「うくっ!やめてくれ!でる!もう出ちまう!」
あら?ずいぶんと早いのね
もう少し我慢してくれないと 私がイけないのだけど?
「そんなこと言われたって、あ、あぁぁぁぁぁ!!」
私の中に彼が流れ込んでくる
彼の温かさが広がる
それでも 不思議なほどに頭の中は冷たくて静か
ごちそうさま
良い夢見れたわね♪
夢
そう
私は夢
彼の夢
この私は私ではなく 彼の夢
私ではない もう一人の私
彼の望むモノ
夢の中でしか存在しない
夢の様な私
目覚める
私の部屋
見慣れた天井
見慣れた棚に その上のお気に入りのぬいぐるみ
使い古したシーツをどけて
ぼぅっと夢を思い出す
彼の家の中
彼の匂いのする部屋の中
彼の寝息を聞いて
彼の夢に入る
夢での私は積極的で
まるで手だれた娼婦の様に
彼は私の腕の中で恥ずかしい姿をさらして
私の中に全てをぶちまける
あれは私の望み
あれは彼の望み
でも
決して私ではない 何か
私はあんなふうには笑えない
私はあんなふうにはしゃべれない
私はあんなふうには導けない
私はあんなふうには……
私は彼女にあこがれる
でも
彼女は私の中のどこかに居るはずで
なのにどうして?
鏡を覗いても 彼女は写らない
そこに居るのは 私
長い前髪
そばかすのある頬
ロバの様な耳に
似合わない大きな胸
醜い馬の下半身をして
どんなに笑ってもぎこちない笑いしかできない
可愛くない女の子
きっと彼はこんな私を見ても気づいてもくれない
だから私は夢に逃げる
だから私は夢に頼る
私は私ではない私に彼を任せる
彼女は私の代わりに彼への想いを伝えてくれる
おはよう 目が覚めたかしら?
「あんたは…。また…今日もヤりにきたってのか?」
ええ
嫌だったかしら?
「……なぁ、アンタ何者だ?これは俺の夢だよな?」
さぁ、どうかしら?
あなたは夢を夢と 現実を現実だと確かな証拠を持って言う事が出来るのかしら?
「あんたは俺の作りだした幻なのか?」
さぁ、どうかしら?
それは貴女の方がよく知っているのでは?
「分からねぇから聞いてるんだ。あんたは美人だ。あんたは魅力的だ。でも、俺の好みじゃねぇ」
そう
それじゃあなたにもっと好いてもらえるように頑張らなくちゃ
「どうしてこんな事をするんだ?」
さぁ、どうしてかしら?
私がそうしたいから?
あなたがそうしたいから?
「俺はそこまで欲求不満じゃねぇ」
そう?
ここをこんなに大きくしているのに?
「あんたは…ずるいよ…」
そうね
私はずるいの
だから あなたを欲しがる
だから あなたを求める
だから 私は夢を求める
あなたの夢
夢でしか会えない
夢でしか話せない
夢の中の私が本当の私
そう言って 逃げたいんだ
私はわがままで
私は弱虫だから
彼の部屋
彼のお気に入りの置き物
彼の両親と写った写真が置かれ
ベッドの中では彼が眠ってる
彼はいつも通り静かな寝息を立てて
私は息を殺して彼に近づく
目の前に彼がいる
鼻先には彼の匂い
耳元には彼の息遣い
でも
臆病な私はそれに触れる事も出来ない
どくん どくん
脈打って
彼の夢に…
「あんたか」
え!?
「やっぱり魔物か。毎晩毎晩夢で好き放題やってくれやがって」
そんな…うそ
「どうした?いつもみたいに誘わねぇのか?」
いや
ごめんなさい
わたし…
「…………脅えてるのか?」
ちが…
でも…
「……何だよ?何か言えよ」
わた…
その…
「…お前……何がしたいんだよ…。俺の心を好き放題もて遊びやがって。なのに何で何も言わねぇんだよ!?ふざけてんのか!?」
ちが…う
わたし…は
喉が詰まる
息が苦しい
彼が怒ってる
私のせい
謝らなきゃ
ううん
伝えなきゃ
でも
そんなこと私にはできないよ
助けて
夢の中の私
貴女も私なら私を助けてよ
「おい…何が言いてぇんだよ?」
あの…その…
肺が焼けるみたいに
喉が張り付くみたいに
心臓が張り裂けそうになって
ごめんっ
私は逃げ出した
「待てよっ!」
キャッ!
尻尾 掴まれて
転んだ上に 彼が
「おい…。夢の中で、あんた、俺に言ってくれたよな?俺が欲しいって。あれは、嘘だったのか?」
ちが…
わたし…
うそじゃ…ないよ…
「……そうか。それは良かった…」
彼の顔が近づいて
彼の唇が
私の唇に
……
…
目が覚める
いつもの部屋
見慣れた天井
お気に入りのソファ
その上に置かれたお気に入りのぬいぐるみたち
夢を思い出す
昨日見た夢
私は逃げてしまった
彼にたった一言 好き って言えなくて
ぼぅっと
「やっと目が覚
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