小さなころ、僕にはヒーローが居た
ヒーローはいつでも僕を助けてくれる
ヒーローはいつでも僕を守ってくれる
ピンチの時に何処からともなく現れて
悪者たちをやっつける
その後笑顔でこう言うんだ
「私がいればもう大丈夫」
the hero is nowhere
雲が蒼い空の遥か下を流れていく
俺はその遥か下からそれを眺めている
どうすればあの空に触れる事が出来るのだろう
俺は右手を伸ばしてみる
雲にさえ届きはしない
また風が吹く
微かな草の匂いがする
瞼が重く…
「せんぱ〜い!どこですか〜?せんぱぁ〜いっ!?」
後頭部越しに足音と間抜けた声が近づいてくる
見るとぶかぶかのベレー帽を被った少女が軽鎧をカシャカシャいわせて走ってきていた
「なんだよマール?人がせっかく戦前の優雅で呑気なひと時を満喫してるってのに」
「『なんだよ』じゃ、な〜いっすよ〜。レオナ将軍がカンカンですよ?」
「え゛!?何?俺なんか不味い事したっけ?…もしかして先週の女のことで…」
俺は将軍に怒られる理由になりえる事をいろいろと思いだしてみる
アレじゃないとしたら、下級兵の女の子へのセクハラがばれたとか?
いや、あれをセクハラとか言われたら女の尻も触れないじゃないか…
だめだ、思い浮かばん
「…まぁ〜たなんかやらかしたんすか? って、違いますよ。出撃前に作戦会議あるって昨日伝令来てたじゃないっすかぁ〜」
「伝令…あぁ、そう言えば来たね、眼鏡の堅っ苦しいのが」
「それですよそれ、まずいっすよ?ウチの隊の連中までとばっちり食らって怒られてるんっすから」
「うわぁ〜…その会議、風邪でキャンセルできねぇ?」
「無理ですよ。早く行った方がいいと思いますよ?」
「わぁ〜った、すぐ行くって言っといて」
俺は嫌々立ち上がって隊のテントに戻ると、一通りの装備と集会用の式服であるマントを羽織って眠気の抜けない足取りで本営のテントに向かった
「レクサス・ロザリタス、只今到着しました」
「…レクサス、今何時か言ってみなさい」
入ってあいさつした途端正面のおっかないリザードマンの女に睨まれた
彼女はレオナ・モリガン将軍
今回の戦の指揮を王から任されてるおっかない上司だ
「えと…、すんません、俺、時計持ってなくて。教えてもらえます?」
「…(プチン)…。…7時24分だ。これがどういうことだか分かるかしら?」
「う〜ん。いつもなら寝てる時間ってことぐらいしか」
「(メキィ)…。作戦会議集合は7時だと全隊に伝令したはずだけど?他の隊の隊長はとうに帰らせてしまったわ」
「ああ、それですよそれ。俺、男の話をいちいち覚えるのが苦手なんで可愛い娘に伝令させてくださいよ」
「(ブチッ)……貴様は余程その命惜しくないと見えるな。私がこの場で貴様の命貰ってやろうかぁぁ!!?」
とうとう我慢しきれなくなった将軍は机を両手で叩いて怒りをあらわにする
この人のこういう怒り方は昔から何も変わってないなぁ
「あらら〜。だめっすよそんな事でキレちゃ。綺麗な顔が台無しだ」
「私に世辞を言う暇があるなら時間通り集まらんかっ!」
「以後注意しますよ。で、なんすか?作戦って?」
「……ほんっとに貴様は腹が立つな。 …作戦だが、あなたの隊にはマールの隊と合同してこの谷に留まり前線を維持してほしいの」
まだ眉間に皺を寄せたままレオナ将軍は机に置かれた地図と駒を指さして作戦を説明する
俺の隊とマールの隊はこの国でもトップに入るほどの精鋭だ
って、ことはこの作戦…
「で、将軍の隊で山上から一気に攻め落とす、ってな具合ですか?」
「…ええ。この少数で最大の戦果を生むにはそれが最善だと考えたの」
「ふぅん。こっちのおよそ倍の相手さんからすれば少数相手に戦線を押し上げられないでイライラしてる所にいきなり本陣攻められて大混乱ってわけだ」
「ええ。普通の隊ではこの作戦は実行不可能だけど、あなたの隊ならそれが出来ると考えたわ。危険な作戦だけどやってくれるかしら?」
「そうっすねぇ。いいですけど。この配置だと向かいの山から矢の雨が降って来そうで怖いっすよ。マールとロイゼン辺りの隊を向かいの山に回してください。その方がいざ将軍の隊が失敗しても保険が効きます」
「おいおい。あまり私の部下を舐めないことね。それにロイゼン隊は分かるが、前線のマール隊を回してしまうとお前の隊が集中砲火を浴びる事になるわよ?」
「心配してくれるんっすか?隊長のそう言うところ、好きっすよ」
「ふざけてる場合!?それに、もうあなたの隊長では無い。将軍と呼びなさい」
「はは。ウチの隊の連中なら心配いらないっすよ。あいつらがいれば一個大隊相手でもひけは取りません」
「…そう。任せるわ」
呆れた、という感じで目を伏せため息気味に答
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