「わぎゃあっ!?」
別段こっそりやっていたわけではないのだけれど、すっかり寝ていると思ってた私は驚きの悲鳴を上げた。
いや、でも、よく考えたらあれだけやって起きなかったらそれはきっと寝てるんじゃなくて死んでる。
いや、むしろ、今起きたのだとしたらそれは相当に鈍い人だ。
「お、おにいちゃん。起きてたの?」
「………」
おにいちゃんは寝起きなのか、彫りの深い目を少し細めてこちらをじっと見ている。
「い、いつから起きてたの?」
「…………」
質問に答えず、ただひたすらに見つめるおにいちゃん。
「あ、あの…おにいちゃん?起きてる…んだよね?」
「………」
沈黙。
しかし、よく見るとその眠そうな目は先程よりも見開かれているように見えr
――ガバァっ
「わきゃっ!?」
心の声すら遮られ、私はおにいちゃんの太い腕で、大きな胸板で、まるでプレス機に潰されるように抱きしめられてしまった。
「もが…んごご…もごご………」
おにいちゃんの胸板に顔が押し付けられて息ができない。
喋ったり、息を吸ったりしようとすると強制的におにいちゃんの匂いが口を、鼻を、肺を満たしてしまう。
「むぐぅ〜。うむぅ〜〜」
―バシバシ
私は薄れ生きそうになる意識でおにいちゃんの脇腹あたりを軽く叩いてギブアップを宣言する。
「あ…。ごめんね」
呑気な太い声が聞こえて、
「ぷはぁ!?」
私は開放された。
「はぁ…はぁ…」
「ごめんね。いたずらがバレた子猫みたいで可愛かったから、つい」
つい、で殺されてはたまったものじゃない。
私は抗議の声をあげるために立ち上がろうとする。
――ピク
「ふぁれぇ?」
脚に力が入らない。
頭がくらくらする。
酸欠かな?
私はふらふらとおにいちゃんの膝の上でバランスを崩し、再びおにいちゃんの胸板に倒れこんでしまう。
「はふぅ…」
そして吸い込んでしまう。
おにいちゃんの匂い。
あ、これだ…。
―すぅぅぅ
私は深く深く息を吸って、おにいちゃんの匂いで肺を満たす。
―ふらぁ
なんとも言えない幸福感と朦朧感、そして気持ちよさが頭をしびれさせる。
―すりすり
私はいつの間にかおにいちゃんの胸に顔を擦り付けてその匂いを目一杯取り込んでいた。
「…ふぉ……」
頭の上で感嘆とも驚きともつかない声がしたが、私の頭のなかには入ってこなかった。
―なでなで
「はふぅん…」
頭上に心地よい刺激が降ってくる。
頭がしびれる。
心臓が飛び跳ねる。
心が幸せと気持ちいいで満たされていく。
「にゃに…これぇ……」
もう心の中で思ったことがそのまま言葉として漏れてしまった。
ふにゃふにゃと全身の力が抜けて私の身体はおにいちゃんにより深く体重をのせる。
―ぎゅぅぅ
再びおにいちゃんの太い腕が私の小さな身体に回される。
今度はさっきと違って優しく、そして右腕だけ。
左手はまだ私の頭を撫でたままだ。
私の身体はおにいちゃんの匂いで包まれて、おにいちゃんの抱擁は私の心を掴んで離さない。
なにこれ…。
気持ち良すぎる。
頭おかしくなっちゃう。
本当に猫みたいなオバカさんになっちゃいそう。
「ふにゃぁ…」
なんて馬鹿なことを思っていたら本当に猫みたいな声が漏れてしまった。
そして、私の身体を抱きしめるおにいちゃんの大きな胸板がゾクゾクと震える。
―すりすり
とうとうおにいちゃんは私の頭に頬をこすりつけ始めた。
あ、これは。
魔物になった私にはわかる。
いや、魔物じゃなくても女ならわかる。
このすりすりは女の子に対してするものじゃない。
犬や猫に対して人がするそれだ。
むぅ…。
「おにいちゃん。私、猫じゃない…」
私はできるだけ冷静に言おうと心がけていたけど、その声には明らかな不機嫌さが出てしまった。
「え?あ。ごめんね。小さくて可愛くて…我慢できなくて」
これで私に欲情してたら手遅れな変態さんだ。
でも、そんな危ないセリフを吐きながらもおにいちゃんは全然興奮していない。
いや、たしかに子供のように、少年というよりは、可愛いぬいぐるみをプレゼントされた少女のように目を輝かせてはいるけれど、その興奮は性的な興奮では全くなさそうだ。
その証拠にお兄ちゃんは全く気づいてないけれど、私が服を切り取ったせいで外に投げ出されているおちんちんはもう既に力を失っている。
失ってもこの大きさ…。
こんなの、人間の女の人じゃ相手にできないんじゃないの?
「おにいちゃん。私、こう見えても大人の女なんだけど?」
「?」
予想はしてたけど、おにいちゃんは純粋そうな瞳に純粋な疑問符を浮かべた。
「いや、だから、私もう34歳なの」
私が“私”の年齢を告げるとおにいちゃんの表情が疑問符を浮かべたまま固まった。
そして、数秒
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