「ふぁ〜あ」
起き上がって大きなあくびをする。
ああ〜。今日も良い朝だなぁ。
俺はギシギシと軋むボロいベッドから出て、二階の自分の部屋から1階のリビングへ降りて行くと。
――ジュー
良い匂いがする。
「あ、リアン、もう起きたのか? ごめんね〜。まだ朝ご飯出来てないんだよ〜」
「母さん、おはよ。いいよ。ちょっと早く目が覚めちゃったんだ。井戸で顔洗ってくるよ」
「は〜い。いってらっしゃ〜い。 気をつけろ。井戸に落ちたりするなよ」
「大丈夫だよ」
母さんは本当に心配症だなぁ。
でも、その癖俺に鍛錬をつける時などは人が変わった様に厳しくなったりするし。
しかも時々、一人で会話してるみたいに独り言してる時もあるし。
まぁ、変わってるけど、良い母さんだ。
――ジャバ ごしごし
「ぷはっ」
くぅ。
流石に最近は冷えてきたから井戸の水も冷たい。
でも、おかげで寝ぼけた頭が一気に冷めたけど。
ふぅ。
それにしても、俺も慣れたもんだなぁ。
小さな頃、森からこの街に移り住んできた時は俺と母さん以外にこんなにたくさんの人間がいるって事も知らなかった。
母さんと2人、森の中の洞窟に住んで、狩りをしながら暮らしてた。
でも、ある日母さんが言った。
「リアン。お前も大きくなった。だから、これからはお前が人間として立派に生きて行くために人間の国へ移り住もうと思う。 だいじょ〜ぶだよ〜。リアンはいい子だから、きっとすぐにいっぱいお友達が出来て、みんなと仲良くなれるからね〜」
まだ小さかった俺には良く分からなかった。
でも、ここへ引っ越した時、最初は随分と戸惑ったのを今でも覚えてる。
森では動物を捕まえて食べていたし、逆に襲われる事もあった。
ここではそんな事は全くない。
でも、物を買うにもお金を払わなくちゃいけないし。
食べ物もその辺の犬や猫を捕まえるわけにはいかない。
何より、ここには自分たち以外のたくさんの人間がいた。
最初のうち、俺はどうしていいか分からず随分と苦労したのを覚えている。
まぁ、ここに住む様になって10年。
今ではそんな事は全くなくなったのだけれど。
「やぁ、おはよう。リアン、今日は随分と早起きだな」
「あ、ベニーさん。おはよう。ちょっと早く目が覚めちゃったんだ」
「そういやぁ、リアン、国の守備隊に入隊出来たそうだな。名誉な事じゃないか」
「そんなことないよ。入隊試験、合格者の中で最下位だったんだから。それで良く同僚にもからかわれてるし」
「はは。リアンらしいな」
「それはどうも」
近所のベニーさんが挨拶をしてくれた。
人当たりの良い人で、俺と母さんが越してきた時も真っ先に顔なじみになった人だ。
おかげで小さい頃から俺の事をよく見てるし、時々からかわれてしまう。
「ただいま」
「おかえり〜。ちょうど今ご飯が出来たよ〜。 遠慮せずにしっかりと食えよ」
「うわ。またこんなに作ったの?」
「安心しろ。お前が残したら全部私が食ってやる。 おか〜さんはくいしんぼ〜なんだよ〜。 何っ!?誰が食い意地が張っているだと!?」
「言ってないよ。いただきま〜す」
「いただきま〜す♪ うむ。やはり朝は肉だな」
「野菜も食べなきゃだめだよ」
「あはは〜。言われちゃった〜。 わ、分かっている」
母さんは変わってる。
時々母さんの中には2人の母さんがいるんじゃないかって思う時もあるけど、そんな事、普通に考えてあるはずがないか。
「守備隊の仕事はどうだ?」
「ん〜。楽しいよ?」
「お友達からいじわるとかかされてない? 何!?誰だ!?母さんがボッコボコにしてやるぞ?」
「大丈夫だよ。 ってか、やめてよ。母さんの「ボッコボコ」は本当に加減がないんだからさ」
「そ、それならいいのだが…。 嫌なことされたらいつでもおか〜さんに言うのよ〜?」
物騒な事言ったり、抜けた様な笑顔になったり。
本当にコロコロと表情の変わる母さん。
森の中で女手一つで俺を育ててくれて、
街に来た時は最初、森から来たからと言って魔物だって疑われて色々と言われた事もあった。
それでも、母さんはいつも俺を守ってくれた。
だから、俺は母さんを守りたいって思って、守備隊の入隊試験を受けたんだ。
まぁ、試験の結果は最下位合格だったけれど、それでも合格できたことの方が奇跡みたいなものだった。
「あ、そろそろ集合の時間だ。ごちそうさま」
「あ、お着替えはリアンのお部屋に置いておいたわよ〜」
「ありがと」
俺は急いで2階に上がり、守備隊の制服に着替え、まだ使い慣れない守備隊のサーベルを腰に挿して1階へと降りた。
1階ではあれほどあった朝食をもう食べ終えた母さんが洗い物をしていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「おう。気をつけろ。悪い奴等に襲われたら母さんを呼べよ。どこに居てもすぐに駆けつ
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