あぁ…。
この森の生活にも慣れてきた。
しかし何故こうも憂鬱とした気分が抜けないのだろう。
私がまどろみから目を覚ましても、ここには餌達は居ない。
『竜神様、今お水をお持ちしますね』
そう言って私に使える事を楽しそうにしていた神官たちは居ない。
見回しても街中を元気に走り回る餌の子供たちは居ない。
私に悪意を持って近づく小賢しい餌達をからかって遊ぶのも好きだった。
そして何より、ここではあの甘美な餌を味わう事も出来はしない。
私は舌慣れしつつある動物の小骨を舐めしゃぶるとそれを放り投げた。
――カラン
「あ〜。あれ?」
…なんだ?
「ここはだれ?わたしはどこ?」
私が日々食べては捨てていた動物達の骨が盛り上がったかと思うと、
まるで生き物の、そう、ちょうど餌達の様な形に組み上がり、動き出した。
骨の量が足りないのか出来上がった餌の形のそれはまるで幼い子供の様だ。
「あ〜…。あれ?おなかすいた?」
腹なら先程のウサギを丸1羽ほど食べたばかりだが?
「う〜。おなかすいた〜」
そう言って骨はカシャカシャと音を立てながら森の奥へ歩いて行ってしまった。
…なんだ?
可笑しなこともあるものだ…。
あれ以来、私の周囲では色々と不思議な事が起こり始めた。
私が眠っていると突然近くにアルラウネが生えてきて私の身体を絡め取ろうとしてきたので引っこ抜いて遙か彼方に放り投げたり。
雨の降った次の日、私が森の中を歩いているといくつかの水たまりから餌の女の形をしたスライムが湧いてきたり。
なにが起こっているんだ?
これもこの大気に漂う不可思議な魔力のせいなんだろうか?
奴が現れたのはそれから数日が経ってからだった。
「何用だ?」
「ほほぉ…。この魔力…。お主じゃったか。ティアm…」
「馴れ馴れしく名前を呼ぶな。バフォメット」
「そう目くじらを立てるな。何も儂はお主とやりあうために来たのではない。こんな豊かな森を焦土にしたくは無いからのぅ」
「ならばとっとと立ち去れ」
「そう言うわけにもいかんのぅ。お主が馬鹿のように魔力を垂れ流しておるせいでこの森の植生に悪影響が出ておるのじゃ」
「悪影響?…あぁ。私の周囲で勝手に低級の魔物が湧きだしたりしていた、あれか」
「ああ。恐らくはお主のバカでかい魔力が魔王の志向性を持った魔力に触れたことで様々なものが魔物化してしまっておるのじゃろう。全く。お主はドラゴンの中でも特に魔力が強いんじゃ、少しくらい押さえてくれぬか?調査に出した魔女が何人かお前の魔力に当てられて体調を崩して帰ってきておるんじゃが」
「それでお前が来たのか…。…それがな、封印の影響か上手く魔力が扱えんのだ」
「ふむ…。恐らくはお主の姿が変わったせいじゃろうな」
「そう言えばお前も随分と面白い姿になっているな」
「ふ。儂はこの姿が気に入って自らこの姿になっておるのじゃ」
「……昔から変な女だったが、相変わらず変で安心した」
「センスの差じゃな。今じゃ儂が流行の最先端じゃ。ロリブームは儂が育てた!」
「…不便じゃないのか?そんな短い手足で…」
「短くないわ!謝れ!全世界のロリ、及びそれを応援している皆様に謝れ!」
「…………(スルー)所で、私の姿が変わった事と魔力の制御にどんな関係があると言うのだ?」
「…幻影肢。という言葉を知っておるか?」
「知らんな。なんかの術か?」
「普通は四肢を失った者に現れる症状でな、四肢を失っても尚、その失った四肢の感覚が残ってしまう症状だ」
「…相変わらず胡散臭い話には詳しいな」
「れっきとした医学の知識じゃ。単に主が学に疎いだけじゃ」
「で?それが私にどう関わりがある」
「魔物は魔力を体中に巡らせている。もちろんお主らドラゴンの身体でもな。それも四肢の端まで全てじゃ。そんなお主の身体がそんなに縮んだのじゃ。だからまだお主は無意識にその姿になる前のバカでかい身体の隅にまで魔力を巡らせようとしておるのじゃろう。しかし今やその巨体はない。そのせいで本来なら身体の内で留まっているはずの魔力が外に駄々漏れ状態になっているのじゃ。その上お主の魔力の量は他のドラゴンのそれよりも多いからのう…」
「…ふむ。そんなつもりはなかったがな…」
「本人の無意識で起こるから問題なのじゃ。サバトでも幼化した魔女の中でまれに良く似た症状を出す者がいるからのう」
「そんな事を云われても、私は意識していないのだからどうしようもない」
「ふふん♪ そこで!じゃ…」
「…?」
「じゃじゃ〜〜ん! サバト印のチョーカー〜(声色)」
「…首輪?」
「サバト印の“おしゃれ”チョ〜カ〜(声色)」
「いや、だから首輪だろ?」
「…はぁ。おしゃれの分からん奴め…」
「で?これがどうしたというのだ?」
「…このチョーカーは封印の陣をチョ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録