『と、いうわけで、私はこいつに身体を盗られているんだ』
「…いや、「と、いうわけで」って言われて納得できるような話ではない気がするのじゃが…」
「え〜?でもでも〜、ほんとなんですよ〜?」
――おぎゃぁ〜
「あ〜よしよし。おかあさんでしゅよ〜いい子いい子」
「ふむ…同じ身体でも中身が違うとずいぶんと違う人物に見えるもんじゃな…」
『あぁ〜私の顔でそんな感じで笑いかけるな!』
「…ぶふ!」
『笑うなバフォメット!』
私の話に面白い顔を更に面白くして笑うバフォメット。
まったく、人事だと思って…
『というか、バフォメット、さっきからずっと気になっていたんだが』
「なんじゃ?」
『お前、何で足がそんな産まれたての小鹿みたいな事になっているのだ?』
「……いや、これには深い事情があっての…(ぷるぷる)」
『深い事情?どうした?1晩中自転車をこぎ続けでもしたのか?』
「(こやつエスパーか!?)ま、まぁそんな事はどうでもよい。しかし真面目な話、可笑しなことになっておるのう」
『ああ。全くだ。なんで私が餌の赤子の面倒など…』
「そっちではない」
『んあ?』
「ただのゴースト程度がお主の様な高位の魔物に憑くなど普通じゃありえん事じゃ」
『なに!?』
「ゴーストは魔物の中でも魔力が低く、人と魔物の中間の様なあやふやな存在じゃ。それが主の様な魔力の強い者に憑いたとしても主の魔力に呑まれ、あんなふうに自我を保っているなんて事はありえん。何百年も生き、余程に魔力を付けたゴーストなら中級の魔物相手ならあり得なくもない話じゃが…、いくらなんでもお主の様な者には憑けるとは思えん。それに、あの娘、死んだのは昨日の事なんじゃろ?」
『ああ』
「死んだばかりのゴーストじゃ憑くどころか姿を保つ事すら難しい。そんなゴーストが憑くどころかお主の身体を奪うなど…」
『あの娘、特殊な体質だったとか?』
「そんな話聞いた事が無いわ。そんな人間がいては儂もいつ身体を奪われるか分からぬではないか」
『うむ…』
「お主、あの娘が死んだ時、何かせんかったか?」
『ん?とは言っても特別な事は何も…ただあいつの身体を食いはしたが』
「食っ!?…お主、時代錯誤も良い所じゃな…」
『ん?魔物が人を食うのは普通の事であろう』
「はぁ…そうか、お主のおつむは千年前から止まったまんまなんじゃったな…」
『な!?人を骨董品のように言うでない!』
「骨董品どころか今のお主はただの幽霊ではないか」
『ぐ…』
「まぁ、魔力は身体の中を流れるものじゃが、それの支配権は魂にある。お主が本気であの娘を追い出そうとすればあ奴は主の身体から追い出されるじゃろう」
『ふむ』
「しかしお主、頭の隅で「赤子のお守をしている間はあの娘に身体を預けておくのも良いか」などと思っておるのではないか?」
『なっ!?お前もエスパーだったのか!?』
「…はぁ。お主はほんっと、昔っから思っている事が顔に出る奴じゃ」
『な…出る…のか?』
「ああ。お主、儂にあの娘に身体を盗られた話をしている時もそれほど困った様子ではなかったからのぅ」
『ぐ…バフォメットのくせに…』
「な〜にがバフォメットのくせに、じゃ?言っておくが、儂がお主に負けた事など1度たりともないぞ」
『いや、確かに私は3度お前と戦い2度は負けたが、3度目は私の勝ちだった!』
「あれは負けの内に入らん!あれは儂の視界にロリが入ってきて、ついよそ見してしまっただけじゃ!」
『はっ!言い訳とは見苦しいな、バフォメット』
「ど、どの道お主の負け越しではないか」
『いや、その後私はお前に大食い対決で2度勝っている。それで3勝2敗で私の勝ちだ』
「ドラゴンの食欲に勝てるわけないじゃろうが!あんなものは勝負でも何でもない!」
『負けは負けだ』
「それを言ったらお主は儂にチェスで5度戦い4度負けている」
『ぐぐ…』
「ふん。まぁ、儂と勝負して儂に勝った事があるものは片手の指を数えるほどもおらん。それをまぐれとは言え1度勝っておるお主はそれを誇りこそすれ、悔しがる必要などない」
『な〜にがまぐれだ、勝負中によそ見する奴がどう考えても悪いだろうが』
「ぐ…と、とりあえず儂の勝ち越しじゃ!」
「くすくす…」
「『何が可笑しい!?』」
「あ、ごめんなさい。お二人とも、仲が良いんだなぁ~って」
「『仲など良くない!』」
「そ〜ですか?息もぴったり合っているように見えるけど?…」
「『なっ!…ふんっ』」
「……お主、儂のやったチョーカーはどこへやった?」
『ん?ああ。あれならその赤子とそいつを拾ってしまった所で落としてしまった。あまりにあの娘の身体が美味かったのでつい忘れてきたのだ』
「な…そうか。なぞは全て解けた!なのじゃ」
『なにがだ?』
「あの娘がお主に憑けたからくりじゃよ」
『なに
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