私は
一人、部屋の中でシーツにくるまっていた
もう涙は止まってた
ニアくん達はシェルクを救い出す作戦を考えると言って、お城の会議室に篭ったままだ
リスティア姉さまとの話はもう纏まっているって言ってたから
きっと今日か明日にはみんなはガラテアのお城に帰っちゃう
そうしたら私はもう…
「まだ落ち込んでるの〜?」
「…姉さま…」
いつの間にか、後ろに姉さまが立っていた
少し困ったような、優しい微笑みで
「クリスちゃんはもう危ない事なんてしなくていいのよ〜。私がずっと守ってあげるからね〜」
背中に
ふわりと
姉さま、暖かい…
「姉さま…私は…間違っていたのかな?……みんなが魔物になって、好きな人と結ばれて、それが幸せな世界だって、思ってた」
「そうねぇ〜。それはきっと幸せな世界ね。私も、クリスちゃんとこうしていると、とっても幸せ」
姉さまは肯定も否定もしてくれない
分かってる
でも
私はきっと
「ねぇ。教えて、姉さま。私はどうしたらいいの?私のせいでシェルクが…シェルクが死んじゃうかもしれないの…」
『今すぐ助けてあげなさい』って
そう言ってほしかった
でも
「放っておけばいいんじゃない?そのシェルクっていう人が、自分でクリスちゃんを利用して、自分で捕まったんでしょ?クリスちゃんは何も悪くないわ」
ゾクリとするような
氷の言葉
「クリスちゃん。大人はね、自分で起こしたことの責任は自分で取らなくちゃいけないの。だから、シェルクっていう人も、自分でなんとかしなくちゃいけない。あなたはまだ子供なんだから、お姉ちゃんが守ってあげるわ」
え
ちがう
「私は大人よっ!」
「クリスちゃんは子供よ」
振り向いて反論しようとした
そこで、姉さまの顔を見てしまった
「ひぃっ…」
姉さまの目
真っ赤に光ってて
怒ってる
誰に?
私に…
「もうクリスちゃんを危ない目には合わせないわ。私がいつまでも守ってあげる。大丈夫よ。私の傍にいてくれるなら、もう辛い事も悲しい事も全部全部お姉ちゃんが壊してあげるから」
「ち、ちがう…わたしは……」
「クリスちゃんは私の妹よ?可愛い可愛い私のクリスちゃん」
姉さまの赤く燃えるような目が私を見つめる
や
ちがう
私は…もう…
「クリスちゃんが欲しいものはなんだって手に入れてあげる。クリスちゃんが怖い思いをするなら、そんな奴ら、みんなみんな壊してあげる。クリスちゃんは私の胸の中で、最高に幸せで絶対に安全で、優しい世界の中で生きていいのよ?」
「やさしい…せかい……」
「そうよ。私と一緒にいれば、クリスちゃんはみんなから優しくしてもらえる。みんなみんな優しい世界。私がクリスちゃんを世界一幸せな女の子にしてあげるわ」
「しあわせな……」
あ…れ……
あたま…ぼぉ…として…
せかいいち……しあわせ……
おねえさまと…しあわせ……
おねえさま…あったか…
ふわふわ……
しあわ…せ……
…
「これ、また甘やかすでないのじゃ…」
なにか…きこえ…
――ぎゅ
あ、おねえさまにつつまれて…
あ…しあわせぇ……
「リスティア、その娘を放してやってはどうじゃ?」
「……バフォメットちゃん?なぁに?何か言いたいことでもあるの?」
「お主が甘やかしておったから今回のようなことになってのではないのか?」
「そうね。クリスちゃんが危ない目にあったのは全部私の所為。認めるわ。だから、もう二度と離さない。目が覚めてご飯を食べて、お茶を飲んで。遊んで、お昼寝して、ご飯を食べて、眠るまで。全部全部私が面倒を見てあげる。私がこの子を幸せにしてあげる。私の命令をちゃんと聞いてくれるかっこいい旦那様も見つけて、赤ちゃんには最高のお洋服を着せて、いつまでもクリスちゃんが幸せでいられるように、全部私が面倒を見てあげるわ」
「……その娘を“支配”するつもりか?」
「いいえ。自由にさせてあげるわ。私の目の届くところで、なんでもさせてあげる」
「それを支配じゃと言っておるのじゃ」
「この子はまだ子供だから仕方ないのよ。だからお姉ちゃんの私が面倒を見てあげなくちゃ…」
「第3王女のセリフとはとても思えんのう…。その娘はもう大人になったのじゃ。成人の儀はとっくに終わったじゃろうが」
――ゴゴゴゴ
世界が歪む
景色が崩れ
身体が押しつぶされそうじゃ…
まったく…
「私こそがこの子の幸せなの。私がこの子の世界なの。私の中にいればみんな幸せになれる。私の中でみんな幸せにしてあげる」
真っ赤に光る眼が
白銀に輝く髪が
ゆらゆらと揺れて
真っ暗な闇のような魔力が部屋中を覆いつくし
儂すらも飲み込もうとしてくる
誰よりも愛が深く
誰よりも甘い
腐ったようなこやつの考え
「バフォメットちゃん…
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録