうもいくまい。奴が賢ければ、挑発を逆に警戒し、開戦の時期を少し調整してくるはずだが…どうかな」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――実際はその逆だった
まったくもう、まったくもう、まったくもうだよ。まったくもうなのじゃ
許しがたき、勇者シェルクめ
今頃したり顔で玉座に座っておるに違いないのじゃ
ふん。もう決めたのじゃ
奴を倒すのはこの儂直々にやるのじゃ
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――バフォメットが廊下を短い脚でテクテクと歩きながら独り言をこぼしていたころ
「ただ今聖教府から知らせが届きました〜」
開戦を間近に控え、カロリーヌが私のところにやってきた
「そうか。で、援軍の方はどうだ?」
「そ、それがぁ…」
カロリーヌがしゅんと俯く
「どうした?『負け戦にわざわざ兵は出せぬ』などと枢機卿のジジイどもが言いでもしたか?」
「はいぃ。そのとぉりで…」
「はぁ…」
まったく
聖職者などと言いつつも所詮は自分の名誉が大事か
「おい!どう
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