「うむ…ミルクは人肌の温度…うむ…左腕で支えるように抱き、溢さない様にゆっくりと哺乳瓶を傾ける…。ぅ、ちょっと吹いてしまった…」
私はバフォメットから騙されて買ったガラクタの中から、「お子様養育セット」なるものを引っ張り出して、その説明書を読みながら悪戦苦闘していた。
まさかあのガラクタが役に立つとは…。
しかし、餌共の赤子とは何とめんどくさい!
“食事も排泄も全部お母さんが世話しましょう”だと!?
ドラゴンの赤子ならば産まれてすぐにでも立ち上がり、1歳になる頃には親の真似をして餌を摂る様になるぞ!?
くそっ!
あの女。
確かに肉は美味かったが、代わりにとんでもない物を押しつけおって…。
――おぎゃ〜
「あ〜もぉ〜!うるさい!食うぞ!?」
――おぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!
「あぁ〜!わかったわかった。ほら〜おもちゃだぞ〜」
――カランカラン
――あ〜あ〜
「ふぅ…」
私はベビーベッドに寝かせた赤子の頭の上に尾で玩具を吊り下げ、あやしてやりながらその姿を見ていた。
「笑っている顔は愛らしいのだがな…」
――すぅ…すぅ…
「眠ったか…」
私は眠る赤子の顔を見ていると、瞼が重くなって行くのを感じた。
その夜、不可思議窮まりない夢を見た。
「さん…ティアさん……」
むにゃむにゃ
もうたべられんぞ〜?
「ティアさん起きて〜。もう1時間も呼びかけてるんですよ〜?」
もう1時?
さっき朝飯を食べたばかりだ…むにゃむにゃ
「ほら〜、アツアツラーメンですよ〜?」
ラーメン?
ふむ、美味そうだな…
「そぉいっ!!」
うあぢぃぃぃ!!!!
な、なんだ!?
熱々のラーメンを頭に叩きつけられた気がしたぞ!?
「あ、ティアさんおはようございます」
あ、オハヨウゴザイマス
「そしてありがとうございます」
あ、ドウイタシマシテ…
って…
誰だお前は!?
「私ですよ〜。ティアさんに助けてもらって、ティアさんに食べられちゃった〜」
む?
食った餌の顔などいちいち覚えておらぬ
「あと、私の赤ちゃんを守ってくれるよう約束した」
っ!
おまえ、あの女か!?
それにしては、ちと外見が幼いような…
「えへへ〜ゴーストになったら、若返っちゃいました〜」
何?ゴースト?
「はい〜。私ユーレイになっちゃいましたよ〜」
なに!?
「はい〜。なのでティアさんの夢に出てきちゃいましたよ~。初出演ですね〜」
夢?
ぬおっ!?
なんだここは?
真っ暗ではないか
「…きっと、ティアさんの心の中、今は空っぽなんですね」
ふむ…
たしかに…
お、こんな所に箱があるぞ
「え、ちょっと、私の事無視して勝手に自分の夢の中で宝探し始めないでくださいよ」
おお
これは懐かしい
「なんですか?絵?」
うむ
私が箱庭を作り始めた時だな
「え?ティアさん男の人だったんですか!?」
あほか!
「いたっ!後頭部が痛い!」
それは箱庭の最初の王だ
おっかしな奴だったが、頭だけは私以上に回る男だった
「へぇ〜」
私はこっちだ
「でかっ!ちょ、これ、絵に写りきってませんよ?ってか、そもそも人の形してないし!」
いや、お前、私のどこを見ておった?
私は今も昔も誇り高いドラゴンだ
「え?ドラゴン!?へぇ〜初めて見ました。 ドラゴンさんって、みんなティアさんみたいな美人さんなんですか?」
知らんな
私はこの姿になってから他の同族には会っておらんからな
そういえばディアナ…ディアボロスなどはどうしておるのか…
「ドラゴンさんにお友達もいらっしゃったんですか〜」
当り前だ
おまえ、私達をそこらの獣のように思っておるのか?
「え?だって、司祭様達は魔物は今でこそ人の形になって知恵を付けたけど、元は血も涙もない獣だったって…」
ほほぉ〜
ではお前はその獣の私に自らの赤子を預けたと言うのか
「いいえ、私はティアさんにあの子を預けたんです」
なんとも良く分からん理論だな
「あの時、死にかけてた私の目にティアさんは天使様のように見えました」
私をあんな小娘どもと間違えるとは…
「あ、いえ、そう言う意味じゃなくて〜。この人なら大丈夫だって」
む?
「実際、あの子の事、助けてくれた」
む…
「すっごく、すっごく嬉しかった。だから…」
うむ
「だから私、ティアさんに憑いちゃいました♪」
そうか、私に憑い…
…
憑いた!?!?
「はい。私、ティアさんと一緒にあの子を育てたくって。なんか、ティアさん一人じゃ心配だし」
ん?
んんん?
いや、まて、何かおかしい
「ふぇ?」
感謝してる相手に憑くとか
普通に考えておかしくないかjk
「だってあの子まで食べられちゃったら嫌じゃないですか〜」
え?あれ?
さ
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