この義勇軍の規模は総勢47。
武器は揃っておるが、兵の中には食いぶちに困って入隊しただけの元農民までが混じっている。
戦力としてつかえそうなのは甘く見積もっても事実上20名いるかどうか…。
兵糧は私の知る限りでは、なくなれば制圧と嘯き適当な盗賊を退治し、報酬と称して罪も無き農村から食料を巻き上げる始末。
まともな蓄えなどとても期待できない。
戦時の傭兵集として雇われるのが上策であろうか。
いや、しかし今はどこも朝廷からの重税に苦しみ、盗賊の討伐に手を焼いているような状況であると聞く、とても戦など起こるとは思えぬ。
私は隆陽(りゅうよう)から受け取った、この軍の内情書に目を通し、頭を悩ませていた。
隆陽は誠に熱心に私に尽くしてくれる。
そして妖蜥蜴とはいえ女でありながらに剣の腕はこの軍に置いて最も秀でているといえよう。
恐らくは戦闘に置いて実際に兵を動かすのは彼女となるであろう。
私はそんなことを考えながら一度内情書から目を離し、掛け声を挙げながら剣を振る兵達を見た。
彼らは私が命じて稽古をさせている。
教官として剣に秀でた者たちを数人付け、基本から武術を教えさせた。
剣を振る兵の中にはまだ成人して間もないような少年も見受けられる。
あのような者たちまでがこの様な所に逃げ延びねばならぬほどにこの国は貧しいのかと、私はため息をついた。
その時、
「大変です。主様!近くの村から火の手が上がっております!」
息を荒げ、隆陽が駆け込んできた。
彼女には数日前からこの付近の村を回り、異変がないかの調査と、あと、付近の地図を集めるようにと頼んでおいた。
しばらくすると隆陽と共に偵察に出ていた兵数人が肩で息をしながら帰ってきた。
「火事か?盗賊か?」
「わかりませんが、どちらにせよ助けが必要かと」
「…わかった」
私は立ち上がり、声を大きくして言った。
「近くの村に置いて火の手が上がっている!我らは義の下に事態を粛清せねばならぬ!みな武器を持て!そして馬存、器栄は大斧を!あと、武術に自信のないものはここにあるだけの桶を持て!準備の終わった者から整列を!至急である」
私はそれだけ言うと、一度小屋の中へ入り、出陣の準備をする。
小屋の中では話を聞いていたのか、麟が私の軽鎧と剣を持って待っていた。
「初陣だ。行って参る」
「お気を付けて」
私は歩きながら支度をして、外に出る。そこにはもう準備を済ませた隆陽が待機していた。
「隆陽。そなたは兵の準備を待ち、そろい次第兵を率いて村へ急行せよ。私は駐庸と忠宮を連れて馬で一足先に村に行く。頼んだぞ」
「はい!」
私達が村に到着したとき、そこは阿鼻叫喚の図と化していた。
家が焼かれ、村人は逃げ惑っている。
火の手は思いの外激しく、林立した家々に燃え広がる可能性があった。
「忠宮、この村の付近に川は?」
「ありますが、小さく、そして村の外れにしかございません」
「そうか。ならば盗賊の殲滅を優先とする!武器をとれ。盗賊を見つけ次第駆逐せよ!」
「「はっ!」」
そう言って2人は走り出す。
私も手綱を引き、2人とは別方面に向かった。
馬で駆けながら、馬上から3人余りを斬った。
様子からして盗賊は十数人の少数規模のものであるらしい。
そして、統率も無く、無暗やたらと金品や食料を奪っているようだ。
統率がないとあれば、頭目を討ち取ったところで暴虐は収まらない。
片っぱしから治めていくしかない。
「村の者!こちらから村の外に逃げよ!安全は確保した!」
私の呼びかけに十名ほどの村人が逃げていく。
こうして、援軍が到着するころにはあらかたの盗賊は始末した。
その後、駆け付けた援軍に行って川の水を運び消火に当たらせ、燃え広がりそうならば柱を馬存、器栄に打ち倒させて、ようやく火は納まった。
村人たちは我らが消火活動をしている間、驚いたように見ていたが、事が終わると胸をなでおろし、安堵していた。
「我らは義勇軍である!我らは義の下に悪を討ち果たす!村の者たちよ。これまでの我らの非礼を詫びさせてくれ。これから我らは誠心誠意を込め、この一帯の平和のために尽力しよう!」
私が集まった者たちに告げると、歓喜が起こり、帰りに礼だと言って食料を分けてくれた。
その後、10名ほどを交代で毎日村に送り、復興に当たらせた。
復興の手伝いに行ったものはうまい昼飯がもらえるなどと喜んでいたが、私はこの軍の中に、着実に正義の行いへの喜びが芽生えていくのを感じた。
その後も、復興の手伝いの延長として壊れた橋の修繕などをしていくうちに、我ら義勇軍のうわさを聞き、周囲の村や町から助けを求める声が上がった。
それらに応える内、義勇軍に入りたいと名乗り出るものがちらほらと現れ、義勇軍の規模は少しずつ拡大してい
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