プロローグ―バフォメットの日常


儂はバフォメットなのじゃ!
くくく…もはや説明など無用じゃろ?
なんせ儂は人気者じゃからのぅ
ちなみに儂のお気に入りの“そふぁ”で偉そうに足を組んでツ(イ)ンテールを揺らしながらこちらを睨んでおるのは魔王の小娘の娘っ子、リリムのクリステアじゃ
あの小娘に似て比較的素直で純粋で男好きな者が多いリリムの中でも異端な娘子
高圧的で弱者を見下し、己の強さに溺れた“困ったちゃん”じゃ
まさに小娘といった風格じゃが、一応は姫
儂も無下に扱うこともできないのでなかなかに面倒な奴じゃ

「ねえ、バフォメット。ここにはもっとおいしいものはないの?気を利かせて美男子の一匹ぐらい献上できないの?」
「それはすまぬのぅ。サバトの者はみな忙しい故、小娘にかまってやれる時間は少ないのじゃ」
「へぇ…私が小娘?」
「そうじゃ。城ではどう育ってきたのかは知らぬが、ここではお主はただの客じゃ。礼儀をわきまえぬのならば客としても置くつもりはないのじゃ」
「好き放題言ってくれるじゃないの…。サバトがつぶれても良いっていうの?」
「小娘程度につぶされるようなサバトではない。それに、サバトがなくなれば困るのは儂でもお主でもなくお主の姉や母じゃ。親不孝は感心せぬぞ?」
「ふん。…勝手にしなさいよ。こんなちんけな戦なんてあんたの手なんか借りなくても私一人がいれば十分よ」

まったく
可愛げの欠片もない小娘じゃ
まず、こんな小娘の面倒をなぜ儂が見なければならなくなったかを説明しよう





あれは先日の事じゃ

「バフォメットちゃぁぁぁ〜〜ん」
「なんj…わぎゃぁぁぁぁぁぁあ!」

儂は突然背後から飛びついてきた巨乳何者かに押し倒された

「ぐ、ぐあぁぁぁ…首がぁ……鞭打ちにぃ…乳に…乳にぃ……」
「バフォメットちゃん聞いて!あのね、あの子がね、あの子が大変なの!」

儂が首を押さえてもがく中、そ奴は儂の苦声も聞かずにまくしたてた

「クリスちゃんがね、クリスちゃんがね、成人しちゃうのよ〜?」
「そ、それの何が大変なのじゃ? おぉ…首がぁ…」

儂が首を摩りながら立ち上がるとそ奴は儂の肩をつかんでブンブンと儂の肩を揺らし始めた

「成人しちゃうのよ!?大変なのよぉ!あの子はまだ子供なのにぃ!!」
「そ、そのクリスとは何者…ちょ、いだだ!…なのじゃ?子供が成人するのは当たり前の事じゃろうが…おぉ…くびが…」
「ダメなのぉ!あんなかわいい子、まだ独り立ちさせちゃ大変なのぉ!」
「お主、それはちと過保護すぎやせぬか?お主もそうして大きくなったのじゃろうが」
「そんなことないもん!かわいい子が心配になるのはおねぇちゃんとして普通の事だもん!」
「そ、そうかのぅ…」

どう見ても過保護じゃ
儂がそっけない態度で答えると奴は白い羽をバタバタと羽ばたかせ
白い絹のような髪を振り乱して悶え始めたのじゃ

「いい!?成人するってことはたぁ〜っくさん家来さんが貰えちゃうってことなのよ!?それであの子、『私が子供じゃないってこと見せてあげるわ。そうだ!戦争よ!私が人間どもを蹴散らして立派に凱旋する姿を見せてあげるわ!』なんてはりきっちゃって……うえぇぇぇぇぇん」
「べ、別によいではないかぁ。若いうちの火遊びの一つや二つ…。それにリリムのそ奴が出るのならば魔物たちも魔力で強化される。怪我人は出るやもしれぬが、死人は出ぬじゃろう?」
「だぁ〜めぇ〜なぁ〜のぉ〜!女の子は戦争なんてしちゃいけません!特にあの子はかわいい子なの!おバカさんで頑張り屋さんでとぉ〜っても“きゅーと”なのぉ!そんな子が戦争なんて、おねぇちゃん、おねぇちゃん………絶対許さないんだからぁぁぁ!びえぇぇぇぇん。( ゚д゚)ハッ!もしクリスちゃんが怪我なんてしたら・・・。やだぁぁぁぁ!私のクリスちゃんがキズモノになっちゃうぅぅぅ!!」

――ガクガクガク
――ブンブンブン

「あぎゃぁぁぁぁぁぁ!!や、やめるのじゃぁぁぁ。まわるぅぅ!?せかいがまわってるぅぅぅぅなのじゃぁぁぁぁ」
「やだぁぁぁ。あの子を止めてくれなきゃやだやだやだぁぁぁぁぁ!!」
「ぅわぁぁぁぁぁぁ!わ、わかった。わかったから離すのじゃぁぁぁぁ!!飛ぶぅぅぅぅぅぅ、これ、肩外れるのじゃぁぁぁぁ!」

――ピタ

「ホント?」
「わぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

儂は突然奴が体の回転を止めたものじゃから遠心力の働くままに飛ばされていった

「ホントに何とかしてくれるの?バフォメットちゃん」
「わ、わかったのじゃぁ…(きゅ〜)」
「わ〜い。わ〜い。じゃあね、じゃあね、父さまに言ってくるね。バフォメットちゃんが何とかしてくれるって。またねぇ〜」

そんな声が聞こえた気がした
しかし、儂の薄れゆく意識にはその声が届くことはなかった

で、儂がかわいいかわいい魔女っ
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