番外1 魔物シェルクの日常

「バフォメット様。今日は一日お疲れ様です。明日は9時から北西支部にて会議、その後竜車で移動した後、霧の大陸支部にて昼食会、その後は…」
「のわぁぁぁぁ!!もう!分かっておるのじゃ。鬼秘書め!次から次へと仕事を入れおって!!少しは主を労わるのじゃ!!」
「いえ。バフォメット様には今後もサバトの発展のために尽力してもらわねばいけませんから(笑)」
「むきぃぃぃ!!口元が笑っておるのじゃ!もう嫌じゃ!こんな秘書嫌なのじゃ!」

拗ねたバフォ様…かわゆす。

「おい。何をにやけておるのじゃ?」
「いえ。私のバフォ様は今日もかわいいなぁ〜と」
「お主は歪んでおるのじゃ!性格も根性も愛情も何もかも歪みまくってるのじゃ!」


私は、勇者シェルクとして死んだあと、魔物シェルクとして、バフォメット様の下で秘書をやっていた。
初めは元勇者の私が魔物としてやっていけるのかと不安だったが。
そんな不安は数日のうちに霧散していった。
と、言うのも…


「お姉様。今日もお疲れ様です」

可愛い妹達の一人、カシアが私にお茶を持ってきてくれた。
キラキラとした大きな瞳で見つめられ、プルンとした果実のような小さな唇が少し恥ずかしそうに俯く。
私は照れて薄桃色に染まったそのぷにぷにのほっぺに、

「いつもありがとね」

――チュ

キスをした。

「はひゅ〜。お、お姉様。わ、わたし、頑張りまひゅ!」

嬉しそうにとことこと部屋を出て行くカシア。
フリフリの魔女っ子ドレスがたまらない。
もう、サバトの中ときたら、右を見ても左を見てもロリロリロリロリとてもロリ!
正直、たまりません(悦)。

私は今の仕事を天職だと感じていた。

―はぁ〜。まったく。いったいいつからボクのシェルクはこんな変態になっちゃったのかなぁ?

私の中から私の心の声が聞こえた。
そう。私の中に住むもうひとりの私、ツバキだ。
ツバキはあれからしばらくの間ずっとすねているみたいだったが、最近ではもう諦めもついたのか、こうして話しかけてくれるようになっていた。
っていうか、

何を言うか。私は変態じゃないぞ?
例え変態だとしてもそれは変態という名の淑女だ。

―いや、もう、そんな事を胸を張って言える時点で十分普通じゃないからね?

えぇ!!?
そ、そんな…。じゃあ今までの私の人生って…。

―どんだけ馬鹿な人生を送って来たのさ!?嘘でしょ!?ボクのシェルクはこんな変態じゃないはずだよ!?

いや、もうプロローグの段階からこのキャラだったしなぁ…。

―プロローグから!?!?ボク、まだ影も形もない時から!?

いや、一応設定はあったらしいよ。なんか、最初は私が仮面剥がれて出てくるあのキャラがお前になる予定だったんだけど、気づいたらどうやってもラスボスに持ってくの無理出てきたから、分かりやすくボクっ子辛辣キャラにしたらしいよ。うん。

―なんでどことなく説明口調なのさ!?それきっと騙されてるよ。後付けのいいわけだよ?

いやいや、マジマジ。うんマジよ。

―もう言い訳するのすら面倒臭くなってるじゃないか!


私とツバキがメタフィクショナルな自分会議をしていると、

「シェルクーー!!助けてぇぇぇ!!」
「ぎゃふっ!?」

私の膨らみかけの胸板にツインテールが飛び込んできた。

「いったたたた。なんだ?何事だ?いったいどこの回し者だ?どこの回しツンテールだ!?」
「ツンテールっていうな!っていうか、もう最後の方、ツンデレキャラですらなくなってたよ私!」

二重の意味でツッコミを入れたのはクリスだった。

「で、どうしたのだ?そんなに慌てて」
「追われてるのよ!!」
「え?」
「とにかく隠れさせてもらうわよ。あ、そうだ、朔夜紫電流で私の周りに結界とか貼っといてよ。お願い!」

そう言ってクリスは秘書室の掃除用具ロッカーに駆けこんだ。

「なんか、朔夜紫電流を便利道具かなんかと勘違いしてないか?あの姫さまは…」

―いや、できるよ。

「できるの!?」

―うん。ちょっと身体代わって。

「あ、ああ」
―これでいいか?

「うん。おっけ。朔夜紫電流―荊ノ朔城―」

ツバキは私と身体の支配権を入れ替わると、腰に差した2振りの刀の内、聖剣紫電を抜いて、ロッカーの周囲の空間を切った。

―へぇ…。

「気配、魔力を完全に断ち切って、その内の空間を一種の結界にする技だね。効果は場所によるけど、魔力的な力が強い魔界だと10分ももたないかも。これも影技だから、シェルクは知らないでしょ?」

―いよいよもって何でもアリだな…朔夜紫電流

「隠密するならこういう技は必須だよ。人間の国の屋内とかなら何時間かは気配隠せるよ」

―今度、教えてよ、ツバキ。いや、師匠!

「勝手に師匠にしないでよね。ほら、身体返すよ」

「う
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