第七話


私は一度空っぽになった。
誇りも、名誉も、全て失って。

私の身体が、心が、あの親子を受け入れたのは至極当然のことだったのかもしれない。
空っぽになった器に再び水が注がれていくように。
しかし、その先の事を考えると不安になる。
人間の一生など短い。
私達が一呼吸を置いているうちに年老い死んでいく。
それでも、私はこれにすがりつくしかなかった。
何もない虚の様な私の巣穴に迷い込んできたこの親子に。

それから一週間ほどが過ぎた。




「ほら、リアン。おっぱいをやろう。たんと飲め。そして早く大きくなって立派になるのだ」
『………』

いつもは騒がしいアイラが黙って私を凝視している。

「………ど、どうしたのだ?アイラ」
『じ〜〜〜〜〜〜』
「…き、気味が悪いんだが」
『おっぱい。私も欲しいです』
「嫌だ」
『おっぱい、私も欲しいです』
「ダメだ」
『おっぱい。私も飲みたいです』
「だが、断る」
『おっぱい。私に下さい』
「それならお前にもあるだろう。お前の胸にあるそれはなんだ?肉まんか何かか?」
『私にティアさんのおっぱいをください』
「お前のもそれほど悪くないと思うぞ。というか服を着ろ。もう何日全裸なのだ?」
『悪くないとおっしゃるのでしたら是非!』
「嫌だ」
『なんでぇぇぇですかぁぁ!!?!?!?私こんなにティアさんの事愛してるのにぃぃぃ!!』
「そうか、ありがとう。 ふふ。リアン〜いい子だなぁ〜。お、そうか、左側も行くのか。いいぞ、たんと飲め〜」
『うぅぅぅ!!!!リアンばっかりずるいです! ハッ!そうだ、リアンに憑いて…』
「ほぉ…とうとう母としての魂も売るか(ギロ)」
『ひぅっ! ふぇ、えと、と、とにかくじゅるいんですよぅ!』
「なんだ?ちょっと強く睨み過ぎたか?泣きながら怒るなよ」
『びえぇぇぇぇぇぇ!ティアさんのばかぁぁ!!!』
「はいはい」
『ティアさんのおたんこなす〜〜!』
「はいはい」
『ティアさんのいきおくれ処女ぉぉ!!!!』
「はいは…ハッ!何で知っておる!?」
『ティアさんのメンヘル処女〜〜〜!!』
「あ、ちょ、おま、待てぇ!何で知っておる!!ってかメンヘル処女言うな!」
『びえぇぇぇぇぇん』
「ちょ、どこへ行く!?言うなよ!?絶対誰にも言うなよ!?!?あの、あ。これはフリではないぞ?ホントは言ってほしいとかそういうのではないぞ!?本当に言うなよ!?絶対だぞ!」

その日、アイラは戻ってこなかった。
まったく…。少し邪険にしすぎたか?
しかし、あれを受け入れるわけにもいかんし…。
やはりゴースト程度にはこの魔力は強すぎるのだろうか…。

「息苦しいのは嫌いなんだがなぁ」

私はバフォメットから受け取った首輪を拾い、自分の首に付けた。



次の日は雨だった。

「ゴーストは雨にぬれたりするのか?」

まいったな。
アイラめ。裸のまま出て行って帰って来んではないか。

――すぅ…すぅ

「はぁ…」

泣き疲れて眠ったか。

「…やっぱり本物の母の方が良いのか?」

――すぅすぅ…

私も寝るか…。

「すぅ…」



「うぅ…」

妙な熱さで目を覚ました。

「く…」

疼く。
くそ、ここしばらくは来なかったというのに…。
やはり首輪で魔力を封じたせいか…。

「うぅ…」

私の胸から母乳が溢れる。
水着の家からにじみ出て恥ずかしいシミが広がっていく。
ぐしょりと湿り、気持ちが悪い。

「く…。アイラが帰ってくる前になんとかせねば…」

――くちゅ

「ひぅ…」

水着をずらそうとした拍子に、大きく隆起していた胸の頂きに水着の端が引っ掛かり、弾けた拍子に声が漏れた。
母乳でぬらぬらと湿った乳が外気に触れてひやりとする。

「くぅ…。なんでこう敏感なのだ…私の乳は…」

――キュポ

「はうぅっ」

搾乳機を装着し、乳を吸いだす。
ただそれだけだと言うのに私の身体は言い知れぬ心地好さを伝え、胸の奥から震える様な感覚が広がる。

「くぅ…こんな…」

いつもよりも酷い。
今までこんなに感じた事などない。

「あぁん! な、なにか…くる?」

胸の奥からこみ上げてくる様な
胸の奥で何かが爆ぜる様な感覚

「くひぃぃぃ!!」

――ぴゅっ

こんな感覚は初めてだった。
頭が真っ白になり。
まるでリアンの夜泣きのせいで寝不足になっている時の様に目の前が白黒する。
しかし
とてつもなく気持ちいい。
不意に意識が戻ると、私のもう片方の胸からも母乳が噴出され、白い弧を描いていた。

「はぁ…はぁ…。なんだ?今のは…。今のが絶頂というやつか? こ、こんな姿、アイラに見られでもしたら恐ろしい事に…」
『ふえ?呼びました?』
「………………」
『………………?』




                         
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