綺麗な月だったのを覚えている
不思議な世界だった
水底を泳いでいる様な
天底を飛んでいる様な
月がふわふわと舞っている
幾つもの蒼い月が
夢の世界
夢の…
夢…
…
異isora空
こぽ…
私の口から泡が零れた
ああ
そうだった
私はここで生きてるんだった
「ようやくお目覚め?イソラちゃん。 相変わらず辛気臭い顔をしてるのね」
優雅な尾ひれで円を描くように泳ぐ彼女
美しい薄紅色の身体が通るたび白い泡が霧を作り彼女の鱗が反した光を受けて薄桃に輝く
辛気臭くは無いよ
残念ながら私はあなたの様に騒がしくなれないだけだよ
「ふふ。本当は羨ましいくせに」
安心して それは無い
あなたの様に生きていたら確かに悩みなんて浮かばないでしょうけどね
「あんたの悩みはいつになったら晴れるのかしら?それとも何で悩んでいるのかも分からなくなってしまった?」
本当にあなたは鋭いね
そんな事ばかり云ってるといつか私の様に友達をなくすよ
「安心して。あんたよりはずっと多いから」
そう…だったね
「はぁ。暗い暗い。ほんっと暗い。可愛い顔が台無しっ」
え?
愉快なメロウは肩を透かしたように拗ねたように言うと
私の腕を引っ張り仄暗い水底から太陽の光が乱れ反る水面へと泳ぎ出した
ちょっと、トゥナ どこにいくの?
「漁よ。好みの人間の1匹や2匹見つけてパァ〜っとやれば悩みなんて忘れられるわ」
ちょ… そんないきなり
「何?今さらそんなオボコみたいな事を云うの?あんた、ネレイスなんだから男の味もよく知ってるんでしょ?」
それはそうだけども…
そう 私はネレイス
人間の男と交わり、その精を得ねば生きていけない
そういう生き物なのだ
しかし私はネレイスの中では異端だ
私は昔人間だった らしい
“らしい” というのは 私は人間だった頃の事を何一つ覚えていない
でも、私に親はいない
だからきっとそうなんだと思う
それと、私は“食事”で普通ならば感じるべき快感を得た事がない
それ故に食事に興味も持てず
餌の人間にもさして興味がない
そのせいで私は仲間内から変人扱いされている
彼女等の言う通りなのかもしれない
私は少しおかしい
私は産まれた時 ネレイスとして生まれた時から
言い知れぬ不安と
解決できない悩みを抱えている 気がする
しかし、その不安も悩みも 彼女 トゥナの言う通り
その正体すら分からず、たぶん この先もずっと拭えないものなんだ
そんな私にこんな風に親しくしてくれるトゥナも少し変っているのかもしれない
ありがと…ね
「…/// …そのセリフ、少し頬を赤らめて上目遣いでもう一回いってもらえる?」
…え、 やだキモチワルイ
トゥナは少し変だ
トゥナに連れて来られたのは人間の港町のある辺りだった
「ちっ ムサい男しか居ない…」
男を漁りに来たんじゃなかったの?
「違うわよ 知ってるでしょ?私が好きなのは幼女よ!」
…まだ、治って無かったの… その性癖
「治るわけないでしょ!幼女は正義よ!無垢で純粋で穢れ一つない心!ぷにぷにですべすべの肌!腕の中にすっぽりと納まるコンパクトなボディ!あれは神が与えた至高の美なのよ!(チラ)」
……ハッ Σ(゚д゚ )
まさかあなた、私を幼女のカテゴリに!?
「あら?今頃気づいた?」
ガクガクブルブル(((゚д゚ )))
「大丈夫よ。あんたは私の友達だもの」
ハッ!?
っていうか私はそのカテゴリに入れられる事を断固拒否する!
「へぇ〜 アンタ、身長は?」
…ぅ ひゃ、162センチ(足ヒレ含み)
「カップは?」
… と AAA(トリプルエー)
「うんうん」
な、なんだその笑顔は…
「別に〜 ちょっと再確認出来て嬉しかっただけ」
何の確認だ!
「私の愛の再確認」
Σ
ちょっとおなかいたくなったからかえる
「ふふ。冗談よ。ほんっとあんたって可愛いわよね。人間の男にもそう言われるでしょ?」
言われない 言われたくない
「そお?それはその男達に見る目がないのね」
それに、私は餌を摂りに行く時はこの姿で陸に上がるから(ボフン)
私はそう言ってトゥナの前で人間の姿に化けて見せる
これでも人間に化けるのは上手い方だと思っている
実際、この姿で迫れば餌達はまず間違いなく誘惑される
しかし…
「…………あれ?私のイソラはどこ?薄幸系美幼女イソラたんはどこにいったの?」
…ここだ!
「あら?ハジメマシテ 人間のお姉さん(ババア)。結婚の申し込みなら10年ぐらい前にお願いします」
私だ!イソラだ!
「ごめんなさい。私バストが80センチ後半もある様な女性には興味がない
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