んはぁ〜。
さいこぉ〜。
もうおなかいっぱぁ〜い。
私は満たされたお腹と快楽にとろけていた。
人間とエッチするのがこんな気持ちいいなんて何百年も生きてきて初めて知った。
そして人を斬る気持ちよさは思い出の中よりもずっと新鮮に味わえた。
人を斬るごとに、そして精を味わうごとに私たちは結びついていき、今ではもう区別はなくなってしまった。
主様の意思を強く残していた“ワシ”も、人間だった弱くて脆い“私”も、今では同じ。
私になった。
ううん。私達だけじゃない。
私の中にはこれまでの全ての宿主達が生きている。
これが私の持って生まれた呪い。
私はいつも私で、そして私じゃない。
紛い物の偽物の、強制に共生する寄生虫。
主様のような圧倒的な“ワシ”がいなければ一振りの剣にすらなれない半端者。
あは。
それでもいっか。
獲得したばかりの“私”が妥協する。
一見過去のどの宿主よりも弱い“私”の唯一持つ異常性、あまりにも強い慣性と妥協。
向上や努力を一切行わせない程の異常性。
だから“私”は人間であった頃は何も出来ない人間だった。
だから“私”は人間であった頃をすぐに忘れて化物になれた。
だから“私”は人間であった頃からバケモノだった。
ああ“ワシ”もそんな私に惹かれてしまったのだと今ならわかる。
でも、いっか。
成っちゃったものは成っちゃったんだし。
私は立ち上がって暗い洞窟を歩き出す。
きっと外はまだ真っ暗。
はぁ、そっか。
私外に出るんだよねぇ。
もう何百年ぶりだろう。
“私”は昨日まで外に居たけど。
私が封印された頃に比べて世界はひどく変わっちゃった。
もう昔のような命をかけた醜く心躍る殺戮は行われていないだろう。
人間の国同士の戦争なら時々やってるみたいだけど、所詮人間の戦争。
主様みたいな存在が再び現れるとは思えない。
じゃあ、私はどうしよう。
さっきのおにいちゃんみたいなおもちゃを探して旅をしようかな?
うん。
それはいいかも。
おにいちゃんみたいな悪い人なら壊しちゃっても誰も文句言わないよね?
幸い今の私は子供の姿だし、人間に警戒はされにくい。
興奮すると赤く光っちゃう目だけは隠さなくちゃだけど、落ち着いてる間は昔の私と同じ青い瞳だし、どうにかなるかな?
私は身体の中から黒い糸を紡ぎだしてワンピースを形作る。
ワンピースの設計図(パターン)は私の頭のなかに自然と浮かんでくる。
これは主様よりもずっと昔の宿主のおねえちゃんの記憶だ。
おねえちゃんは大きな街の小さな洋服屋の一人娘で、骨董品店に売られていた私を偶然手に取って、私の宿主になった。
力は弱かったけど、お洋服への愛情は強くて、相手のお洋服を斬ったり、紅く染めたりするのが何よりも好きだった。
その時の私は大きなハサミの姿をしてたっけ。
なんだか懐かしい。
ワンピースの形になった黒い糸はぴったりのサイズで私の身体を包み込む。
薄くて軽い、良い出来栄え。
それにこの糸は私の刀身から出来てるから鎧みたいなものだ。
でもひらひらして邪魔だから、人を斬るときは裸で斬ろう。
「――――。」
その時、洞窟の別の部屋から小さな声が聞こえた。
ああ。そっか。
一緒に売られてきた奴隷のおねえちゃんたちも居るんだっけ?
ん〜。
どうしよっかな?
私は正義の味方じゃない。
ただの剣で、ただの化物だ。
助けてあげる義理もないけど…。
床を見るとさっき私が斬ってあげたおにいちゃんたちが幸せそうに精液を漏らしながら倒れてる。
あ。
いいこと思いついた。
んふふ〜。
いい事した後は気持ちがいい。
おねえちゃん達は私が斬って魔力を注いであげると発情して、我も忘れておにいちゃん達を襲っていた。
人を斬れて私も気持ちいいし、斬られて本当の気持ちよさを知ったおねえちゃん達も幸せ。
みんな幸せで私は満足。
きっと少しもしない内におねえちゃん達は魔物になっちゃうけど、まぁ、いっか。
さて…、次はぁ…。
最後に残った部屋。
この中には身体の大きなおにいちゃんが居る。
ん〜。
どうしよっかな?
女の子と男の子の人数はぴったりだし。
そうすると大きなおにいちゃんは余っちゃう。
ふと人間だった頃の私を思い出す。
大きなおにいちゃんは奴隷商人が私たちに餌として配ったパンが少ない時、自分の分を私に譲ったりしてくれた。
盗賊のおにいちゃん達に捕まるまでの長い道のりで私が歩くのに疲れると私を抱っこしてくれた。
奴隷商人達は大きなおにいちゃんは一番の高値だからやめろって怒ってたけど、私は嬉しかったのを覚えてる。
ん〜。
斬ってあげようかな?
それともいっぱいエッチしようかな?
あ、でも、身体も大きいし、力も強そうだし、次の宿主になってもらうのも良いかもしれない。
ん〜。
でも、私は今の“私”の姿と性格も気に入ってしまった。
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